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映画感想『室井慎次 敗れざる者』
踊るシリーズの最新作ということを忘れ、魅入ってしまいました
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1 室井慎次
室井さんというのはもしかしたら、年を取るほどかっこよくなる人物なのかもしれません。
もちろん外見も渋くてかっこいいのですが、口下手で、けれども優しさと信念を内面に持っているという性格が、年齢と外見にいい意味で馴染んでいて、かっこよく感じたのです。
若い頃の映像も度々流れましたが、若い時より好きですね。
僕の中での室井さんは、何かを言われても言い返さず、ただむっとしている変な人ですが、今作の老けた室井さんは、沈黙が似合う男になっていました。そして信念というか、いい頑固さや真面目さ、気遣いや他人への優しさが行動や雰囲気に自然と滲み出るので、沈黙が悪く感じませんでした。
確かに青島のとの約束が果たせず、青島はどう思っているのだろうと、それは僕もモヤモヤしていましたが、いい歳のとり方をしていたとは強く思いました。
なかなかあの年齢のおじさんにかっこいいという印象は抱かない僕ですが、かっこいい。
2 フラストレーション
室井さんの老い方は置いておいて、作品としては、じわりじわりと進んでいく物語でした。室井さんが警察を辞めて田舎で暮らしているので、最初はテンポがゆっくりでも仕方がないと思っていましたが、どこかでテンポが上がるだろうと思っていたので、終始じわりじわりと、悪い言葉でノロノロと進んでいったので意外でした。
その中で、僕がよかったと思うのは、ゆっくりとしたテンポに合わせて、不穏な要素が増えていくことです。まずは事件、それから田舎特有の部会者排斥の雰囲気、犯罪者の娘がやってきて、何やら悪事を働いている模様、などなど、室井さんは何もしていないのに、周囲に次々と波紋が生まれていきました。これが非常にフラストレーションで、それでテンポが全然速くならないので、フラストレーションは増えていくばかりでした。ですが、見終わった後は、このフラストレーションの積み重ねがあったからこそ作品のテンポに飽きず、また、テンポがゆっくりだからこそ、室井慎次という男の魅力にどっぷりと浸かれたと感じるので、結果ストーリー全般は肯定的に受け止めています。
まぁ問題は、このフラストレーションや謎が、後編でちゃんと気持ちよく解決されるかなんですけどね。踊る大捜査線の映画みたいに雑に終わらせられないことを祈っています。
3 森貴仁
忘れちゃいけないのが彼ですよね。室井さんを見て、夢に敗れて朽ちた老人だと全く思わなかったのは、貴仁に室井さんの良さや生き様がしっかりと伝わっていたからだと思います。
被害者の息子として苦しむ貴仁を、室井さんが室井さんなりの距離感で手助けし、それを貴仁が感じながら、自分で自分の生き様を決めていく面会のシーンはすこぶる感動しました。
やっぱり室井さんというのは、彼自身の能力が高いというより、彼独自の雰囲気で、誰かを自分の世界に巻き込む人たらしのフェロモンが魅力的ですよね。
そういった点では、青島と少し似ている気もします。周囲を巻き込む能力、憧れます。
4 後編はどうなるか
完全に中途半端なところで終わったので、この作品を評価するのは、後編を観てからです。
先ほど言ったように、まずは広げた風呂敷をどうたたむか。室井さんと青島との約束にどう決着をつけるのか。
ヘリで堂々と登場してきたくせに、その後捜査を一切せずに帰ったと思われる緒方は再登場するのか。
頼むから杏が悪いことをせずに、家族は平穏であってくれ。
貴仁の恋愛模様は本当に必要なのか
流石に作品のテンポは上がるよな?
後編に、大期待
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