短編小説『世紀末』
今はもう、使い古したノーブランドのシャツで街を歩いている。
なんならもう、裸で街を歩く日もある。
だって、この世にはもう、自分以外の人間がいないから。
昔のように、この世に一つしかない総柄シャツを着て、この世で最も派手なスカートを履いて、この世のものには思えない凹凸のあるデザインのジャケットを羽織って、この世の終わりのような奇々怪々のヘアスタイルを作って、この世の人間全てを憎んだ、攻撃的なファッションに身を包んでも、意味なんて何もない。
誰もいないから。
誰とも被らないファッションで街を歩く。
それはつまり、人間を憎みながら愛していた証拠だった。