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長編小説『老人駅伝』⑮

・一区 中高女子 高橋望

「練習に出たら――」

 私だって、部活に行かないで、その代わりにパチンコに行くなんてださいな、って思ってた。でも意外と行く場所がなかった。これまで部活一筋で走ってきた私が、息を潜められるところなんて。
 スポーツをしていたら、誰だって怪我くらいするでしょ? 去年の冬、ちょうど駅伝が終わった頃だったから、十二月の始めだったかな、私も怪我をした。
 今思うと何だか、緊張の糸がプツンって切れたみたいな、そんな怪我だったと思う。怪我以上に、精神が一気に崩れた。
 部活という制度に組み込まれた時点から、私は我慢し続けていた。
先生が「目標を立てるぞ」って言って、皆を集める。うちらのキャプテンが、「駅伝で東海大会を目指そうよ」と言う。皆が頷く。私はちゃんと頷かなかったのに、全会一致で決定された。賛同する時は声を出さなくてオッケーで、否定する時は声を出さないといけないルールなんて聞いてない。
「お前ら、手を抜いているのか! 東海大会行くんだろ! 皆で立てた目標なんだろ!」
「皆、頑張ろう!」
「声出して!」
「ここで頑張ったら、絶対に結果はついてくる!」
「私たちはチームでしょ!」
 結果、県大会で敗退した。皆も泣いていて、私も悔しかったのに、俯瞰的に見てざまぁみろって思ってる自分もいた。
 キャプテンは、真っすぐな黒髪で、背筋がまっすぐで、ハキハキとしていたな……あの時は、赤く腫れた目で私にこう言った。
「次のエースは望ちゃんよ。期待している。私たちの情熱を、燃やし続けてね」

「練習に出たら――必死になっちゃう」
 梨々香ちゃんは、本当に不思議な人だと思う。真っすぐな黒髪で、背筋がまっすぐだけど、ハキハキはしてない。
 梨々香ちゃんと初めて会った時、私の息は乱れていて、髪はぐちゃぐちゃで、ものすごい剣幕をしていた。その理由はもちろん、三浦夫妻という極悪非道の夫婦の策略にはまっていたからよ。
 最初は、村神くんがやってきた。おかしいなとは思ったわよ。一緒に喋ったことなんてなかったから、急に何の用だろうって。そしたら。頭張駅伝を走ってくれって言われたから、いいよって答えた。怪我は治ってたし。
 でも彼が言いたいのは、練習に参加して欲しいということで、話の流れ的に私もそれはわかっていた。ただ、練習という言葉を思い浮かべた瞬間に、鳥肌が立って、そのまま鳥肌に絞め殺されそうだった。
 また本気でチーム練習をするの? また皆で頑張るの? また自分に嘘をついて走るの? 群れて走っていたあの時期が、練習内容よりも苦しかったのは、衝撃をも纏って私の記憶にくっついてる。
 私はその場から逃げ出したんだけど、追いかけてきたのは村神くんじゃなくて、義雄さんだった。当時の私にとっては、初対面の老人よ。最初は普通に怖くて、マジで逃げるしかないと思った。不穏な私の予感は大的中。この老人は自分の成績のことしか考えない、情熱マンだった。なんか色々聞かれたわ、もう一度情熱を取り戻そうとかも言われたわ。頭痛までしてきた。
私の性格上、練習に参加したら、自分の気持ちを隠して、皆の情熱に合わせて走ってしまうのよ。どんどんメンタルが擦り切れて、また怪我をすると思う。もしくは、病むかな。満員電車は大嫌い。でも乗ったら我慢してじっとしてるわ。戦争は嫌い。でも軍隊に入ったら、命令通りに戦地に特攻するしかないじゃない。
「でしゃばるな、老人!」
 年配者に対して失礼だけど、なんとか撃退しないとメンタルが持たなかったから暴言を吐いた。
 な、の、に。老人の次は、もっとヤバい老婆が出てきた。この老婆は昔そこそこ有名な選手だったらしくて、たまにうちらの練習に顔を出すこともあった。その時は何とも思わなかったけれど、この老婆、本当にデリカシーのかけらもなくって、私の傷に塩を塗ってかき混ぜるような発言ばかりしてきたの。思い出したくもない。私は、泣いてたかな、泣いてないかな。ただ逃げるために走ったわ。
「練習も一緒にしましょうよ」
 嫌だ。あんな苦しい思いは、絶対に、絶対に、嫌だ。何度も頭の中で唱えた。
急に現れた災難によって、私はあまりにも惨めに走った。汗が噴き出て、異様な疲労を感じていた。河川敷まできたところで力尽きた。
 でも、顔を上げたら梨々香ちゃんがいた。これこそが三浦夫妻のふざけた作戦の狙いだったらしいけど、そんなことはどうでもいい、そこに梨々香ちゃんがいたということが、私にとって全てだった。
 共感って言ったら、失礼かな。シンパシー? 直感? 私は梨々香ちゃんを求めていて、梨々香ちゃんはそれをわかっているようだった。わかって私の前に立っているみたいだった。

 最終コールの点呼があった。最終コールというのは、選手がちゃんときているかを最終チェックをすること。私も含め、一区を走る選手たちが、ユニフォームの上にベンチコートを羽織った状態で集結した。
 出場チームは、計五十チームで、過去最多らしい。なんというか、高校同士で戦うのとはまた違った緊張感があった。所属している高校から飛び出し、地域、市町村の代表として走るのは、どちらかというと、国の代表として戦う世界陸上のリレーの緊張感に近いと思う。世界陸上に出場したわけではないけれど。
 否が応でも、黒と白のユニフォームが目に付いた。この二人は同じ高校で、普段は仲間なんだけど、その日だけは違った。県内で一、二位を争う私立高校のエース二人が、敵として同じ舞台に立っているとあって、観客の目は二人ばかりに注がれていた。
他の選手たちには、自分のチームの応援や、付き添いの子や、家族などが見にきているので、孤独なのは私だけだった。付き添いを頼める友だちなんてもういないし、家族にはこの大会に出ることすら言っていない。
 一応言っておくけど、別にそんな環境に委縮していたわけじゃない。
 最終コールでは、チーム名を呼ばれて、名前とゼッケンを確認される。
「チーム、『三浦天下』さん」
 ださすぎる。この瞬間だけは、白黒二人組以上の視線を私が独占した。
「では、三十分後、必ずこのスタート位置にいてください」
 最終コールが終わり、私たちは最後のアップに戻っていった。ジョグをする人もいるし、ダッシュをする人もいるし、談笑をして余裕そうな人もいる。こういう時、周りの人が皆強く見えることは、よくあること。黒と白はもちろん、水色とか緑色も、橙色とか紫色も、全員が強そうに見えた。
 別に委縮していたわけじゃないっていうのは、私はむしろ、怒りや軽蔑に近い沸騰を、自分の中で感じていたから。

「練習が好き?」
 梨々香ちゃんとの初対面は、連絡先を交換して、ちょこっと話しただけで終わった。けれど、その日の内に、「次はいつ会えますか」とメッセージを送信したのは私の方だった。後から聞いたら、梨々香ちゃんも自分から送ろうとしていたらしんだけど、私が異様に積極的だったみたい。
 駅伝に出て走る、という気持ちには全くなっていなかったのに、梨々香ちゃんと私服で会うのは、なんだか違う気がした。そんなことを思っていると、梨々香ちゃんからラインがきた。「走らなくてもいいから、私の練習を見にこない?」って。
「好きです」
 嫌いです、なんて、頭の端の方にも浮かんでこなかった。梨々香ちゃんの走りは、私の理想そのものだった。私が陸上を始めた理由は、箱根駅伝のランナーに憧れたのがきっかけなんだけど、梨々香ちゃんの走りを見て、またその感覚を抱いた。なんなら、テレビの前にいた時のあの感覚を、寸分たがわずもう一度繰り返しているようだった。私は今すぐにでも、練習がしたい気分になっていた。
 独走。誰にも邪魔されずに、淡々と道を走る。自分以外には誰も邪魔する者はいない。だから、自分との孤独の戦い。それに飄々と打ち勝っている表情と、崩れないフォーム。
「私も、一人の練習は好きかな」
 梨々香ちゃんはそう言った。私を見透かしているのかと思ったけど、自分自身を見ているだけだと、話しをしている最中に段々とわかった。それがよかったし、それが通じ合った要因だと思う。
 梨々香ちゃんは、私に本番で結果が出せないことを話してくれた。チーム練習も実は苦手なことを話してくれた。じゃあ、なんで、と聞こうとしたけれど、その質問をする前に、梨々香ちゃんはそのわけを話してくれた。
「でも、チームには色々な形があって。三浦さんたちのチームには、中学校とか高校のチームには絶対にないものがある。だから、私は練習に参加するのが楽しい」
「絶対にないものって何ですか?」
 梨々香さんははにかんだ。いたずら慣れしていない人のいたずらっぽい顔は、とても可愛い。
「陽気さに隠れた、負のオーラかな」

「すいません、ここは選手専用のアップスペースなので、一般の方は――」
「え、選手ですけど」
 恐らく私の金髪を見て、警備員が私をアップゾーンから追い出そうとした。感情が既に高まりつつあった私は警備員を睨んだ。警備員は明らかに舌打ちをして、謝りもせずにどこかに行った。
 すると、反抗的な私の態度が、周りの観客たちの興味を誘ったみたいだった。
「えっ、こわ」
「金髪じゃん」
「不良?」
「絶対に遅いでしょ、ああいう見た目だけ怖いのは、実際たいしたことないのが多い」
 駅伝に出る高校生なんて、黒髪ばかり。そりゃ目立つよ。どちらかというと、この時になるまで気がつかないお前らの目ん玉がどうなっているのか知りたいくらいだけどね。
大学生になったら、ここにいる真面目気取った馬鹿女たちも、十中八九髪を染めるのに、一年か二年早く染めたからって何? ベンチコートを着ているのに、私を一般人だと思った警備員の方が悪くない? あいつ謝りもしなかったよ?
「選手の皆さん、そろそろスタート地点に集まって下さい。スタートの前に、テレビカメラが、一チーム五秒のPRタイムを設けますので、五秒間でアピールをしてください」
 他の選手たちが、笑顔を作ってテレビカメラの前に立つ。ピースを作ったり、ハートを作ったり、ああなんて可愛らしいこと。
 私の番がやってきた。私はカメラに向かって中指を立てた。
 悪者見参って感じ?

 三浦夫妻のチーム練習は、楽しかった。
 隙あらば隼斗くんが義雄さんにサッカー仕込みの蹴りをくらわすし、太花ちゃんはそれを見て、地面を叩いてゲラゲラ笑ってる。それを弓子さんが叱るんだけど、夫が子供に蹴られている姿がツボって、口角がどうしても上がってしまう。川外さんは競技場の端っこで、パソコンを叩くか、電話越しに頭を下げてばかり。村神くんは、私が知っている無口で黙々と走る姿とは違ってびっくりした。うちらの部活は男子が少ないから、やっぱり寂しいのかな。
 私の態度は悪かったと思う。声を出したり、鼓舞したりするのは、情熱が感じられて気持ち悪かったから、無視した。声も小さかったし、口も悪かった。素直な私を出そうとしていた。受け入れられなかったらすぐにやめていいと思い、皆と合わせる自分を消した。多分他のチームでは許されないし、直されるか、追い出される態度。このチームでも、別に許されたわけじゃないけど、でも、悪いと言われるのではなく、尊重されている感じがあった。なんだろう、一つの目標を持たせたチームじゃなくて、バラバラの個人が集まって、バラバラのまま一つの目標に向かっていくチーム、っていう、失敗しそうで不安定なのが凄く心地よかった。後からまた言うけど、バラバラのままでもチームとしてまとまるってのが、漫画の世界から飛び出して、体感できた。こういうチームなら、私も好きかな。こういうルールを作ったからうまくいきました、こういう目標を掲げたので結果が出せました、なんてことが言えないチームで、個人間の繋がりで保ち、偶然が重なり、奇跡的なバランスで、唯一無二の空間ができていた。今を逃したら二度と手に入らない瞬間に思えた。だから私は、また練習に行った。プラス思考もマイナス思考も、自己中心主義も他人中心主義も全部包んで、新しい道に転がり込んでしまう、面白い世界に行く感覚で。
それでちゃんと練習はきついしね。そこはしっかりしている。
 それから確かに、梨々香ちゃんが言うみたいに、負のオーラが、時々香り立つ瞬間があった。そのオーラがはっきり感じ取れるのも、私には印象よく映ったし、なによりそのオーラを、「東海大会に行きたくないのか!」でねじ伏せないのが本当によかった。個人の問題を、チームの統一意見でねじ伏せることを美化するのが本当に嫌い。
 梨々香ちゃんが練習にこなくなっても、私は練習に参加し続けた。梨々香ちゃんが心配だったけれど、私が助けようとしても助けにならないことはわかっていたし、そんなことしなくていい。ただただ、体のキレが戻ってくる自分に集中していた。
 そう、だから、梨々香ちゃんだけじゃなくて、皆のことが好きになっていた。それぞれ個人として。自分勝手な小学生も、練習に仕事を持ち込む社会人も、学校では影が薄い同級生も、体の老いに抗い続ける老人も、皆大好きだった。この一人一人のためなら=チームの為になら、走りたい。去年の駅伝の時と同じような結論だけど、私にとっては全く別物だ。

 選手がスタート位置に並び始めた。襷を肩にかけ、落ちないようにきつく締める。襷を途中で紛失したら、走り切れても意味がない。
スタート位置は当日のくじ引きで決められるんだけど、義雄さんの今世紀最大の運が発動し、私は一番前のど真ん中を手に入れた。テレビさん、不良が中心にいてごめんね。
スタートの雷管を担当する人が、時計をチラチラ確認し始めた。観客たちは静かになってきた。隣の人の肘が当たる。皆の心臓の音が聞こえる、もしかしたら自分の心臓の音かもしれない。
雷管が天空に掲げられた。私たちは走り出す構えを一斉にとる。四列に並んだ、五十人の臨戦態勢。しかし意外と雷鳴が轟かない。足先が白線手前で震える。心臓の音が喉の辺りで聞こえた。早くして!
パンッ!

観客は、過去一番のどよめきを見せた。
 人々の目は肥えていたからだ。スタートの合図と共に飛び出して独走をするのは、黒と白のユニフォームであると。
 しかし、飛び出して、血気燃え滾る闘牛のように先陣を切ったのは、赤色のユニフォーム、金髪頭。
「なんだ、アイツ!」
「誰?」
「赤っ!」
「大丈夫、ただの馬鹿だよ。あの走りで終盤持つわけがない。下手したら最下位だ!」
「かき乱しているだけだ!」
「中指立てた子じゃない?」

 ――大会前日。最後の練習終わりに、義雄さんと弓子さんの会話を私は聞いてしまった。。
「現実的に、どうなんだ?」
「んー、厳しいね。十番台後半に入れば大喜びって感じ。でも下手したら、三十、四十位もざらにあるわ」
「始まりが大事だぞ。望はどのくらいの順位で行けるだろうか」
「そうね……三十、三十五位くらいに入ればいいね、て感じかな」
「まぁ、そうなるか……次の二区はいいとして、三区は……」
 ――。
 恨んでいるとかじゃない。妥当な意見だと思う。拗ねているわけじゃない。先に拗ねて部活を辞めたのは私だし。でも、でもさ、もっと信頼して欲しいな。私を戦力だと思って欲しいな。私を、信じて欲しいな。そういう練習態度じゃなかったよね。だから走りで信じさせてみせるわ。予想を覆してやるわ。恩返しをさせて。私は限界をこえるわ。集団の意見に洗脳されたやつらには絶対に負けない。あいつらと一緒にはしないでほしいんだけど、一区として、あなたのために、皆のために!
 で、気が付けば私は一番に躍り出ていた。
 先頭を走っている時は、高揚感に満ちていた。後ろから響く無数の足音は、全てあたしを食らうために近づいている。最高、黒髪のモブキャラ群衆が、唯一無二の私を追いかけている。このまま――
 と思った矢先、目の前に、黒のユニフォームが出現した。
 嘘でしょ⁉
 驚きを隠しきれなかった。私はほぼ全力で走っていた。四キロという距離にビビって、誰もついてこれないと思っていた。それなのに、まだ三百メートルも走っていない、こんな簡単に、余裕で抜かれるの?
 私は焦った。多分そこでフォームが崩れて、一種のトリップ状態から、現実世界に戻された。だから早くも疲労を感じた。
 黒に抜かれた。続いて白のユニフォームが横に突如出現した。肘と肘がぶつかって、よろめいたのは私だった。
 白に抜かされて、黄色のユニフォームと泥みたいな色の汚いユニフォームにも抜かされた。
 なんて馬鹿な走りをしたんだろう、と自嘲の声が内奥から響いた。一時の感情のまま突っ走って、後悔する。もっと忍耐強く、じわじわと走ればよかったのに。部活を辞めずに、我慢して練習に参加していればよかったのに。皆と並んで進めばいいのに。
 うるさい!
 私は何度も何度も、チームの皆の姿を思い出した。皆が待ってる。私の襷を待っている。皆の為に走らなきゃ。隼斗くん、太花ちゃん、個性を出すことの大切さを教えてくれてありがとう。村神くん、義雄さん、情熱は捨てたものじゃないと教えてくれてありがとう。弓子さん、私に、集団で生き抜ける凡例を与えてくれてありがとう。梨々香さん……私と話してくれてありがとう。それが一番私に必要だったから。
 はは、遺書みたい。なんかこれから死ぬみたい。でも死ぬほど苦しい! 死ぬかもね、私。やめたいな。なら、やめずに死ねよ! ここは、走り続けないといけない。部活はさっさとやめてやったけど、ここだけは、やめちゃいけない。
 残り二キロなんてのは、記憶が残っていない。断片的に覚えている視覚情報を組み合わせて、走り切ったのは確かだ。
 いつの間にか襷をとっていて、なんかよくわからない色の子とラストスパートで勝負していて、勝ったか負けたかはわからないけれど、弓子さんに襷を渡した。
 襷を渡した後、私は顔面から倒れた。アスファルトで頬と腕をとことんすりむき、後で超痛かった。でもその時は痛くなかった。
「あぁ、ドベかもなぁ……」とぼんやりと思った。それから不意に、一か月くらい前に長距離記録会で、部活の子たちに再会したことを思い出した。私の走りはめっちゃ酷かったけど、あの子たちは私に近寄って、優しい表情で、救済するような女神の微笑みで言った。
「また走り始めたんだね」
「嬉しい。また戻ってきなよ。いつでも歓迎する」
「一緒にまた駅伝目指そう、今年こそは東海大会に行こう!」
 ……本当のこと言えよ。あんたたちの言葉じゃなくて、あんたの言葉を。
「いや、私はもう走らない」
 私は呟いた。


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