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くちびるが痛い

乾燥の季節がやってきました。唇がカサカサで油断すると裂けて血が流れます。

先日、日々の不健康がたたって上唇にヘルペスができてしまいました。ヘルペスの話をするのは二回目ですね。ヘルペスという文字を書いた今この瞬間に思い出しました。

今回のヘルペス自体は弱小な存在で、ものの二日で治すことができました。やりました。ただ問題なのは、ヘルペスのせいで唇が弱ってしまったことです。いよいよやってきた冬の乾燥のせいで既に唇はカピカピなのに、そこが弱っているときたら、少しの衝撃で流血するに決まっています。

笑ったり、笑顔を作ったりするだけで流血するのには困りました。仕事ではお客さんと対面で会話する機会が多いので、接客をする以上笑顔は必須です。それなのに、口角を上げた瞬間に唇が破裂し、血が噴き出すわけで、お客さん視点でイメージしてみると、目の前の人が歯を真っ赤にして笑みを浮かべているという状況になるのです。逆効果。ドラキュラも顔負けの化物の誕生です。

治したいと強く思いました。なので、接客以外では極力笑わないように心掛けました。とはいえ、突然笑わなくなると、他の従業員との関係性が悪くなる可能性もあるので、あらかじめ近くにいた従業員に説明しました。こうこうこういう理由で、笑わないようにしているんです、と。僕からしたら、笑わないけれど機嫌が悪いわけではないよ、と言いたかったのですが、その人はどこをどう勘違いしたのか、じゃあ笑わせないといけないですね、と言い出したのです。痛恨のミスを犯しました。僕は性悪説を地で行くような人間に、自らの弱みをさらけ出してしまったのです。その従業員はあの手この手で僕を笑わせようとしてきて、その意欲そのものにツボってしまい、僕の唇は絶望的な状態に陥ってしまいました。

そんなわけで、僕の上唇には、今日も一本の赤い筋ができています。血が流れて固まった筋です。笑った瞬間に筋は再び口を開け、新たなる血液を口内へと発射します。一体いつ治るのでしょうか。既にヘルペスが治ってから一か月は経っています。冬の間中、僕は定期的に血を飲んだ直後のドラキュラになってしまうのでしょうか……

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