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短編小説『表裏一体』
ダンボール箱を開けようとして、指を深々と切ってしまった。
「痛っ! ダンボールにやられた!」
「大丈夫?」
すかさず心配そうに顔を上げる妻。
「ティッシュとってくれる?」
「もちろん」
たかが切り傷にしては多い出血だった。押さえたティッシュが赤らむ。
妻は心配そうに俺の指を見つめている。少し照れる俺。
「そんなに心配するなって、死ぬわけじゃあるまい……」
「不思議ね」
「え?」
「不思議。人を傷つけるのも、癒すのも、どちらも木だなんて」
「……」
「……」
「……不思議だな。気持ちを楽にさせるのも、落胆させるのも。どちらもおんなじ人なんだぜ」