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買うはずだった車を営業マンの常套句によってまんまと別の車を買わされた話
「俺のエクストレイル、どこいった?」
22歳の時始めて自分の車を買った時の話
車を買うって、人生の一大イベントだ。少なくとも俺にとってはそうだった。
社会人になって2年目、ようやく貯めた貯金で「念願の車を買うぞ!」と意気込んでいた。
そんな俺の心をずたずたにしたのが、ある営業マンのあの巧みな言葉たちだった。
エクストレイルとの出会い
最初は何もわからなかった。車の種類も性能も、何がいいかも全くわからない。ただ、「SUVがいい」っていう漠然とした希望だけはあった。
アウトドアもするし、多少悪路でも行けるタフな車がいい。値段も安価だし、それでいろいろ調べて出てきたのが「エクストレイル」だった。
その旧型モデルのデザインに一目惚れした。無骨で、男らしい。そして値段もちょうど良かった。
新型もあるらしいけど、デザインが少しスタイリッシュ過ぎて俺の好みではなかったし、そもそも予算的に手が届かなかった。
休日にディーラーへ行くのが楽しみで、エクストレイルの旧型を頭の中で何度もシミュレーションしていた。
「あの車で山道を走る俺」とか、「荷物を満載にしてキャンプ場に行く俺」とか。夢は膨らむばかりだった。
運命のディーラー訪問
休日、満を持して地元のディーラーに向かった。担当してくれたのは、いかにも経験豊富そうな中年の営業マン。
にこやかな笑顔が少し頼りなくもあったが、まあ問題ないだろうと思っていた。
「エクストレイルの旧型を見たいんですけど」と切り出すと、彼は満面の笑みで「でも、新型も一度見てみませんか?進化したポイントがたくさんあるんです」と、早速別の方向に誘導され始めた。
いやいや、新型は興味ないんだって。そう思いつつ、せっかくだし見ておくか、と軽い気持ちで新型に座ってみた。
「新型の魔法」
そこで待っていたのが、営業マンの魔法だった。
「このシート、旧型よりも快適なんですよ。長時間の運転でも疲れにくいんです」
「ほら、ハンドル周りのデザイン、すっきりしていて操作性も向上してるでしょう?」
「安全性能もさらにアップしました。この機能があれば、万が一の時も安心ですよね」
次々と投げかけられるセリフに、俺の心がぐらつく。旧型を買うつもりだったんだ、そんなのわかってる。
でも、新型の高級感に目が眩む俺もいた。さらに、「今なら下取り価格もいい感じですよ!」なんて追い打ちをかけられて、もう頭が混乱していた。
決断の瞬間
気づけば俺は、ローンのプランを営業マンと一緒に組んでいた。目の前には、買うつもりもなかった新型の契約書。
頭の片隅では「やっぱり旧型が良かったんじゃないか?」という声が響いていたけど、営業マンの熱心なトークと、未来の便利なカーライフのイメージに押され、結局サインしてしまった。
その帰り道、心の中でずっとモヤモヤしていた。新型が悪い車じゃないのはわかってる。
でも、俺が欲しかったのは旧型だったはずだ。
あの無骨なデザインに憧れていた俺はどこへ行った?営業マンの言葉にまんまと乗せられた俺って、ちょっと情けなくないか?
後悔と納車の日
納車の日、車を受け取るときにはそれなりに嬉しかった。新しい車の香り、ピカピカの外装。確かに新型はかっこいい。
性能も文句なしだ。でも、ふとした瞬間に旧型への未練が顔を出す。
友達に車を見せたら、「めっちゃいいじゃん!新型エクストレイル買うとかセンスあるやん!」と褒められたけど、俺の心は晴れなかった。
「ありがとう」と返すのが精一杯だった。
今になって思うこと
車って、単なる移動手段じゃない。俺にとっては夢や憧れが詰まった存在だったはずだ。
それを、あの営業マンの常套句に押し流されてしまったのが悔しい。もっと自分の意志を強く持つべきだったんじゃないかって、今でも思う。
でも、買ってしまった以上はこの新型と向き合うしかない。
少しずつ愛着を持とうとしている自分もいる。これが俺の選んだ道だ、と言い聞かせながら。
これを読んでくれたみんなに言いたい。車を買うときは、営業マンの話に惑わされすぎるなって。
もちろんアドバイスは大事だけど、最後に決めるのは自分の心だ。自分が本当に欲しいものを見失わないように、しっかり向き合ってほしい。
俺も、次に車を買うときは絶対に後悔しない選び方をする。そう心に誓いながら、新型エクストレイルのハンドルを握る俺がいる。