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神戸大学自由劇場「鈍獣」

ジゲキの芝居を観るのはおそらく15年ぶりか。
鈍獣をやると知ったので観に行った。
そもそも鈍獣をやると知ったキッカケは、私が入っている社会人演劇サークルが人数少なめの芝居しかできなさそうで、んじゃ鈍獣がちょうどいいかなと思い、どっかの演劇部がやってないか探したらたまたま自由劇場がやっていたのである。
ちなみに私が所属していた演劇部「はちの巣座」でも2008年に同期と後輩がやっている。私はこの公演は不参加だったのだが何度か練習は行っていたので、印象的なシーンは覚えている。


舞台装置

とりあえず驚いたのは電車をモロに出している点。

撮影OKだった

舞台の上手に電車が見える。
この作品では最後に凸やんが電車にひかれる。
その電車を「舞台装置として」見せている。
そういえば立て看もモロに線路である。

線路の上に棺桶を置いたデザイン

演出的に、電車でひかれるシーンを強調したかったのだろうか。
何にせよ電車の存在感が強すぎて舞台を見たときは「あ、それは思いつかんかったわ」と思った。

凸やん

私がこの芝居で注目していたのは凸やんである。
凸やんをどう演じるかでこの作品の印象は結構変わると思われる。
ストーリー自体が凸やんが不死身で何度も主要人物の前に現れるのが不気味ではあるのだが、その不気味さを役として魅せるのは難しい。
キャストは6人いて、5人の声は忘れた。でも凸やんの声は覚えている。
それだけ印象的だったということだろうか。
いや、でも観た感想で言うと、「まぁこういう凸やんもアリかな」という感じだった。正直不気味さは足りない。鈍さは出てた。かなり出てた。
でも不気味さが欲しい。無邪気な怖さが欲しい。
「おしまい?」というセリフに、「殺害計画はおしまい?」という気持ちをもっと乗せてほしい。強く言わなくていい。軽く言っても良いかもしれない。
帰路はそんなことを思いながら車を運転してたんだけど。
で、今回はキャストが何回生か特に調べずに観た。幹部代の集大成とパンフに書いてあったから3,4回生かなと思ってた。
ところが、家に帰ってXを見てびっくり!なんと凸やん1回生でした。
1回生であれだけ出来たらすごいよ。

その他キャスト

全体的にテンポが良かったな。130分がマジであっという間。
セリフもそうなんだけど動きが良かったですね。ちゃんと舞台上で生きているように動いていると、テンポが生まれる。
会話のテンポが良くても動きが無かったらダメだ。
江田は良かった。1歩抜けてた。やっぱり4回生でした。最後列で観てたけど、最初出てくるシーンでめっちゃ息吸い込んでから登場する、その呼吸音がモロに聞こえた。あれワザと?
順子ママは前半ビミョーだったけど後半、明らかに演技が違ってた。特に声がよく出るようになってた。こんな分かりやすく声変わる?ってくらい。1回生!?すごい!

スタッフワーク

小道具?舞台装置?キオスクの作りが良かった。おにぎり、雑誌、たばこ。
バーにも酒の瓶がたくさん。居酒屋バイトの部員がかき集めてきたのだろうか。
照明はどうなんだろう。オペミス?照明変化がカクカクッと微妙なところあり。
あと凸やんが引かれるところは電車のライト、つまり白ライトだけだった。
そうなの?赤くしないの?下に電車があって上で引かれるんだから、下の壁を赤く光らせるか、奥でも良い。赤くしてほしかったな。電車を舞台装置に用意して、立て看でも線路を出すのなら。赤を入れるとグロくなるって判断でもあったのだろうか。

連れ

今回は、社会人演劇サークルの人を1人、連れて行った。
あんまり芝居を見ないらしいがいずれ都市部でオーディションを受けたいらしい。
だったら関西でもハイレベルである自由劇場の芝居は観ておくべきだと思った。こんなのは単なるお節介なんだけど、僕自身、プロの役者にはなれなかった人だし、近くにいる人が高みを目指すってんならライバルになる人のレベルがどんなものかは知っておいても良いんじゃないかなと。
東京のレベルはもっと高いんだろうね。

鈍獣

この作品はもう20年前のものだけど、現代において人々は鈍い獣になってるのかもしれない。
都市部では生活は効率化され、他人は他人。
国民の所得は上がらないし物価は上がるばかり。
でも娯楽もその分増えている。
その生活に人々は慣れている。鈍くなっている。
人はどう鈍い獣なのか?という問いに対する答えは観る人によって異なるだろう。

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