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金利上昇リスクを今一度考える。〜住宅ローン地獄の再来〜

年始早々、衝撃的なニュースが2つありました。まず一つ目は、兵庫県が地域産木材の利活用を推進するために金融機関と提携して創設、運用していた低金利の全期間固定金利タイプの住宅ローン、兵庫県産木材特別融資制度を実質廃止する旨の通達(事務連絡)が年末に出されたことです。日銀によるマイナス金利、異次元金融緩和政策が続き、民間の住宅ローンはほぼ無金利状態になっており、0.8%というありえない位の低い利率の固定金利もあまり優位性を認める人がいなくなっている現状を受けての事ですが、新築の際の安心な資金計画に欠かせない制度だったので非常に残念でなりません。
兵庫県からの通達文はこちら。

02通知文_今後の方針について(工務店様あて)

アメリカからの衝撃のニュース

まるで足並みをそろえるかのように報道されたもう一つのニュースは、アメリカで起こっているインフレへの懸念に対応してFRBが金融引き締めを決定したことの影響で全米住宅建設業協会(National Association of Home Builders, NAHB)が発表した「FRBの緊縮的政策により、来年末までに30年物住宅ローン金利は3.6%以上まで上昇する。」との予想を発表したことです。昨年から新型コロナによる巣ごもり需要と、最近になってバイデンフレーションと揶揄される政府による多額の給付金のばらまきでアメリカでの住宅需要が急激に高まり、材木の供給が薄くなり価格が高騰、その影響が日本へのウッドショックを引き起こしたのを鑑みれば、日本の住宅ローンも金利引き上げに動く可能性が高まったと考えざるをえません。
新建ハウジングで出されたニュースはこちら、

インフレは既に起こっている

昨年から日本の住宅業界では木材だけではなく、ありとあらゆるものの価格が値上がりしています。スタグフレーションと呼ばれる、景気は良くならないままインフレが確実に進行している今の状態は私のような素人から見ても金利上昇リスクが高まっていると感じずにはいられません。このタイミングでせっかく今後、大きな価値を見出せてもらえるようになる低金利固定ローンの制度を廃止する決定をした兵庫県には正直言って大いに落胆してしまいます。確かに、近年、兵庫県産木材利用特別ローンは利用者数が激減しておりますが、住宅ローンの金利と言うのは短期間で見るべきものではなく、誰も予測できない20年、30年後の金融動向を見据えた政策のはずです。これまでの歴史を見てもアメリカでインフレが起こった後は日本でも必ずインフレになっています。インフレには金利の上昇はつきもので、それをわかった上での愚行かと訝ってしまいます。以下は米国で昨年10月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比+6.2%となったグラフです。

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あり得ない現象に対処は出来ない

1%を割り込むような空前の低金利の住宅ローンがもたらしたものは、借り入れ額の増大です。銀行の融資審査は基準金利(ほぼ3.5%)で計算されるので、そのまま融資枠が広がるわけではありませんが、そもそもの年収からの返済比率が(年収によって変わりますが)30%〜35%に設定されている時点で借入可能額いっぱいに住宅ローンを組むのはリスクが高いものです。しかし、情報の取得が容易になった影響もあり、最近の賢い新築ユーザーはしっかりとライフプランを立てて、キャッシュフローのシミュレーションを行って家計の範囲で余裕を持って毎月の返済を支払える額から借入額を算出されます。しかし、0.5%の金利で借入した住宅ローンがいきなり3.6%以上にまで上昇するシミュレーションまではさすがに行っておられないと思います。なぜなら、その可能性を感じていたら変動タイプではなく全期間固定金利の安心なローン商品を選ぶからです。要するに、アメリカで起こっている金利上昇はあり得ないリスクに晒されていることになります。

住宅ローン地獄の再来!?

ちなみに、5000万円の住宅ローンを最安値の変動金利0.5%で35年間、借入をしたとします。2年後に3.6%に金利が上昇した場合、当初137,000円/月だった支払いは211,000円/月に膨れ上がります。元利合わせての支払い総額は当初の金利のままなら54,512,740円ですが、金利上昇によって81,787,000円となんと、約3000万円近く多く支払うことになります。このシミュレーションを見れば兵庫県が創設していた0.8%の全期間固定金利のローンが如何に安全な商品だったかがわかると思います。
そして、リスクはこれだけでは済みません。実は殆どの住宅ローンには125%ルールなる規約が適用されており、金利上昇に伴う返済額の上昇は125%に留めると決められています。これはローン契約締結時にも殆ど触れられない項目で、現在、変動金利の住宅ローンを支払っておられる方で理解されている方は皆無だと思います。上述の金利上昇のケースでは125%ルールに従うと162,000円程度の支払いになり、差額の42600円は元金から返済されずに残ってしまいます。

元金が減らない地獄の返済

ちなみに、3.6%に金利が上昇した時の返済の割合は元金69,000円、利息141,000円となっておりますが、そこからさらに差額の42600円が元金の返済から差し引かれます。元金を返すのはたった27,000円だけになり、金利は残債に対してかかるので雪だるま式に利息が増えます。ローンを完済した時にはその積み残した返済を一括で返さねばならず、少なくても2,000万円程度の請求が銀行から届くことになるのです。これがバブル期に社会問題になった住宅ローン地獄のカラクリです。

決断するなら今しかない。

ここまでの内容はこれから新築をお考えの方、もしくは、現在、既に住宅取得をされて変動金利型のローンで返済を始められておられる方には是非ともご理解頂きたいと思います。文章による数字の列挙なので少し分かりにくいかも知れませんが、よく整理をしながら、ネット上に転がっている住宅ローンシミュレータで確認頂ければ必ず分かって頂けると思います。そして、対策を講じるべきだと判断されたら、いち早く行動に移されることを強くお勧めします。現在の日本はまだ金利上昇には至っておりませんので、もし、安全な返済計画を望まれるなら今のうちに固定金利型への乗り換えをお勧めします。一度、金利が上がり始めたら変動金利よりも固定金利の方が上昇率が高く、乗り換えは加速度的に難しくなります。新築住宅の供給も行っている私が、このようなネガティブな記事を書くのは自分でもどうかと思う部分もありますが、せっかく夢のマイホームを取得されて後悔されるようなことには絶対になってもらいたくないと思うのです。

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