プロジェクト マネジメント 山口周 〜答えなき時代のリーダーの正解〜
私が代表を務める株式会社四方継では、創業からこれまでの23年間、繰り返し仕事のやり方と組織の在り方について試行錯誤を繰り返してきました。大工から創業した私にはトップダウン式の強力なリーダーシップを発揮して現場をマネージする力はありましたが、人を導き成長を促すスキルは持ち合わせておらず、現場での権限委譲が出来ずに日々の忙しさに組織づくりや社員教育といった緊急性の低い、重要なタスクに取り組むことができませんでした。売り上げを作るマーケティングが出来ても、モノづくりの根本である人づくり、その入り口のマネージメントが出来なければ全く話になりません、表題のプロジェクトマネージメントは私の長年のテーマでしたし、今も尚、研究と実践を繰り返しています。
BeingとDoingを網羅してある書
そんな私も20年近く前にコーチングに出会い、能力の無い自分の中に実は答えや、違和感を感じて兆しを感知する感覚を持っていて、そこに正面から向き合うことでリスクをヘッジし、根本的な課題に向き合えるようになり、組織をマネージメントできることに気が付きました。それから、少しずつ人の心に向き合うようになり、トップダウン式の組織を自律分散型の組織へと変革すべく、人材育成と権限委譲に本腰を入れるようになりました。
自分自身が組織をマネジメントするリーダーとしてのあり方(ビーイング)とやり方(ドゥーイング)を学ぶのと同時に、各現場、プロジェクト単位のリーダーを育成する取り組みをこれまで長年続けてきたのを踏まえて、表題にある今回手に取った山口修さんの新刊「プロジェクトマネージメント」には、この20年間、私が学んだこと、実践したこと、いまだにできていないが必要だと思う事の全てが網羅されており、正直とても驚きました。この書に書かれているのはすべてのリーダーの持つべきリテラシーだと感じた次第です。
作業員とマイスターの分水嶺
ウィキペディアを引くと、「プロジェクトとは何らかの目標を達成するための計画を指す。基本的に集団で大がかりに実行するものを指す。」とあります。プロジェクトマネジメント協会の定義では「プロジェクトとは、独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する有期性のある業務」とあり、期限の決まっていない一般的な業務はプロジェクトとは言わないようですが、毎年の事業計画を含め、明確な目標設定をして、そのためにチームで力を合わせる体制を作った時点でそれらの業務や取り組みは全てプロジェクトと言っても過言でないと私は思っています。
その意味では、私たち建築の事業を行っているものは、ほとんどの仕事は期間内にプロダクトを生み出すプロジェクトになります。当然、それを差配するリーダーは、プロジェクトマネージメントができるのが大前提となりますし。そのスキルを身に付けてもらわなければなりません。そして、これができると、職人は、肉体労働者から知的労働者へと変容する新たなキャリアを手にすることができます。
概念と事例の絶妙なコンビネーション
今回ご紹介する山口周さんのこの著書には、プロジェクトマネージメントに必要なあり方とやり方が実例を織り交ぜながら非常にわかりやすく理路整然と書かれてあり、すべてのリーダーに読んでもらいたい本だと思いました。以下に大項目のみの目次を引用しますが、これを見ただけでも実務書として使えるのはもちろんの事、単なるノウハウ本ではなく、原理原則に立脚した構成にリーダーの在り方、メンバーとのコミュニケーションの持ち様、ロジカルな分析と人間臭い処世術的な概念までが織り交ぜられているのが伺えると思います。逆の見方をすればさして新規性のない当たり前のこことばかり書いてあると言われるかも知れませんが、その当たり前のことを皆が理解して、実行できればプロジェクトは成功裡に着地するものです。
また、章ごとの冒頭に歴史上の人物や卓越した成果を挙げられた経営者やコンサルタントの語録や名言を引用されていて、絶妙な概念と事例の交錯は文章に重みと説得力を付加しています。山口さんの経験を元にした実務書ではありますが、読み物としても十分楽しめる内容になっているのはさすがと唸らされました。
リーダー必読の書
私が世話人として参画しており、現在非常に注力している職人育成の高校を全国に普及させるプロジェクトの母体団体となっている経営実践研究会は文字通り、これからの時代に適した経営を実践する研究会であり、会の活動自体が大きなプロジェクトになっています。本業で社会課題解決と経済的価値の両立を果たすCSVモデルへとシフトした、もしくはしつつある事業所が約1000社集まっており、全国に強固なヒューマンインフラを構築しつつあります。1000の志を1000のプロジェクトに変換して、行き過ぎた資本主義が巻き起こしている格差と分断が広がり閉塞感に包まれた社会を、生きるに値すべき社会に変革して次世代に継ごうとのムーブメントが全国で同時多発的に起こり始めています。奇しくも8月4日のソーシャル・シンポジウムの基調講演に山口周氏にご登壇頂くことになっていることもあり、同会のリーダー全員にこの「プロジェクト・マネージメント」を読むべきですと強く勧めました。是非手に取ってみてください。
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日本に本物かつ本質的なキャリア教育を企業文化として定着させるプロジェクトを推し進めています。真の民主化は教育から。
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