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CSVとマーケティング 〜利他と利己〜

つい最近、何かの記事で「利他の精神は時間軸が長くなるだけで結局は利己の精神が内包されている。」と言ったこと書かれているのを目にしました、出典は忘れましたが。確かに一理あるなー、と思ったまま、それ以上あまり気には留めていなかったのですが、今日、Giver's GAINを理念に掲げているビジネスコミュニティを運営されているディレクターの方と話していて、そんな考え方が世の中に浸透しつつあるのだと気が付きました。

新たな学びと気づきの場へのオファー

そのオンラインmtgではそれぞれが事業を通して成し遂げたいこと、そしてそれを達成するために必要なことなどを話し合い、志を叶えるには更なる自己成長が必要で、そのためのきっかけを提供してくれるとのオファーを受けました。なるほど、世界は常にその人の見方、パラダイムによって見え方が変わるし、自己変容する事によってこれまで困難だと思っていたことも乗り越えられる可能性を感じたりできるもの。全ては解釈によって自己限定を積み重ねていると考えれば、色んな人の考え方やロジックに触れてみるのは視野を広げるという意味で決して無駄にはならないと常日頃から私は思っています。50歳も半ばにして、今更新たな学びの場に足を運ぶのは、どうかと思う部分も若干ありましたが、せっかくお誘いを頂いたので有り難くオファーを受けることにしておきました。ただ、過密すぎるスケジュールを空けて参加するのはすぐには難しいということで、来年、日程が調整できれば参加ということで今日のところは一旦、棚上げとなってしまいました。

7つの習慣から

全員がCSV(共通価値創造)事業モデル

オンラインミーティングをする中で、当然の流れでお互いが推し進めている事業の話になり、それぞれが今の日本が抱えている社会課題に対して自分の事業で解決にアプローチしているとの話題になりました。そして、そこに集っていた三人ともが、事業を単なる金儲けの手段とは考えておらず、事業を通して社会課題を解決し、より良い世界を次世代に残すとの強い意志と意図を示しているメンバーでした。ジャンルは違えども勉強熱心で広く情報収集する人は同じような情報や概念に辿り着くのだと、そんな意識の高い人たちと話す機会を得られて少し嬉しい気持ちになりました。私は2020年に社名と事業ドメインを書き換え、本格的にCSV経営にシフトしています。建築請負で建物を作る会社から、お客様をはじめとして我々も含まれる地域に対してひと、街、暮らし、文化、そしてそこに生きる人同士の交流を守り、経済を活性化することで、そこに生まれる建築需要を含めた共通価値創造を目指す事業へと再構築を行いました。

マーケティングの延長線上としてのCSV

そんな私が「CSV経営にシフトしたんです。」との言葉を口にした際、その場の全員が社会課題解決型モデルの事業に理解を示してくださったのはとても嬉しかったのですが、私が驚いたのは、上述のアメリカ発祥で全世界に広がるビジネスコミュニティーの運営において、CSV(共通価値の創造)の概念をメンバー間に落とし込み、今までのリファーラル・マーケティングの手法からの脱皮を試みているとのディレクターの発言でした。その言葉を聞いて、冒頭に書いた「利他の精神は利己の精神が内包されている。」との記事を思い出しました。
私個人としては、上手に売り込む手法であるセールス、需要を掘り起こし市場を創るマーケティング、競合他社との圧倒的な差別化を図るブランディングは全て「やり方」の進歩であり、金儲けの手段のバリエーションに過ぎないと思っています。そこから軸を変えて顧客やその土壌である地域自体と共通価値を生み出して課題解決を行うことで圧倒的な信頼で結ばれたコミュニティーを形成するCSVの考え方は「やり方」ではなく「在り方」への変容だと思っています。それがマーケティング主体のコミュニティーに取り入れられているのには正直驚いたと共に、時代の変化を強く感じた次第です。

在り方もやり方に内包されるのか?

リファーラル・マーケティングをベースにしたコミュニティーが(特定の地域ではありますが)組織全体でなんのために事業をしているのか?との問いを立て、メンバーに金銭だけではない信頼という無形のGAINの価値を説き、社会課題解決に向けてビジネスの再構築を進めようとの機運があるというのには驚くと共に、やっぱり「在り方」も突き詰めれば経営手法の一つとの位置付けなのかもしれないとのインサイトに気付かされました。そもそも、経営とは経(縦糸)を営むと書く通り、次世代に紡ぐ持続性とセットの言葉であり、そこには収益をあげることが欠かせません。社会課題の解決を事業自体で取り組むと言うのも、大きな課題の解決には持続性が必要との概念が内包されており、非営利のボランティアでは長期間に渡って継続する課題解決が難しいことの表れでもあります。しかし、共通価値を創造する利他の在り方が利己的なやり方に内包されるとは言うのはそこはかとない違和感が残ります。

価値基準の違い

何かがおかしい、とその違和感の原因を辿って見ると、そもそも事業の定義自体の問題ではないかと行きつきました。確かに、二宮尊徳先生のタライの法則にしても、向こう側に押し出した水は周り回って戻ってくると言われる様に、利他の取り組みが結局、自分自身の利益に繋がると言うのはマーケティング的思考の影が落ちている様にも感じられます。しかし、それが根本的に違うのは求めるモノが金銭ではなく信用や信頼、世の中が良くなる事の喜びであり、経済的価値では無く社会的価値の創出に焦点があるからだと思うのです。要するに根本的に価値の基準が違うと思うのです。

https://ichigu.net/office/goods.phpより拝借

ノーマーケティング・ノーセールス

実は、私自身、これまで原理原則系のマーケティングを長年熱心に学んできました。徒手空拳で起業した時は、とにかくどの様にして売り上げを作るか、その元になる集客をどうするかばかりを考え、手法ばかりを学び続けていました。それが、規模拡大ではなく、持続性を価値の中心に据えた時にやり方では無く在り方を見つめ直して、信頼を軸にした顧客との長い関わり合いから事業を組み立てる方向へと変化しました。それが原理原則への傾倒であり、売り込みを排したノーマーケティング・ノーセールスのコンセプトの実践でした。2020年の事業ドメインの転換もその延長線上と言ってしまうそれまでですが、原理原則系の理論はそもそもマーケティングは在り方を見直すところからと言われており、リブランディングの前から共通価値の創造を心掛けてきています。このようなCSVの考え方は多くの経営者に広まると、きっと世の中はもっと良くなると思いますし、混迷を深める資本主義社会の出口と言われる共感型資本社会への移行が進み始めるのではないかと思っています。CSVは決して手法ではなく、在り方を事業で示すことだと多くの方に認識してもらいたいと願います。

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建築現場からのCSV(共通価値創造)を行う研修を行っています。


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