捉え直しと逆説の違和感
私が所属する、地域企業が本業で社会課題を解決し、持続可能な社会への変革を標榜する経営実践研究会主宰の特別講演会に参加してきました。登壇されたのは日本一明るい視覚障害者と自他共に認じられる成澤俊輔さんで、日本で一番大切にしたい会社の特別賞を受賞された事業所の元経営者、2017年にはTED×sapporoのスピーカーとして登壇されるなど多方面で非常に有名な方で、現在は事業売却されて「経営×アート」をテーマに経営者の伴走支援を生業にされています。今回は「捉え直し」をテーマに時代の変容と答えの見えにくい、若しくは答えが無い問いについてご自身がされていること、考えて事について話してくださいました。圧倒的な人間力と言うか、パワーを感じる講演でした。
3つの概念
冒頭に成澤さんが投げられた一般論なのかご本人が体験の中で見出したファクトなのかは分からなかったですが、講演内容の底辺に流れていた概念は以下の3つ。
この3つの内容についての具体的な話を組み立てて喋られるのかと思いきや、直接的な言及は無いと言うか、最近の時代が大きく変わった事例の紹介を切り口にご自身が考えている事、やっている事を自由闊達に、軽快な語り口調で楽しそうに話されました。そのマシンガントークを聴いてオーディエンスはそれぞれにメタファーを感じて自分自身で問いを立てろとの意図だったのだと思います。成澤さんの話はとにかく、眼の見えない自分はあらゆるモノやコトを捉え直して自分自身の定義を持って活動している、その結果、目の見える私達よりもずっと幸せだ。とのことでした。その主観の強さは日本一明るい視覚障害者の肩書きは伊達では無いというか、振り切った強さを感じさせられました。
客観性の罠
たしかに、目が見える私達は圧倒的な量の情報が視覚で入ってきます。「あなた達は目から入っている情報に囚われ、つい人と比較してしまうだろう」と言われたら、今まで意識したことが無かったですが、まさにその通りで、幸せという感覚が主観で感じるものであるならば、眼から大量の情報が入ってくる事で客観性の罠に嵌りこんでしまう。との成澤さんの言葉はなるほど、と思わされざるを得ませんでした。成澤さんの、「私は目が見えないことで主観だけで生きられる、思い込みだけで生きられるから幸せなのだ。」との言及には反論の余地も無いし、反論する意味もありません。まさに目が見えなくなる難病を抱えられたことを捉え直し、強みや幸せへと転化されておられました。
捉え直しが新たな価値を創造する
そんな広澤さんは経営コンサルタントとして60社を超える非常に多くの経営者の伴走支援をされているとのことでした。経営者と話をするだけが仕事なのだと言われていましたが、目が見えない事で受け身で圧倒的な情報に呑み込まれる事なく、自らがチョイスした情報のみを取り入れた上で、あらゆる事柄を捉え直し、新たな価値を見出す姿勢は多くの経営者にとって新たな視点を提供してくれる頼りになる存在なのかも知れないと思いました。「人は強みで必要とされ弱さで愛される」との言葉を引用されながら殆どの経営者は偏っていてマネジメント下手なのを、捉え方を変える機会を提供する事で成果に結びつけられているとの自負を覗かされていました。
子供っぽさと寛容さ
これまでの古めかしい価値観に囚われることなく、物事の本質を捉え直す事で斬新かつ先進的な経営手腕を発揮して圧倒的な成果を生み続けられてきたと自負される成澤さん曰く、使命や理念さえもモチベーションの源泉では無く、外発的なものであるとバッサリ。好きなこと、やりたいことだけやるような子供心こそが最も重要であるとのことでした。私としては逆説に思えてしっくり来ませんでしたが、一周回ってそんな結論を導き出されたのかも知れません。故に、ご自身はやったことの無い業態の仕事しか受けない事にしているらしく、それは面白く感じないからとのシンプルな理由でした。ご自身のことを子供っぽいと称されていましたが、それでもマネジメント下手で旧態依然の価値観を持ち続けている経営者を受け入れて包み込む、寛容さを持っているからこそ新しい価値観を生むのだろうと、想像の域を出ませんが感じた次第です。成澤さんは最後に、「未来とは修正できる過去である」との名言で講演を〆られました。私もあらゆることを再定義し直すのを常に意識しておりますが、もっと根本的な部分から見直し、捉え直し、常識ではない定義に対して前向きに向き合う事で今よりも更にご機嫌に仕事が出来るのかも、と思った次第です。とても刺激的な講演会でした。
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志を見つめ直すことで職人の再定義を行う研修を行っています。
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