SECIモデルで考えるマーケからCSVへのシフト
地域コミュニティーを形成し、それを活性化させる地域貢献事業を行っている「つない堂」のサービスコンテンツの1つに無料の自律循環型モデルの実践勉強会「継塾」があります。毎月1度、原理原則型の経営理論を紐解いて持続可能なビジネスモデルを構造化する勉強会で、建築業界だけではなく、様々な業種の方が参加されています。
ホットシートとSECIモデル
毎回の勉強会の流れは、まず初めに勉強会の趣旨説明を行い、持続可能な自立、循環型ビジネスモデルの定義や、その必要性を共有します。その後、前回のコンテンツのおさらいをして、メインコンテンツに移ります。今回はホットシートと呼んでいる、メンバーの中から1社をピックアップして、その事業所のビジネスモデルの刷新、もしくはブラッシュアップを参加者全員で行うワークショップを開催しました。
10年近く前に「元祖職人起業塾」としてスタートしたこの勉強会の発足当時から参加されている株式会社スパークの中村社長がホットシートに座って新たに立ち上げるメタバースを使ったバーチャル展示場のビジネスモデルを発表されました。建築会社が出店するのも、エンドユーザーが来場するのも全て無料と言う画期的なプラットフォームビジネスで、最先端の技術と自社の持つリソースを最大限活かしたマーケティングのプロが考案した新規事業に対して、SECIモデルのフレームを使ってジャンルも年齢もバラバラの異業種の人たちが意見を出し合い、それらを連結し、集約することで新たな視点を提供する非常に面白い回になりました。
令和デモクラシーとCSVモデル
継塾では毎回のように初めて参加される方がおられることもあり、イントロダクションで現在、私達が置かれている経営環境とこれから進んでいくべき方向性をお伝えする上にしています。
平成の終わりから、令和になるとVUCAと呼ばれる先行き不透明で複雑、曖昧な時代になると言われておりました。令和になりコロナによるパンデミックが世界を襲い、世の中は一変、そして今、核戦争の勃発や世界中で頻発する軍事力による現状変更の脅威で満ち溢れる非常に危うい世の中になってしまいました。自由と平和を高らかに謳っていたはずの民主主義の理念は一体どこに行ってしまったのかと言う感じです。
そんな閉塞感漂う世の中に対して私たちは無関心を決め込むのでも、あきらめるのではなく、人が幸せに暮らせる世界を追求する姿勢を保つべきです。地域から、地域企業から今一度、本質的な民主主義を取り返す民主化の運動、令和デモクラシーを、CSVモデルと言われる社会課題解決型の事業モデルへのシフトと共に訴えています。
これまでに無い新たなビジネスモデルへの挑戦
そんな流れから、ホットシートで発表された内容についても、CSV (共有価値の創造)とUX、 UIの観点を盛り込み、SECIモデルのフレームワークを落とし込んだビジネスモデルキャンバスでブラッシュアップのディスカッションを行います。中村さんが考案されていた新規事業はこれまで行ってきた既存のビジネスモデルの延長線上で考えられておられましたが、ワークショップを終えた後はこれまでに存在しない全く新しいビジネスモデルの可能性が開かれました。本人もよもや、そのようなヒントをもらえるとは思っていなかったようで、喜ぶとともに目からウロコの気づきがあったと口にされておられました。
私たちが勉強会を通して実践しようとしている令和モデルとは、本質的な社会課題解決を事業の中に落とし込み、経済的価値と、社会的価値の両立を叶えるものです。今回は、バックエンド(儲けるサービス)としてキャッシュポイントの設計をされていたサービスを無償化して、フロントエンド(多くの人に利用される無償のサービス)に転換させることで、本来目指すべきユーザ価値の創造、ステークホルダーとの共有価値創造を実現できるモデルへとサービスデザインをブラッシュアップさせる挑戦を提案をしました。
顧客は誰か?
新しいサービスをデザインする際に留意すべき点として、顧客は誰か?との問いを持つことは非常に重要です。多くの人はつい、自分が持つ強みやリソースをどのように活用して新しいビジネスを立ち上げるかを考えてしまいがちです。しかし、全てのコストの負担者であるユーザーを置き去りにした計画や企画は誰にも見向きされない危険性があります。まず初めに考えるべきは、誰にどのような価値を提供できるかのはずです。それも代替ができるモノではなく心が震える体験を創造すべきで、これがUX(ユーザー体験)デザインと言われるビジネスデザイン思想です。ビジネスとして成り立つにはそのサービスが自分と顧客のお互いの価値になることが必要ですが、私たちが推進している令和モデル(CSVモデル)では価値、もしくは課題解決を享受する対象を顧客と自分だけに止まらず、ステークホルダーや地域社会、もしくは国や地球環境にまで広げることで、存在意義を増幅し、より多くの人からの支持を受けて持続可能性を高めることを推奨しています。
令和モデルを生み出すSECI式フレームワーク
今回のホットシートでも顧客は誰か?との問いへの答えが当初の計画にあったバーチャル展示場に出店するハウスメーカーや工務店等の建築会社から、そこに来場し、家を建てるユーザーへと変わり、事業の中心的な活動は失敗しない家づくりの環境を提供するプラットフォームを作り上げることに変容しました。しかも、その展示場を完全に無料で運用することで、これまでもあった紹介ビジネス、企業に送客してバックマージンで稼ぐのではなく、完全にフラットな立ち位置の第3者として地域に住まう人の幸せを生み出すことが出来る専門機関を立ち上げられる可能性が生まれました。収益性を叶えるのはその様なプラットフォームで信頼関係を培った企業向けに、良質な住宅を提供するためのスキルアップや組織改革など、いい会社を増やすサービスを提供する、まさに社会との共有価値の創造、課題解決を推し進める令和モデルと呼べる全く新しいビジネスモデルの発想が生まれました。
マーケティングを長年学び、実践してきた中村さんが一所懸命に考えた新たなビジネスを、全く関係ない事業をしている人たちが集まり、ディスカッションの中で思いもよらなかったアイデアを生み出す。暗黙知を表出し、連結し、形式知に転換し、それをフィードバックして暗黙知に戻す、SECIモデルの破壊力を痛感するワークショップになりました。
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毎月無料で開催している継塾はオンラインでも公開しています。参加を希望される方はお気軽にお声がけください。
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