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この世で最もくそ面倒でややこしく、やりがいのある仕事

実は私、20代の若い頃、当時一世を風靡したネットワークビジネスに熱心に取り組んでいたことがありました。貧乏だった私でもやる気があればチャンスを掴めて、不労所得を得られ、将来に不安を抱えずに生きていけるようになれると言われてすっかりその気になって熱心に取り組んでいました。しかし、ネズミ講的マルチビジネスに後発で入ってもそんなに多くのチャンスが転がっているわけではなく、一生懸命やった割には大した成果を得ることもできずに結局やめてしまいました。ネットワークビジネスから足を洗おうと決めたのは、やる気のない人を焚き付けてモチベーションを上げるほどばかばかしい仕事はないと感じたからで、甘い夢を見るのをやめて自分1人の力でできる範囲の成果を得られる仕事をやろうと25歳で遅まきながら大工の見習いに入りました。

人は変えられない

ネットワークビジネス自体はネズミ講にならないように組織構造を整えれば販売手法としてはそんなに悪いものではないと認識しています。しかし、とにかく自分の下の者が頑張れば自分が儲かる構造の上に立って、やる気のない下のメンバーにテンションを上げろと焚き付けるのが本当に苦痛でした。実際に会って、話すと理屈は良くわかったし、自分の未来のために頑張る!と口にするメンバーが1週間もたたないうちにテンションが下がり全く何の活動もしなくなる。また呼び出して熱く語るとまたがんばりますと言うけど結局あっという間に元の木阿弥。そんなことを何回も繰り返している中で自分には人を変える力は無いのだと気づき、こんなに面倒でばかばかしいことやってられるかとすっかり諦めてしまいました。

コントロールできるのは自分だけ

大工になってからは自分で自分のテンションをかき立てて仕事に向き合い、毎日一生懸命働けばそれ相応の成果を手にすることができました。肉体労働は確かにきつい仕事ではありましたが、人のモチベーションを無理矢理上げることを考えると気楽だし、やりがいもあり自分に向いている、とにかく面倒が無い。現場で働くことが自分の天職だと思いました。結局、私がコントロールできるのは自分のことだけで、狭い範囲で生きていくしかないのだとのちょっとした諦めと同時に人と最低限しか関わらないことで小さな自由を手にできるのだと納得してわき目もふらずに技術と知識の習得にのめりこみました。

自由と不安

大工の修行に入ってから5年ほどで自分で1つの現場を任せてもらえるようになり、日給ではなく手間請けと言われる大工工事だけを請負いする個人事業主的な働き方になった時はこれで俺も極小ながら親方として自由に働けるようになったのだと本当に幸せでした。元請け会社に工事の期間は決められていましたが、その範囲内に収まれば働いた分だけ稼げるし、働く時間も休みも自分で自由に決めることができる。30歳にしてようやく人に使われるのではなく、誇りを持って自分の人生を切り開ける、自由を手にしたのだと感無量だったと今でもよく覚えています。ただ、残念ながら1馬力の完全労働集約型での個人事業主は怪我や病気をしたら即、職を失い家族を路頭に迷わせます。絶えずそこはかとない不安を抱えたまま今できることを精一杯やるだけの、未来に何の展望もない日々を過ごすことになりました。

未来を見なければならない役割と責任

1人親方として独立した時は子供の頃から夢に見ていた自由な生き方を手に入れたかに思いましたが、実際は世の中はそんなに甘くはありませんでした。将来に対する不安を常に抱え、稼げる時にできる限り稼いでおきたいと刹那主義に陥ってしまいかけていたそんな時、知り合いから大工になりたい人がいるから引き受けてくれと頼まれて弟子をとったのをきっかけに、数年後には5名程の若衆が集まるようになっておりました。現場の数も売り上げ規模もどんどんと膨らんで気づいたときには私は職人ではなく大工集団の工務店経営者になっていました。勢いで法人を設立し、事務所を開設した段になって初めて人様とその家族の人生を預かっている責任の重さにようやく気づき、大工たちに将来の不安を感じることなく、未来に希望を持って働いてもらえる環境を作らなければならないと考えされました。経営の知識も資質も持ってない私が大工の親方ではなく、経営者へと変わらなければならなくなった瞬間です。

事業は人

それから20年以上が経ち、現在も私は大工と設計士だけが在籍する技術系の職人集団の事業所を経営しています。この20年間、私が行ってきたのは持続可能な組織を作るための構造化(売上を作るのを含めた組織の仕組み作り)とそれを支える人材の育成に他なりません。企業は人なり。とは手垢がつきまくった耳に馴染みすぎている言葉ではありますが、事業所はそれを構成する人が作っているものであり、人が事業所そのものです。結局、私の主たる仕事は付加価値を生み出せる人材の育成と、一緒に働くメンバーの自己実現のサポート、皆が生きがいを持って働ける組織の構造を整えることに集約されます。若い頃に面倒でややこしく、自分には無理だ、出来ないと諦めた人に変化をもたらす事を仕事にしてしまいました。

人は人でしか変わらない

若かりし頃、人に興味を持って人に関わり、人のやる気やモチベーションを高めて共に成長する理想に対して絶望し、そんな面倒なことから逃げたいと職人の道に進んだはずにもかかわらず、結局この20年間私が行ってきたのは人との関係を深め、そこから価値を生み出すネットワークの構築に他なりません。しかもそれは自分自身が立ち上げた事業だけでは無く、業界団体やNPOなどの社会活動の組織運営にも関わる様になってしまっています。今でもたまに、こんな面倒でややこしい事に関わる自分に対して向いていないのでは無いか?資質が無いのでは無いか?と自問自答する事があります。ただ、人と関わり、その結果が関わった人の人生や事業、暮らしが良くなる事は何よりの喜びでもあり、人に貢献出来た時以上にやり甲斐がある事は無いとも感じます。人は変えられない。しかし、人は人によってしか変わらないのもまた事実。向き不向きではなく、人を信じてその人が良くなる様にと、私に出来る事を行う在り方を守って行きたいと思います。

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人が誰しも生まれつき持っている良知を開く研修を行っています。

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