公共貨幣入門 #経済革命の書
年末年始の休暇中に何冊かの本を手に取って同時並行で読み進めておりました。その中で強烈なインパクトを与えられたのが今年の10月に発売されたばかりの「公共貨幣入門」でした。少し前に東京に出張に行った際に隙間時間を調整してゆる〜い飲み会でご一緒頂いた武井さんにご紹介頂いたのがきっかけです。武井さんは地域デジタル通貨の発行等の斬新な取り組みを次々と発表され大きな話題を提供され続けている株式会社eumoの代表取締役でもあり、ティール組織の日本の第一人者として自律分散型の共感資本社会への旗手として有名な方で最近私が熱心に参加している経営実践研究会のアドバイザーでもあります。昨年、武井さんが講師を勤められた自然経営の勉強会に参加していたご縁もあって、懇意にさせてもらっています。今年は株式会社四方継でも地域通貨の発行の計画を進めていることもあり、お金の話題を振ったところ、この書籍をご紹介頂きました。
革命の書
最先端の情報を持っている方のオススメ本ということでそれなりに期待をして読み始めましたが、近年、私が手にした経済関連の書籍の中でも群を抜いて衝撃的、かつ納得すると同時に一縷の希望を感じさせられる内容には本当に驚きました。今までマクロ経済学主流派と言われるケインズ経済学による財政・金融およびリフレ政策、最近脚光を浴びていたMMT理論で感じていた持続可能性に対する懐疑的なモヤモヤした部分がスッキリ霧が晴れたように整理できたように感じました。しかし、MMTで定義され、既に現実になってしまっている「全ての貨幣は誰かの借金」という債務貨幣から脱却し、現在、日銀を含む民間金融機関(ひいては国際金融機関)が握っている通貨発行益(シニョリッジ)を国が取り返し、借金を消して貨幣の流通量を直接コントロールするとの「公共貨幣理論」は金融改革などという生やさしいものではなく、世界を制覇しつつあるグローバリストから貨幣の主権を取り戻す革命です。既得権益に塗れた政治の世界でそんなことが実際になし得るのか?との疑問を持たざるを得ませんが、新型コロナによって未曾有のバラマキ予算を組んでいる現状を鑑みると益々借金地獄に拍車がかかり閉塞感が漂う日本経済を立て直すには革命レベルの荒療治が必要なのかもしれません。
参考までに以前に債務貨幣への危惧とシニョリッジ等の基礎知識について書いた記事はこちら、
公共貨幣入門
現在の新型コロナによる経済的な打撃は日本だけではなく世界中で未曾有の危機へと発展しています。経済が停滞する中、各国政府は財政出動という名の借金を繰り返してお金をばら撒くことでなんとか破綻の連鎖を免れています。MMT理論では自国内の債権を発行してもハイパーインフレになることはないのでもっと積極的な財政出動を行うべきと提言されますが、借金を借金で償還し続ければどこかに臨界点があるというのは誰しもが気づくことで、持続可能なシステムとは到底思えません。既にアメリカではインフレが進行しており、日本もその煽りを受けて昨年大きな問題となった木材だけではなくあらゆる分野で値上げが報じられています。長年、デフレに苦しんだ日本ではインフレターゲット2%を目指すとの目標設定がなされてきましたが、不況の状態のまま海外のインフレに引きずられるのはスタグフレーションと言われる所得は下がり物価が上がる最悪の状況に陥りつつあります。
また、国内に流通している貨幣の殆どが市中の銀行による信用創造で発行されていることを考えれば、インフレを抑えるべくバブル崩壊時と同様の総量規制を日銀が行えば経済は一気に冷え込み、更なる不景気の波が襲いかかります。これは経済学者と政治家だけが議論する問題ではなく、全国民の生活に直結する誰もが危機感を持って考えなければならない問題だと思います。以下に集英社のサイトから書籍の紹介文を転載しておきますので、是非とも手に取ってご一読されるのを強くお勧めします。
公共貨幣入門
「失われた30年」から脱却できる唯一の処方箋。
私たちの命と日々の暮らしをつないでいくための貨幣理論。
日本の「失われた30年」は主流派経済学の処方箋を素直に実施した結果である。
新古典派経済学による構造改革は低賃金の非正規労働者を増やし、ケインズ経済学による財政・金融およびリフレ政策は1000兆円を超える借金地獄をつくった。原因は貨幣システムの欠陥にある。
主流派経済学やMMTの誤りを指摘し、現在の貨幣理論にかわる新たな貨幣システム「公共貨幣」を提唱。
「公共貨幣」を取り戻せば「ゼロ成長」から脱却でき、新しい未来が開けることを論証する。
【本文より抜粋】
2019年に武漢で確認されたコロナウイルスは瞬く間に世界中に拡散してパンデミック状態となり、これが引き金となって、2021年現在の世界経済はまさに1929年の世界大恐慌前夜のような様相を呈し始めている。果たして次に起こるであろう世界大恐慌に対する治療薬はあるのだろうか。答えはイエスである。公共貨幣システムへの移行が日本経済の「失われた30年」から脱却できる唯一の処方箋である。
【目次より抜粋】
はじめに貨幣の定義あり
第1章 債務貨幣システムと「失われた30年」
第2章 主流派経済学の破綻
第3章 MMTは債務貨幣のデザイン欠陥を隠蔽
第4章 公共貨幣システムへの移行
第5章 公共貨幣で新国生みイニシアティブ
【著者略歴】
山口薫(やまぐち かおる) 国立アンカラ社会科学大学(トルコ)大学院教授、公共貨幣フォーラム代表理事。
兵庫県生まれ。カリフォルニア大学バークレー校経済学博士号(1985年)。カリフォルニア州立大学、サンフランシスコ大学、ハワイ大学、同志社大学大学院ビジネス研究科等で教鞭をとる。
著書に『公共貨幣』(東洋経済新報社)など。
山口陽恵(やまぐち ようけい) 日本未来研究センター研究員(システムダイナミックスグループ)、公共貨幣フォーラム理事。
愛知県生まれ。EUのエラスムス・ムンドゥス修士号(EMSD 2017年)。
フィンテック企業・ソラミツ(貨幣・経済システム研究所所長)を経て、現在は日本未来研究センターでASDマクロ経済モデル開発に従事。
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