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理学療法学生へのEBP教育はどうするのがよいか

こんにちは。

今日は学校教育者らしく、教育に関するテーマで抄読していきます。
一時EBMという言葉はすごく流行って、メジャーになりました。
いわゆる根拠に基づいた医療ということで、エビデンスを重視して考えていくというものになります。
一躍エビデンスという言葉が流行ったのを思い出します。

そこから時代は流れ、EBMからEBP、エビデンスに基づく実践ということに変革してきています。

今回はその教授法としてどうしたら良いかという点についての論文になります。


抄読論文

Boshnjaku A, Arnadottir SA, et al.
Improving the Evidence-Based Practice Skills of Entry-Level Physiotherapy Students through Educational Interventions: A Scoping Review of Literature.
Int J Environ Res Public Health. 2023 Aug 18;20(16):6605.
PMID: 37623188; PubMed. DOI: 10.3390/ijerph20166605.
初級理学療法学生のエビデンスに基づく実践スキルの向上を目指した教育介入:文献のスコーピングレビュー
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要点

【はじめに】

EBPは医療という括りを飛び出し、実践という形で置き換えられた定義になり、現在はこちらの方が多く用いられている。

理学療法は健康を促進し、疾病を対象とした介入を提供することにより、人々の生活をより良く、より楽にすることを目指すヘルスケア職の一つである。
理学療法教育は進化してきている。
その中で、EBPをカリキュラムに含めて考えることを行うことが多くなっている。

EBPを推論として教授する方法が多く報告されているが、どれも明確に有効なアプローチとして定義されているものはない。
また、その分野に関して多く研究されていない。

健康関連において、EBPを教育の中で活用していくことは質を向上させ、論理的な道筋を作る重要な要素である。

そこで、本レビューは教育方法の効果を体系的に調査し、理学療法学生の認識、経験、問題を探究するという目的を持ち行った。

【方法】

本研究は、欧州高等教育における理学療法の欧州ネットワーク研究グループ内の専門家チームによって実施された。
スコーピングレビューにはPRISMA-ScRチェックリストが用いられた。

  • 英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語で公開されている

  • 国際的に査読されるジャーナルに公開されている

  • 2012年7月11日から2023年3月27日の間に公開されている

  • EBPコンピテンスを高めるための教育介入に焦点を当てていること

  • EBP教育アプローチの定量的、定性的な推定が行われている

ことを適格基準とした。

【結果】

スクリーニングにて459件の論文が抽出され、うち411件が除外された。
残り48件のうち、全文スクリーニングで36件が除外され、12件に絞られた。


定量的に評価したもの、定性的に評価したものなどがあった。

EBPの教授として、図書館との協力を得ながらの検索を中心とした文献へのアクセス方法が多くみられていた。

また、それを読み取り、解釈し、批判的吟味まで行うとを指導しているものもあり、有効な結果を示すと提言されていた。

これらからベースの教育というところをしっかりしていく必要があると感じ取れるところである。


興味深いところで、Klodaらの研究では、検索スキル等を改善する代替的なフレームワークを導入したとある。
この内容をしっかり読み取れていないが、従来用いていたPICOの教育と大差はなかったと述べている。

これに関しては新しい試みが不十分であったというよりは、従来のPICO教育が重要であるということを示している。

また、EBP stepsというアプリの使用についても効果的であると述べられている。
EBP stepsは、

と紹介されているが、アプリ自体は英語で、紹介サイトはノルウェー語?だと思われ、なかなか本邦での活用は難しいところかもしれない。

しかし、欧州ではこのような取り組みを持って、EBPを推進していこうという働きが起きていることは理解しておく必要があるだろう。

【考察】

理学療法教育でのEBPの統合は、学生に学ぶ機会を提供し、専門的な理論的知識と実践スキルの質を著しく向上させる。

今回のレビューで取り上げた研究全てにおいて、マイナスの効果はなく、どれも有効であるという報告であった。

理学療法教育ガイドライン及び専門実践ポリシーの関連する不可欠なコンポーネントとしてEBPは必要である。

その中でもPICOのツールは今回の結果から有効であると報告され、再度注目すべきである。
これらを用いて、臨床推論し、EBP能力を高めていくことが重要である。

また、図書館などの主導プログラムも有効であり、オンラインの活用や情報リテラシーに関しての教育も必須となってくるだろう。

EBP教育において障壁となるものも示された。
科学関連の知識とスキルの欠如
批判的吟味の能力の低下
医療モデルの実践への自律性欠如
インフラの欠如
などが示された。

これらの点を改善していくことで教育の質を高めていくことができる。

どのように活用するか

本邦においては教育の中で臨床推論の要素が難しいということがよく見受けられる。
臨床実習の中でもクリニカルクラークシップ制度を中心とすることで、推論能力の指導にまで及ばないという面も見られる。

欧州ではその点からさらにEBP教育を推進するという方式をとっており、素晴らしい取り組みであると思う。

現状、研究機関としての大学の中では徒弟制の中で自然とこのEBPという流れ、情報リテラシーの流れが身についているかもしれない。
一方、専門学校教育の中ではこの点が難しい可能性がある。

そこまで、教育が及ばないことも考えて、いかにプログラムの中にこれらの要素を組み込んでいくかということが重要になるであろう。

文献検索から、文献を読むこと、それを症例と照らし合わせて、評価治療に向けて活用していくこと。
そのプロセスを教育できる場は、現状は学校教育の中にしかないのかもしれない。

それを肝に銘じて、立ち回っていきたいと思う、良い機会になる論文だった。

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