フランソアに行った話
2024年6月13日のメールマガジンの記事です。
ただいまフランソア喫茶室にきています。
こちらは京都・四条にある、古くからある喫茶店です。
昭和9年創業だとか。
藤田嗣治や桑原武夫も通ったという、有形文化財にも登録されている建物は豪華客船をイメージしたそうで、雰囲気がとても素敵です。
よく雑誌にも載っているので観光客のひとも多いですが、馴染みのかたが四条に買い物にでた帰りに休憩がてら、ご近所さんらしいかたが文庫本を片手に、という姿もまま見られて、長いあいだ愛されてきた喫茶店なのだろうなとしみじみ思います。
わたしはこちらのブランデーケーキがすきで、以前股関節の手術で長期入院するまえに食べておきたいと思い訪れたこともあるのですが、最近大幅なメニューの改訂があったとのことでいま見たところブランデーケーキはなくなっていました。
残念ですが、コーヒーはいつでもおいしいです。
ミルクがはいって、スプーンの上に角砂糖がふたつ乗った、フランソアの味です。
建物はそれほど広くなく、通路はひとがすれちがうたび譲り合いをするようなところですが、いったん腰をおちつけるとしっくりと馴染むというか、どの席でもふしぎとゆっくりできます。
BGMはなくて、周囲のひとたちの話し声や厨房でお皿をあつかうかちゃかちゃという音もわりとはっきり聞こえるのになぜか一体感のあるざわめきとなり、昭和初期、喧々諤々と文化的な議論をかわしたひとたちもゆったりとひとりコーヒーを楽しむひともこの場所にいた時代、こんな感じだったのかなと思いを馳せることもできます。
メニューはさておき、変わらない場所があるのは素敵だな、そうしてこの場所を変わらないものであるためにしてきたことってなんだろうなと考えながらいま、たぶん90年のむかしからだれかが座り続けた場所でコーヒーを飲んでいます。