焦げそうな髪と、焦げなかった気持ち
友達が泊まりに来た。
ドライヤーで髪を乾かしていたら、私の右手からドライヤーをひょいっと取って、彼女が言った。
「自分のこと大切にしてないよ、どうしたの?」
一瞬、何のことか分からなかったけど、彼女の視線を追って自分の髪を見たら納得した。
ドライヤーの熱風がずっと同じところを焼き続けていて、髪からほんのり焦げた匂いがしている。
「え?そう?」なんて軽く返したけど、なんかバツが悪い。
私を見る彼女の目が、ただの心配ってだけじゃなくて、少し悲しそうだったから。
「髪、焦げるよ。なんでこんな雑に乾かしてんの?」
「いや、そんなつもりじゃ…」とか言いながら自分でも思う。最近、確かに雑だなって。髪だけじゃなく、生活全般が。
彼女はドライヤーを手に持ち直して、私の髪を乾かし始めた。
「ほら、こうやって左右に動かすの。ずっと同じ場所に当てないの。こんな簡単なことなのに、なんで自分にやってあげないの?ていうか仕事でやってるでしょ!」
彼女が言ったその言葉が、ちょっと痛かった。ちょっとどころじゃない。
大事にしていない私の体に刺さってくる。
最近、自分にかける時間がない。いや、時間をかける気力が少しばかり遠のく。
何かと理由をつけて省略ばっかり。髪は適当にまとめて済ますし、スキンケアも最低限。
忙しいときはコンビニのご飯にしてしまう。少しばかり本や書類であふれた部屋も見て見ぬふり。
彼女はそんな私を知ってるからこそ、こんな風に言ったんだろう。
「しょうこ、疲れてるんじゃないの?」って、彼女が髪を乾かしながらつぶやく。
「まぁ、そうだね…なんか全部めんどくさくなるときある。仕事終わってやりたいことはたくさんあるのに時間が追いつかなし」
自分の言葉が、自分でちょっと嫌だった。だって、これ言い訳だから。
「でもさ」と彼女が言った。
「そんな日ってたくさんあるよね。別にそれがダメなわけじゃない。でも!」
少しずつ乾いてきた私の髪を丁寧丁寧に彼女はとかす。
「自分を大事にできるのって、自分だけだよ?誰も髪乾かしてくれないし、ちゃんと食べろとか言ってくれる人もいないしさ。しょうこは今、ちょっと疲れがピークの時。ずっと見てるから知ってる」
彼女の優しい声と手は、昔からずっと変わらない。
「また乾かしてあげるね」
そうやってニッと笑った彼女はドライヤーを私に返してくれた。
次の日の朝、鏡の前でドライヤーを持ちながら彼女の言葉を思い出す。左右に動かして、丁寧に髪を乾かす。たったそれだけなのに、なんか少しスッキリした気がした。
そして髪には艶が戻った。ような気がする。
今度は私が彼女の髪を乾かそう。
思いっきり丁寧に。あの日私にしてくれたみたいに。
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髪の毛は洗ったらすぐ乾かしたらいいそうですよ。
ではまた明日💐
大切な時間を使って読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます。
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