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ミスを隠した夜、誠意は隠さないと決めた日
日勤もお昼を過ぎると、患者さんのご家族が面会に来たり午前中とまた少し違う雰囲気になる。
私は相変わらずいろんなところを走り回り、点滴を作ったりナースコール対応をしたりしていた。
夜勤に引き継ぎをして、日勤の残りの業務をしていたら夜勤スタッフの先輩がステーションに血相を変えて入ってきた。
後輩を名前を呼び、ステーションにはいないので今あの患者さんの検査説明し忘れたって言って説明しに行っています。
そう言うと、ちょっと来てと言われて投与が終わった点滴を捨てる場所の所まで連れてこられた。
「どういうこと?」
焦った私の声が、狭い場所で響く。先輩も困ったような怒ったような顔をしている。
そこには患者さんに全て投与が終わった点滴の空袋だけがあるはずなのに。
抗がん剤の点滴治療をしているあの患者さんの
......。
抗がん剤が残った点滴が捨てられていた。誰がみても全て投与していない液体が私の目の前にあった。
先輩、私があの子には確認するので。すみません。私に一任してもらえませんか。
先輩は厳しい。時々スタッフに対して、ところ構わず怒鳴り散らす。
心が折れて来れなくなった子は、1人や2人じゃない。
全部終わったら報告します。医師にも薬剤師にも師長にも。私から報告するので。
患者さんにも私から説明します。
だからお願いします。今回はあの子の指導は私がするので先輩は夜勤に集中してください。
お願いします。
そう言って頭を下げた。
先輩は、
「分かった、ありがと」
短くそう言って私との約束を守ってくれた。
後輩がステーションに戻ってきた。ここじゃないほうがいいな。
ごめん、ちょっとこっちで話したいことがあるんだ。
一瞬泳いだ目を、私は見逃さなかったけど。
気が付かなかったふりをした。
「……捨てました」
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