傷ついた心を芸術にかえて
何かで一位になったり表彰されるようなことがあると、周りから
「元々才能があるから」
「元々できるから」
そんな風に言われることが多い人生を歩んで来た。
言った人は気づいていないだろうけど、
言われた側の私はいつも不満に思ってた。
例外はとっても大好きな人や仲が良い人からの
「天が与えた才だよ」とか
「生まれ持ったポテンシャルの高さ」とか。
そういう表現は好きで嬉しかった。
頑張ってきたことや密かに練習していたことを認めてもらえずに、
“元からできる”
の言葉で片付けられるたびに、私はきっと傷ついていた。
仲が良い人達が私にその言葉を使わなかったのは、私がしていることを想像してくれる強さと優しさで溢れていたかもしれない。
2019年、文章が書けるようになりたいと思って天狼院書店という場所が開催しているライティング教室に通った。
ここのライティング教室は、
小説家になりたい人
webライターになりたい人
副業で稼ぎたい人
そして私のようにただ文章が書けるようになりたい人
そんな人たちを対象にした教室だった。
毎週2000字近くの文を書き、Facebookのグループに投稿する。
天狼院書店の人が読んでOKだったら、サイトに掲載される。
簡単に言えばそんな仕組みだ。
約4ヶ月。
その期間、絶対言い訳はしないと決め全部提出しようと思った。
16回すべて提出した私が、サイトに掲載された回数は13回だった。
周りからはすごいねと言ってもらえたけど、私は悔しくて仕方なかった。
だって本当は16回中16回掲載されたかったからだ。
掲載率が平均値より上と言われようが、落とされた時のあの悔しさは今でもすぐに思い出せる。
当時私が何をしていたか。
締切の2日前までには絶対書き上げた。
印刷して誤字脱字がないか毎回声に出して読んだ。
Facebookに投稿された人の文章もすべて印刷して読んでいた。
読んで、全てに自分の感想を紙に書いた。
書き殴っていたという表現のがあっているかもしれない。
失礼ながらつまらないと思ったものには、何故つまらないと思ったのか。
続きを読みたいと思ったものには、その理由は何か。
全て言葉にした。
なんとなくいいな、なんとなくつまらない。
そんな抽象的な表現は4ヶ月封印した。
白い紙は、真っ黒に染まった。
この人の記事面白いからまた読みたいな。
そう思っても、次もその人が提出してくるとは限らなかった。
16回中16回全て提出していた人は私を含めて数人だったんじゃないだろうか。
もしかしたら私だけだったかもしれない。
1回も提出しない人もいたかもしれない。
強制じゃないから、私がその人達にとやかく言う資格はない。
受講生は裏を返せばお金を払っているお客さんという立場でもある。
でも、せっかく受けてるならあなたの文をもっと読みたかった。
そう思っている人がいたことを、もしこれを読んでくれたなら知っておいて欲しい。
私はあなたの文章を、もっともっと読みたかった。
ライティング教室に通い始めて、今までにない体験をした。
講座はオンラインでも受けられるし、現地に行って受講してもいい。
私は当時、池袋で講座を受けていた。
出席をとって名前を呼ばれ、講師からの授業を受けた後の休憩時間。
“あの、しょうこさんですか?”
そう話しかけられた。
誰だろう?知らない人だよな?
私は顔と名前を覚えるのは得意な方だ。話しかけられても相手に見覚えがなかった。
“記事読みました。すごく素敵だなって。
会いたくてここまで来ました。握手してくれませんか?”
私の書いた看護の記事に感動してくれた彼女は(彼女も受講生)、そう言って手を差し出した。
私は持っていた除菌シートで丁寧に手を拭いてから、右手を差し出した。
ありったけの嬉しいと有難うという気持ちをこめて。
掲載された記事は次はアクセス数というランキングで競う。
私の記事はほとんど10位以内にランクインしていた。
読んでくれる人がいて
いいねをくれる人がいて
感想をくれる人がいる。
まさか私の書いた文章を読んで会いに来てくれる人がいるなんて思わなかったし、知らなかった。
だって彼女が知っているのは私の文章だけだ。
私は本名で投稿していたけど、ペンネームの人もいた。
講座の出席確認は本名で呼ばれる。
その日、ただ一度だけ講師が呼ぶ名前だけを頼りに私に話しかけてくれた勇気はどれほどのものだったんだろうか。
彼女が好きだと言ってくれた記事のひとつは、紙飛行機大会の話だった。
毎週毎週私は書き続けた。
2000文字に苦しみ、タイトルに悩み。
もう他に何を書けば良いかわからない状態ばっかりが続いたけれど、書いて書いて書きまくった。
そうしているうちにあっという間に4ヶ月が終わった。
天狼院書店が開催しているメディアグランプリ。
受講生部門1位になっていた。
1位になったことをFacebookに書いたら、元から上手いものね組も相変わらずいたし、仲のいい友達からは最高に狂ってて大好きと何よりの賞賛をもらった。
そうして私のライティング教室に通う生活は終わった。
しばらくして、天狼院書店から成績表がメールで届いた。
一番上のランクのAA(最優秀)をいただけた。
私がただこれしか出来ないと思って続けている看護師の話を、出会ったことも話したこともない数えきれない人が読んでくれて認めてくれた気がした。
知っている人からの一見褒め言葉に思える違和感の塊と、知らない人達がくれた拍手。
同時に味わった。
悔しくて楽しくて、机はA4の用紙で溢れかえり、狂ったように書き続けた4ヶ月。
私に才能なんて託されなかった。
だからひたすら量をこなして晒し続けた。
傷ついた心を芸術にかえて。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
あなたの大切な時間を使って読んでいただけて本当に嬉しいです。
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