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ヘビーリスナーが推しの24時間を買うとこうなる

近年、ポッドキャストがその勢いを増している。

「人々の可処分時間は、動画やSNSに駆逐され尽くしたのではないか?」

そんな悲観的な予想もあった中で、耳というフロンティアが拓かれた。

スマホを触れない隙間時間も、人は耳でコンテンツを楽しむようになり、その結果ポッドキャストが注目を浴びている。

そんな熱気渦巻くポッドキャスト界隈で、日本の頂点に立つ男をご存じだろうか?

その名は、樋口聖典(ひぐちきよのり)。

ポッドキャスト界の頂点に立つ男 樋口聖典

JAPAN PODCAST AWARDS 2019で大賞とSpotify賞のダブル受賞、Apple Podcast総合ランキング1位――

これらの実績を誇る「コテンラジオ」という“オバケ番組”のパーソナリティを務め、さらにはプロデューサーとして数々の人気ポッドキャストを手がけている男、それが樋口さんだ。

歴史を面白く学ぶ コテンラジオ

(私は2019年よりコテンラジオのヘビーリスナーで、455エピソード(2025年1月時点)全てを視聴済み。1エピソード平均40分とすると合計18,200分――つまり、かなりの人生時間を樋口さんの声に捧げていることになる。)

そんな“ポッドキャスト界のレジェンド”とも言うべき樋口さん。その樋口さんが、なんと「時間を売りに出している」という情報が耳に飛び込んできた。

どういうことだ?


樋口さんの24時間を購入

樋口さんは、ポッドキャスト界の雄であると同時に、廃校をリノベーションして「いいかねパレット」という、住めて泊まれて遊べるクリエイティブな空間を運営する、株式会社Bookの創業者でもある。

いいかねパレットは、コテンラジオが始まった時に使われていた収録スタジオがある聖地として、リスナーの間では有名な場所である。

つまり、いいかねパレットがなければ、コテンラジオは生まれてなかったかもしれない。あのオバケ番組が。

その「いいかねパレット」で、校庭メンテナンス資金を募るクラウドファンディングが行われていた。

現在、樋口さんは会長になっており、左の男性が社長の青柳さん

いいかねパレットは、今やコテンラジオリスナーが日々訪れる聖地になったとはいえ、廃校を利活用するというビジネスとしての難しさ、また、福岡の田川という、お世辞にも観光地とは言えない場所で運営していることもあり、まだ赤字のようだ。

今回、校庭のメンテナンスのために、また、その他の傷んだ箇所の修復なども含め、クラファンで資金を募っていた。

私も、コテンラジオのヘビーリスナーとして、聖地のクラファンということであれば是非とも支援したいとサイトを覗いてみたのだが、

その中に、ひときわ異彩を放つリターンがあったのだ。

クラファンのリターン 樋口聖典1日レンタル50万円

50万円で、樋口聖典を1日(24時間)レンタルできる――!

ポッドキャスト界のレジェンドである彼の1日が“商品”として並んでいる。これはもう、常識を覆す事態だ。

通常、人の命は商品として売られない。だが、人の時間は「命の一部」に等しい。それを考えると、このリターンは、樋口さんの命の一部を“売り”に出していると言っても過言ではない。

ちなみに、10万円支援のリターンとして、樋口さんの1時間レンタルというものもあった。

1時間でできることといえば、オンラインミーティングやお茶をする程度かもしれない。

だが、24時間あれば、ほとんどあらゆる挑戦が可能になる。

ほとんどの人は、自分が心底リスペクトする人物の24時間を、「買う」という発想すら抱かず、人生を終えるだろう。

それを私は、掴み取ろうとしている。

普通に考えれば、50万円は大きな金額だ。私は全くもって金持ちなんかではないのだし。

しかし、樋口さんともなれば、24時間で何かの作業を頼むとしても、50万円は格安と言える。

しかも、ここで購入するのは“作業力”ではない。

“憧れの推しの24時間”を自由に使えるという、プライスレスに近い体験だ。

こんなチャンスは人生で二度とないかもしれない。

38年生きてきて、自分の人生に影響を与えるイベントはたくさん経験してきた。

受験、就職、昇進、挫折、留学、転職、結婚。

その中で、確信を持っていることがある。

人生を大きく転がすのは、いつも決まって、こういう衝動的なアクションなのだ。

ええいままよ!

ポチー!

樋口さんの24時間で何をするか

私は樋口さんの24時間を50万円で手に入れた。(正確にはクラファンのリターンだが、要は樋口さんの時間を購入したも同然。)

おまけに、コテンラジオを生み出したいいかねパレットの校庭メンテナンスに対しての貢献もできるのであれば、一石二鳥。

いい決断だった。

いや、この決断の良し悪しを評価するのはまだ早い。

決断というのは、その直後に良し悪しが評価されるべきものではないことのほうが多い。

その決断をいいものにできるかどうかは、おうおうにして決断者に委ねられる。

問題は、その24時間をどう使うか、である。

あなたなら、推しの24時間を自由に使えるとしたら、何をしますか?

推しやリスペクトする人に求めること、それは突き詰めると、一つしかないことがわかる。

仲良くなりたい。

私は樋口さんと仲良くなりたい。

認めてもらいたい、という思いもあるが、せっかく自由に使える時間が24時間もあるのだ。認めてもらうにとどまらず、さらにその上、仲良くなれたら最高じゃないか。

じゃあ、どうすれば仲良くなれる?

「24時間あるなら、ただおしゃべりして仲良くなればいいじゃないか」「一緒に旅行に行くのもいい」という声が聞こえる気がする。

しかし、真に仲良くなるにはもっと深いアプローチが必要だと私は考えている。

単なるおしゃべりは私にとっては至福のひと時であろうが、樋口さんの記憶に深く残るかと言えば微妙だ。

本当に強い絆を結ぶには、共に“死にものぐるいのチャレンジ”を経験する必要があるのではないか。

ところで、私はマンガ『ワンピース』が好きだ。ジャンプ+をワンピースのために購読し、ワンピース考察系YouTuberも欠かさずチェックしている。

そんな私だが、ワンピースで最も好きなシーンがある。

それは、アーロン編にて、ルフィ、ゾロ、サンジがそれぞれ魚人海賊団の強者と戦っている中、ウソップが自分よりも明らかに格上の相手であるチュウと対峙したときのシーン。

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ウソップは死んだふりで一度は難を逃れようとしたが、自ら奮い立って敵に挑んだ。

ONE PIECE カラー版 10 (ジャンプコミックスDIGITAL) Kindle位置 No.119
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“毎日命はって生きてるから、あいつらは本当に楽しそうに笑うんだ!!!”
“今ここで全力で戦わなかったおれに、あいつらと同じ船に乗る資格なんてあるはずねェ!!!”

ONE PIECE カラー版 10 (ジャンプコミックスDIGITAL) 第87話 "終わったんだ!!"

このとき、ウソップは思った。

自分だけが命をはらずに、命をはって戦っている仲間と心から笑い合うことはできない。本当に楽しそうに笑い合えるのは、共に死にものぐるいで戦い、苦しみ、努力した者同士だ。

私はこのシーンが本当に大好きだ。

心から信じられる仲間を作るためには、大事なときにヘラヘラしていてはダメだし、薄っぺらいコミュニケーションを取ったりしているだけでは不十分なことを教えてくれている。

24時間、樋口さんと語り合って仲良くなれるか?

否。

語り合うだけでは「死にものぐるい」の匂いが足りない。

共に困難な“ハードシングス”に挑まなければ、真の友人にはなれない。

樋口さんとのミーティング

その後、いいかねパレットのクラファンは目標金額を達成し、成功のうちに無事終了した。

後日、リターンに樋口さんの時間を選んだ人とは、樋口さんとのオンラインミーティングが設定された。

そこで、私ははじめて、樋口さんと顔を合わせることになった。あの、18,200時間、声を聞き続けてきた憧れの人と。

ここで24時間の使い方について相談する。

樋口さん「はじめまして!いやー、この度はクラファンでのご支援、ありがとうございます!」

にこやかな樋口さん

聞き慣れた声。ほがらかな表情。初めて話すとは思えない、不思議な感覚だった。

Zoomの背景は、やっぱりいいかねパレットなんだな。

私「はじめまして!こちらこそ、いつもありがとうございます。コテンラジオは全エピソード拝聴しております!」

これが私です

樋口さん「ありがとうございます!なんか、普通の人で安心しました」

私「どういうことです?」

樋口さん「いや、僕の24時間を50万円で買う人なんて、頭おかしい人なんじゃないかと思ってめちゃくちゃ怖かったんですよ!!」

私「なるほど笑」

樋口さん「それで、早速ですけど、24時間、何すればいいですか?」

私「基本的に何でもやっていただけるんですよね?」

樋口さん「はい、基本的には何でもいいです。何でもやります。」

私「わかりました。24時間で樋口さんとやりたいこと、決めてきました。僕と漫才を一緒にやってもらえませんか?

樋口さん「は??」

「何言ってんだこいつ?」という表情

一瞬の沈黙。たった1秒ほどかもしれないが、私には30秒にも感じられた。

この間、樋口さんの脳内で“理解”“驚き”“困惑”が交錯していたのだろう。

樋口さん「漫才、ですか?」

「やっぱ頭おかしい人なんか?」と頭を抱える様子

私「はい、僕と漫才をしてください」

共に挑むハードシングスは何か、私が熟考の末、たどり着いたのは、漫才だった。

私は言うまでもなく、漫才の素人だ。そして、一般的な羞恥心を持ち合わせているので、漫才でスベるのは何が何でも避けたい。できることならやりたくない。

しかし、私には時間的猶予がある。樋口さんの24時間は、半年間のうちであればいつでも行使できるので、最大で6ヶ月間、準備することができる。

漫才を舐めているわけではない。6ヶ月で面白い漫才ができる自信があるわけではない。何ともならないかもしれない。でもなんとかするしかない。

私にとってのハードシングスとしては、申し分ない。

問題は、これが樋口さんにとってハードシングスであるか?だ。

樋口さんは元お笑い芸人という特殊な経歴をお持ちだ。そして、日本一のポッドキャスターなので、当然おしゃべりのプロでもある。ならばハードシングスではないのではないか、というと、決してそうではない。

樋口さんにとっては、持ち時間は24時間しかない。その間に、ネタづくり、ネタ合わせ、仕上げをやり切らなくてはならない。

おまけに、相手はこのズブの素人である。

元お笑い芸人として、おしゃべりのプロとして、いかに素人とのコンビとはいえ、漫才で無様にスベるわけにはいかない。

つまり、樋口さんにとっても、私との漫才はリスキーなチャレンジである。

これを乗り越えられれば、仲良くなれる。きっと。

樋口さん「うーん…やりましょう!いや、でも嫌やなぁ。昔、芸人やってたけど、漫才は苦手で…」

苦々しい顔

よし!私は心の中でガッツポーズ。

やはり、樋口さんにとってもこれはチャレンジなのだ。

私「ありがとうございます!なぜ漫才なのか、説明しますね。」

樋口さん「ぜひ。」

私「樋口さんと友達になりたいんですよ。」

樋口さん「ほう?」

「またなんかよくわからんこと言いよったぞ?」の顔

私「コテンラジオが大好きで、ずっと憧れていた樋口さんとせっかく24時間を共にできる機会なので、この24時間で仲良くなりたいのです。そして、仲良くなるには、お互いにとって厳しいハードシングスを乗り越えるのが一番効果的だと思うんです。」

樋口さん「一理ありますね。」

私「漫才は、私にとって初めての挑戦ですし、樋口さんにとっても苦手分野の再挑戦になる。しかもこんな素人との漫才はスベる可能性大。それこそ死にものぐるいでやる必要がある。これなら24時間後には肩を組んで笑い合える仲間になれる気がするんです。」

樋口さん「なるほど!嫌だけどおもしろい(笑)。場所は、どうしますか?」

私「いいかねパレットがいいんじゃないかなと思っています。少人数でもいいので、ギャラリーに見てもらいたいですし、いいかねパレットなら常に何人かはいますよね?

樋口さん「そうですね」

私「あとは、なるべく我々にプレッシャーをかけたいので、オンライン配信や録画で公開したいと思います。」

樋口さん「いいですね。狂ってますね。最高です。ネタは二人で作るんですか?」

ちょっとずつ覚悟が決まってきた

私「基本の台本は私が準備します。でも当日にブラッシュアップしましょう。」

樋口さん「漫才の台本、作ったことあるんですか?」

私「ありません。でも過去にデータサイエンティストだった時に、M-1の漫才を、ツイートデータを使って分析したことがあって、今回、データを使って、ボケの類型を整理したり、どのくらいの頻度でボケを詰め込む必要があるのか、など分析した上でネタづくりしようと考えています。」

樋口さん「データで漫才!?発想がおもしろい!いいね、やりましょう!でも、ボケの中身とかは流石にデータじゃ作れないですよね?」

私「はい。そこはもう自分で考えるしかないんですけど、ボケのパターンを明らかにすれば、発想しやすくなるんじゃないかと。アイデアって、完全に自由な状態よりも、何らかの制約があったほうが発想しやすいものじゃないですか」

樋口さん「はー。プロの漫才師じゃなくても、それなりのネタを作れるのか、みたいな実験でもあるんですね。めちゃくちゃやる気出てきました!やりましょう!」

「50万円支援してもらってるし、やるしかない」の顔

私「はい、よろしくお願いします!」

こうして、ポッドキャスト界の帝王・樋口さんと漫才をすることになった。

日取りは、2025年6月ごろということだけを決めて、具体的な日程は、2025年3月に決めましょう、ということでミーティングは無事終了した。

これから私はどうするか

現在、2025年1月。漫才まで約半年。

漫才することになったのはいいものの、シンプルに怖い。スベりたくない。準備なしで当日に臨むわけにはいかない。

これは「樋口さんと漫才を通じて本当に仲良くなれるか」という実験であると同時に、「完全素人が半年で面白い漫才を創れるのか」というチャレンジでもある。

仲良くなることは24時間に任せるとして、当日までにできることは山ほどある。

台本制作、M-1漫才の徹底分析、指南書を読み漁り、“笑い”についての研究論文にも当たってみる。

ツカミにもパターンはあるのか?フリの長さはどのくらいにすべきなのか?ボケの頻度は、前半から後半にかけて増えていくべきか?ボケだけではなく、ツッコミにもパターンはあるのではないか?

調べなければいけないことは山ほどある。

プロでなくとも、やれることはたくさんあるはずだ。

ヘビーリスナーが推しの24時間を買い、仲良くなるための壮大な実験がいま、始まる。

お願い

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

今後、樋口さんとの漫才当日までの準備プロセスは、このnote、そしてXのアカウントで順次発信します。

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なお、次回noteは、「漫才の光と影。ツッコミから紐解くボケの全パターン解明」の予定です!

また、もし「こんなネタどう?」というアイデアがあればコメントやメッセージでぜひお寄せください!

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