実家にいたアシダカグモ※クモが苦手な方ご注意ください!
私の実家は自然が豊かなので、虫がたくさんいた。中でも、やたらとクモがたくさんいたように思う。
実家に生息していたクモは、ハエトリグモがほとんどだったが、一部ファンには軍曹と崇められるアシダカグモもめちゃくちゃいた。室内に平然といた。幼い子どもの手のひらくらいのやつが。
いまはもう大人なので、クモにビビる私ではないが、幼い頃はかなり苦手だった。
いや、ハエトリグモ程度なら、当時でも大丈夫だ。ぴょんぴょんと跳ねる姿は実際可愛げがあるし、何より小さいので、戦っても9割9分勝てる自信があった(1回だけ負けたことがある)。
問題はアシダカグモだ。奴らは大きく、素早く、強い顎を持っている。なんせ、イニシャルG(文字にするのも嫌なあいつ)と戦って勝てるポテンシャルを持っているのだ。
イニGは、虫が大丈夫な方な私でも、めちゃくちゃ嫌なので、そんなあいつに立ち向かえるアシダカグモには、ある意味最初から負けている。
我が家に出現するアシダカグモは、なぜか、お風呂場及びその周辺を好んだ。今思えば、網戸の立て付けが悪いか何かで、出入口となる隙間でもあったのだろう。
お風呂場は、わりと1人で過ごす場所なので、アシダカグモと対峙した日には、お風呂掃除用のブラシを武器に、孤軍奮闘する必要があった。とても疲れる戦いだった。
なお、覚えている限り、アシダカグモの命を奪ったことはない。イニGと戦ってくれる英雄なので、とにかく部屋から追い出す一手だった。
そんなアシダカグモの、親分を見たことがある。
もしかしたら夢だったかもしれない。いや、私は本物だと信じているが、当時小学校くらいの自分の顔より大きかったので、ちょっと怪しい。
場所は仏間で、私は祖母と一緒に寝ていた。祖父はいただろうか(じいちゃん、思い出せなくてごめん!)。
ふと目が覚めて、何の気無しにあたりを見回すと、仏間の玄関側の引き戸の上に、そいつはいた。
大きかった。成人男性の手のひらくらいだろうか。
放射状に広がる長い脚がクモを大きく見せるものだが、そいつは、殻付きの胡桃ほどもありそうな、立派な胴体が印象的だった。
何というか、大き過ぎて、図鑑のように、いつもは見えないクモの体の構造がはっきり見えたように記憶している。
そいつは、特に何をするでもなく、ただただじっとしていた。
最初は、初めて見る大きさに、ある種の神々しさすら感じたため、我が家の主かと思った。
しかし、祖父母と両親が一生懸命建てた家なのに、勝手に主になられても困るため、その説は却下した。
次に、親分だな、と思った。アシダカグモの親分。
要するに、また眠くなって、考えるのが面倒になっていた。ただ、夢うつつで、「顔の上を走られたらやだなあ‥」とは思っていた。
朝起きると、親分はいなくなっていた。後にも先にも、親分を見かけたことはない。
アシダカグモの寿命が何年か知らないが、元気にイニGと戦い、勝利していたら良いと思う。
終わり。