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祈りの力 5

前回の続きです。

どのくらいベッドの中で泣いていたか覚えていませんが、
その後起きてキッチンに行きました。
グレープフルーツジュースをグラスに注いでテーブルに置いて・・・

そこで、Sさんのことを思い出すとまた悲しみが大きな波のように
襲ってきました。



”胸にぽっかり穴があいたようだ”

っていう表現がありますね。

私、それは比喩だと思っていたんです。

でもその朝、私はそれがただの比喩ではなく、
実際に起こるのだということを知りました。

悲しくて悲しくて、もうこの世にSさんはいないのだ。
どこを探してもいないのだ、と思うと、本当に胸がきりきりと痛みだし、
あまりの痛さに立っていれなくなり、
私はヘナヘナとうずくまるしかありませんでした。

もう会うことができない

もう顔が見れない

もうこの世界のどこを探しまわってもSさんはいない。

私はこれからSさんのいない世界に生きていかないといけないのだと
思うと、この世に残ってしまった自分に嫌気がさし、
消えてしまいたいと思ったほどでした。

でも消えることもできず、そんな自分の存在がうっとおしくも感じ、
怒りを感じたりどこにもぶつけることのできない感情に
押し流されていました。

と同時に、そんな自分を冷静に客観視している自分もいて、
悲しみに暮れ号泣しながら、

「私、こんなにSさんのこと好きだったんだ。初めて気がついた」

と思っていました。
本当に、まるで自分の中に2人の私がいるような感覚。
不思議ですね。


長くなったので、また次回。

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