外へ出て試しの一歩薄暑なる 紫陽花の花もしづくも青きまま 緑陰に車椅子にて二人かな
友の声胸に残りし夏の夕 二十歳とも古稀ともをりし夏の海 紫陽花の花もしづくも青きま々
外へ出て試しの一歩薄暑なる 好きなことできる子供に夏の園 帰らない子供噴水戯るる
夏草や伸びて刈られてまた伸びて
冬の雲輝く銀の色となり 冬の月青く光りし岸辺かな
昼過ぎて雪降る街となりにけり 一本の街灯点り夜の雪 昼過ぎて雪降る街となりにけり
外つ国にいる子の分も厄払い 節分の禰宜と馴染みになりにけり
大寒に鰤大根の旨き夜 温め酒解き放たれし金曜日
時雨るれば過ぎゆく日々の早さかな
島大根みやげに買ひし岳父かな
春菊の深き緑の浮かぶ鍋 闇汁に今年の悩み投げ込んで あれこれと怪しき物あり闇汁会
福引を運のある子にまかせたる 目を閉ぢて耳を澄まして冬日和 この世での仕切り直しや日向ぼこ
寒き朝食事の用意出来てゐる 牛飼ひの朝餉に群るる冬の蠅 ぬくぬくとコーンスープや寒き朝
冬に入る人の話に加はりて 笑初職場明るく始まりぬ 改まり患者とナース御慶かな
平凡な暮らしが好きと冬日かな ふるさとを離れし妻の小正月 カーテンを静かに開けて初明り
暗雲の流るゝ先や冬の海 立ち位置をこことさだめて寒燈下 極月の市電に乗りて古書店へ