消えた
しんしんとした
夜闇をすり抜けて
ぼくはきみのキッチンで
ミルクティーをつくろう
その間にきみは
ぼくの本棚の
好きな本を
一冊燃やして
何もなかったかおをして
ミルクティーを飲めばいい
きみの爪の
曖昧な色のマニキュアを
見ているだけのぼくを
知らないふりで飲み干して
きみは自分のベッドで眠るんだろう
消えた本のタイトルを
ぼくはずっと
思い出せないまま
◇矢野顕子さんの歌う「中央線」が大好きで。作詞作曲は宮沢和史さん。あんな詞が書けたらと憧れてつくったもの。「中央線」では二度と帰ってこなかったきみ。もしかしたらぼくときみには、いくつかのもっと小さな、すれ違った夜があったのかも。そして小さな復讐。見た目は収まったように見えても、解決していないことって色々ある。それは恋に限らず。うーんこんなに解説しては詩にした意味がないのかもしれない。