同じ名を持つわたしたち。企画メシのその先に
新しい年が始まったけれど、まだまだ書き尽くせない「企画メシ2021」のこと。昨年私が参加したコピーライター・作詞家の阿部広太郎さんが主宰する連続講座「企画でメシを食っていく(通称企画メシ) 2021」。
最初のメールで、一緒に学ぶ81名の企画生(受講生をこう呼ぶ)が紹介された。名前を追っていて、目が止まった。私と同じ名の人がいる。それも漢字まで同じ。講座が始まる前から頭に残っていた。
私にはなかった名前の「解釈」
企画メシ最初の課題は「自分の広告」。私は自分の名前「ショウコ」と同じ音の「証拠」にからめて、「論よりショウコ」と題して、今まで自分が書いてきたものの写真を並べ、ライターとして働く自分を表現した。
私と同じ名のショウコさん(以下、Sho-koさん)も名前をモチーフにした「自分の広告」を作っていたけれど、アプローチが全然違った。ショウコの「祥」という文字を、「私の中には『羊』がいます」と表現していた。
「毛布みたいな温もりを。」というコピーもお子さんたちとの写真もあったかい。もこもこの毛皮の羊のイラストを見ながら、私の中にも「羊」がいたんだと気づいた。そして、自己紹介の中にあった「歌手」という言葉に驚いた。
講義はオンラインで開催され、企画生同士の交流会もオンラインで行われた。初めての交流会でSho-koさんと話す機会があった。夫婦ユニット「Unsteady Blanket」として活動していて、その歌は、Apple Musicなどのサブスクでも聴けると教えてもらった。名前が同じということもあるし、歌手ということもあり、Sho-koさんはずっと気になる企画生のひとりだった。
新しい扉が開いた
3回目の「伝統の企画」の後で、Sho-koさんが炭坑節を歌う動画をアップしていて、初めてその歌声をきちんと聴き、素敵だなあと思ってDMを送った。
企画メシには「感動メモ」と呼ばれるスプレッドシートがある。毎回の講義で事前に課題が出され、提出された企画を見て、よいと思うものを三つ選び書き込む。「選ぶ練習」でもあるので、頭を悩ませながら三つに絞り、その理由も添えて書く。
多くの人から選ばれる企画とそうでない企画があるのは事実で、それも含めて学びになるのだけれど、選べなかった企画にも心を動かされるものがたくさんある。Sho-koさんが「自分の課題は選ばれていない」と言っていたのが気になって、DMに「(自分の広告を)いいなあと思って見てました。私の中にも羊がいるんだとうれしくなりました」と書き添えた。
炭坑節を歌うSho-koさんの表情は穏やかで、その声はやわらかく、私は「新しい扉、開きましたね!」と書いた。そこからのSho-koさんは、どんどん生き生きしていった。課題に向き合う度に新しい歌が生まれていく。悩んだ時には、講師の方にまっすぐに問いかける。その姿勢も見習いたいと思った。
▼企画メシの課題から生まれた歌も聴けるYouTubeチャンネル
得意なものにしがみつこう
Sho-koさんの歌をApple Musicで聴けると教えてもらったのに、最近になってやっと聴きはじめた。後から聴こうと思っていたこともあるのだけれど、もう一つの理由として、たぶん眩しかったのだ。私はすごい、と思う人に対して、ちょっと引いてしまうところがある。歌を作り、自分で歌って届けられるなんて、すごいことだし、カッコいい。
そう思っていたら、春花さん、Soyokaさんのライター3人で取り組んだ「ラジオの企画」での「ライターのお茶会」について、Sho-koさんから感想をもらった。「ライターさんて、かっこいい仕事ですね」と言われて、うれしかった。
2020年に放送されたNHKの連続テレビ小説『エール』の中で、森山直太朗さん演じる小学校の先生から、主人公がこんな言葉をかけられる場面がある。「#私にエールをくれた言葉」という企画を機に、思い出した言葉だ。
Sho-koさんの得意なことは、歌うこと、作曲すること。私のほんの少し得意なことは、書くことだろうか。
いつかコラボをしてみたい
企画メシを続ける中で、同じ名前つながりで何かコラボしたいな、と思いはじめ、Sho-koさんに伝えると、こんな返信があった。
「『しょうこ』と呼ばれ続けてきた人生、何かきっと共通点がありますよね」
私にない発想だった。何か共通点があるだろうか。コラボするなら何ができるだろう。一緒にラジオ配信とか?などと考えているうちに、一つ頭に浮かんだことがあった。私に歌詞が書けないだろうか?
企画メシの中から生まれたチームの企画で、「企画メシオリジナルソング」のプロジェクトが進んでいて、Sho-koさんは作曲を担当していた。オリジナルソングチームのワークショップに参加した時に、作詞の方法や考え方などを教えてもらい、こうやって歌ができるんだ、と興味が湧いた。
▼企画メシオリジナルソング『プロローグ』
最初の「自分の広告」の課題に取り組む時に、遠い遠い昔にノートに書いた歌詞もどきの文章を見つけだし、頭にあったのだと思う。Sho-koさんはシンガーソングライターなので、恐る恐る他の人の作詞でも歌うのか聞いてみた。すると、他の人が作った詞も歌うし、歌詞ができたら教えてほしいと返事が返ってきた。もし一緒に歌をつくれたらすごい。いつか歌詞を書いてみたい、と思いはじめた。
歌いたいあなたと書きたいわたし
12月11日の最終講義で、初めてSho-koさんと顔を合わせた。講義の後にはミニライブもあり、生うたを聴いた。細い体から力強い歌声が響く。
講義後の懇親会で「Wショウコ」で写真を撮った。写真を送る時、私はこう書いた。「Sho-koさんの『歌いたい』気持ちが湧き上がってくるの、私の『書きたい』気持ちがあふれてくるのと同じだなあと思いました。」
Sho-koさんから、こんな言葉が返ってきた。「本当しょこさんの『書きたい』と私の『歌いたい』が溢れる気持ち同じですね…。同じ『しょうこ』を生きてきた者同士、何か共通するものがありますね…」
(同じ名前なので、私は「しょこ」と呼んでもらっている)
Sho-koさんは毎週土曜にラジオ配信を始め、「Hook Song」と名づけ「ひとりのために言葉を歌う」番組を届けている。その中で、私にも歌を贈ってくれた。「金木犀と旅の香り」という私の好きなものが入った、うれしい歌のプレゼントだった。
▼Sho-koさんのnoteはこちら
朝ドラ『エール』の中の言葉で、もう一つメモしていたものがあった。
「Hook Song」は、そんな誰かひとりのために書かれ、歌われている曲だと思う。
はじめての作詞
私も金木犀の詞を書きたいな、と思ったことがあったのだけれど、最初の1節くらいで言葉が止まってしまっていた。でも、このSho-koさんのラジオの前後で、歌詞のようなものが出てきて、ノートに思いついた言葉を書き連ねた。そこから言葉を整え、Sho-koさんに見てもらった。横浜・みなとみらいにあるシェアスペースBUKATSUDOで行われた最終講義の日のことを思いだしながら書いたものだ。
少しリズムが悪いかな、と気になっていた部分は、Sho-koさんがアレンジしてくれた。そして、初めて書いた歌詞にメロディーがつき、歌が生まれた。思っていたよりもずっと早くSho-koさんから音声ファイルが届き、うれしくて、何度も何度も聴いた。
みらい という名のみなとで
そして、今日、2022年のはじまりに、お年玉みたいに歌が届いた。
▼アプリをダウンロードすると聴けます。
「想像もしなかった未来」という言葉を時に聞くけれど、企画メシが始まった時には、全く想像もしなかった出来事が待っていた。いろんな背景を持つ人が集まる企画メシだったからの出会いで、企画メシだったから実現したことだ。
実はこの後、また一つ歌詞を書いたので、歌になるかは別にして、Sho-koさんに見てもらおうと思っている。中学生のころの自分に教えてあげたい。あなたの歌詞に曲がついて歌になったよ、と。
Sho-koさん、夢をかなえてくれて、ありがとうございました。
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