下鴨車窓『散乱マリン』
・作品を準備する美術家と、そのアシスタントや関係者たちのやり取りが生々しく、詳細に描かれていました。私は芸術祭の当日スタッフを数回経験したことがあるだけですが、それでも「あぁーこんなことあったなー」「こんな人おったなー」と共感できました。
自転車を探す女性とその周囲の人々については、あまり共感できませんでした。その女性の持ち物に対する執着、あきらめずに全て集めたいという強い気持ちやそれまでの背景を、私には汲み取りきれなかったです。
・美術家たちと女性たちがそれぞれに ”置き換えられる” 仕組みの面白さは、早い段階で把握できてしまうので、両者が初めて舞台上で対峙するシーンでは「まあ、そうなるわな」と妙に納得してしまいました。
・誰かが誰かを攻撃するという人為的な原因だけで、人々が傷つき倒れていくように見えて、少し残念な気持ちになりました。
開演前のあいさつ文を読んだ時から、私は "致し方なさ" を作品に求めてしまっていたようです。別役実の言う「『そうしないでいてもしょうがない』から『そうする』」※ 人生を、期待しすぎてしまいました。
最後の2人の対話には心洗われました。ただ、効果音以降は、作者の思いを補足しすぎているように感じられました。
(2020年1月25日、京都芸術センター)
※別役実『満ち足りた人生』(白水社、1997)p.9
おしまい