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小規模ならではの空間設計で、園を「もう一つのおうち」に——写真で知ろう!小規模保育【環境】

古民家での開園から4年経ち、子どもたちがより安心して、のびのび過ごせるようにと建てた新園舎。「もう一つのおうち」のコンセプトを踏襲しながら、空間の区切り方、つなげ方を意識した設計を行いました。

<めでる小規模保育園/佐賀県佐賀市>

【園児数】19人(0歳児7人、1歳児8人、2歳児4人)
【保育者数】8人(施設長を含む)
(2023年2月時点)

■ ねらいと配慮

当園の名前“めでる”には、「情緒の安定した状態で、その子のありのままを受け止め、認め、可愛がる」の意味が込められています。この視点を大事にしながら、実際の保育の中では、園が子どもたちの「もう一つのおうち」になることを意識した生活や環境づくりを行ってきました

園舎はもともと古民家をリフォームしたもので、みんなが自然な気持ちで来たり帰ったりできる、「おばあちゃんのおうち」のような温かい空間でした。一方で、スペースの都合上定員を12人にしかできず、きょうだい児を受け入れられなかったり、障害物が多く保育を進めづらい側面が一部あったりと、課題も抱えていました。

そこで、今後も見据えて新しい園舎に移ることを決意。より安心できる環境を整えることから、子どもたちの主体性を育んでいけたらと考えて設計を行い、2022年の5月に移転を実現させました。

■ 振り返り

新園舎は、入口から「0→2→1歳児」の順で、あえて年齢のクラスごとに部屋を区切った構造になっています。特に0歳児の場合は、あまり広々としたスペースではないほうが安心して過ごせ、保育士の手も届きやすいと考えて、少し小さめの「保育室」と「ほふく室」を玄関入ってすぐに設けました。

一方で、異年齢の交流も子どもたちの発達には大切です。そこで0歳児の2部屋の天井を、隣の2歳児の保育室とつなぐ「吹き抜け」に設計。直接見えなくても、同じ空間の中で楽しそうに過ごす雰囲気を常に感じられるようになりました。

0歳児さんの泣き声が多いときには、「何かあったのかな?」と2歳児さんが“お助け隊”になって登場することもあり、互いに交流を深めることができています。

あわせて、屋外の環境づくりにもこだわりました。園舎を囲むように芝生を敷き、そこと建物の間に「ウッドデッキ」を設けています。広めの踏み板が3段あり、お外で遊んだあとにちょっと腰をかけたり、保育士と絵本を読んだりすることをイメージしてつくりました。

実際には、0歳児さんがこの階段をすごく気に入っていて、保育士に見守られながら何度も上り下りを楽しむシーンが見られています。1歳児さんの発案から生まれた、階段にマットを敷いての滑り台遊びも、子どもたちのお気に入りです。

「ウッドデッキ」はどの保育室からも気軽に出られるようになっており、それぞれの年齢の保育室をつなぐうえでも、重要な役割を果たしています。

子どもたちが、こちらの想定を超える使い方を考えてくれた場所もありました。

例えば、調理室と保育室の間の「カウンター」下にあるちょっとした空間に、子どもが潜り込んでみたり、絵本を持ち込んで読んだり。まさに自分たちのおうちのように、子どもだけの魅力的な遊び場として上手に使う姿が見られるようになっています。

■ 「小規模保育」としての視点

子どもたちを見ていると、空間同士を緩やかにつないだり、あえてデッドスペースをそのままにしたりすることが、乳幼児期の主体性を育む環境として重要な意味を持っていると感じます。そうした環境でも安全な保育を行うには、全体の人数が多すぎず、職員配置に余裕を持たせられる小規模保育の特性が、一つ大きな魅力になることに今回改めて気づきました。

当法人には「保育事業から社会を創造する」という理念があり、集団生活を行う「施設」としての側面と、家庭的環境としての「おうち」の側面の両方を大切にしています。今回の「もう一つのおうち」を意識した空間設計をベースに、より主体性を育む保育環境づくりを深めていきたいと考えています。

【園情報】
めでる小規模保育園(株式会社めでるグループ)
https://www.facebook.com/mederu2018/
佐賀県佐賀市高木瀬西2丁目5-25
定員12名
小規模保育事業A型・管理者設置あり


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