認定こども園・放課後児童クラブとの併設で、体験の機会を広げる──写真で知ろう！小規模保育【園運営】
定員19名の小規模保育園と同時に、小学生が通う放課後児童クラブを同じ建物の2階に、66名の認定こども園を近隣に開所した「カール英会話グループ」。小規模ならではの良さを確保しながら、経営上のゆとりや子どもの安全が生まれる運営を行っています。
＜カール大和町ナーサリー／宮城県仙台市＞
【園児数】19名
【保育者数】保育士8名＋看護師2名
（2024年10月時点）
■ ねらいと配慮
一人ひとりの子どもの発達にあわせ、丁寧な関わりを実現できる制度として生まれた、小規模保育園。そうした魅力の一方で、施設の対象は「0〜2歳児のみ」であり、3歳児以降の進級先を別途探さないといけない点は、通園家庭の負担にもなっています。
そこで当グループでは、2015年に小規模保育園「カール大和町ナーサリー」を開園する際、数十メートルの場所に認定こども園「カール英会話ほいくえん」を併設しました。定員をそれぞれ、0歳児6名／1歳児8名／2歳児8名（または0歳児5名／1歳児8名／2歳児9名）と、0歳児6名／1歳児6名／2歳児6名／3歳児15名／4歳児15名／5歳児15名とし、小規模保育園の子どもたちがそのまま、すぐ傍の園に進級できるようになっています。
さらに、小学校以降の放課後の行き先にも対応できるよう、小規模保育園の2階に「カール児童クラブ 仙台 大和町校」も同時オープン。認定こども園の3〜5歳の子どもたちとも共同利用できるキッチンや英会話用の教室も設け、施設を有効活用しながら、子どもの体験の幅が広がるよう努めてきました。
■ 振り返り
2園を同時にグループとして開所することは、保育を行うスタッフにさまざまなメリットがあります。例えば、土曜保育です。
通常、定員19人の園だと、保育士2人すらも基準上は必要ないくらいの少人数しか子どもの登園がありません。とはいえ2人以上の配置は必須……その出勤分の休みを補うと、平日の人数が減り、保育士の負担が増します。しかし、これを2園合同に変えることで、子どもの人数に対し適切なシフトが組めるようになる。結果、日々の保育に余裕を生み出すことができています。
一方で、系列園でありつつも「異なる園」がすぐ近くに存在することは、保育への向き合い方に多様な気づきを与えてくれる機会にもなります。保育士同士、細かな進め方にズレがあったとき、その1園しか知らないと「こうでないとダメでは」という議論になりがちですが、身近に違う視点を持った保育集団があることで「違ってもいいかも」と発想を切り替えたり、より子どもにとってふさわしい関わり方を模索したりできるのを感じてきました。管理者クラスにとっては、同じ立場の相談相手が近くにできることにもなっています。
また、児童クラブも含め3施設が隣接することで、子どもが多様な人と触れ合う機会も増やせています。その1つが、当グループの特徴である「英会話」。英語をしゃべるようにすることが目的ではなく、海外出身のさまざまな方と楽しくコミュニケーションすることを狙いとし、5人の先生が毎日入れ替わりでレッスンを行っています。単独園でそれだけの先生を雇用することは容易ではありませんが、同じ先生が「午前中は小規模保育園、午後は認定こども園、夕方は児童クラブ」と順に回れる状況をつくることで実現しました。
関わる機会が増えるのは大人だけではありません。児童クラブの小学生から「あ、◯◯ちゃんの妹だ」「僕もここに通ってたんだよ」などと声をかけてもらえることも少なくなく、さらに認定こども園と一緒に行う行事の中では、同年齢・異年齢の子どもと触れ合うきっかけも生まれています。
■ 「小規模保育」としての視点
80数人の子どもたちに向けてつくる園を、あえて1つにまとめず、小規模保育の制度をうまく組み合わせ2園に分ける。これができると、自治体から入る運営費もプラスになり、経営の安定にもつながります。そして何より、子どもの安全を守りやすい点が最大のメリットといえます。
1園で保育をすると園長も主任格も1名ずつしか配置できませんが、分けることでそれぞれ2名となり、個々の家庭に目を配りやすい状況をつくれます。子どもや保護者から見れば、管理者クラスが自分に関わってくれる時間が、単純に増えることになります。
また、子どもの成長は幼少期からの積み重ねです。未満児の頃にどう過ごしていたかを知る先生が傍にいることは、3歳児以上に進級したあとも、子どもにとって大きな安心をもたらす要因になっていると考えています。
【園情報】
カール大和町ナーサリー（仙台ナーサリー株式会社）
https://www.carl.jp/faci_yamatomachi_nur.html
宮城県仙台市若林区大和町4丁目15-21
定員各19名
小規模保育事業A型・管理者設置あり