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一人ひとりの“違い”が見えてくる、子どもと大人の「感情カード」──写真で知ろう!小規模保育【園運営】

毎朝、その日の気持ちをどれか1枚選ぶ「感情カード」。子どもも大人も一人ひとり違う思いを持って生きている、ということが日々見えてくるなかで、お互いを尊重しあえる園の風土が育まれてきたように感じます。

<おうち保育園門前仲町/東京都江東区>

【園児数】9名(2歳児4名、1歳児2名、0歳児3名)
【保育者数】8名
(2024年4月時点)

■ ねらいと配慮

おうち保育園では、一人ひとりの思いが大事にされることを、日々の保育でとても重視しています。子どもたちが「これをしたい」と表してくれたことを起点に、「じゃあ今日はこういう活動にしよう」と保育を組み立ていくこともあれば、保育士が「この前こういうのを見て、みんなと一緒にやりたいと思ったんだけど、どうかな?」と提案していくことも。誰もが自分の興味や関心を掘り下げられる、互いに気持ちを伝えあえる関係性づくりを園の中でも大事にしてきました。

そのために、まずは自分の気持ちを自身で理解するツールとして導入したのが、その日の気分や感情を絵柄で選ぶ「感情カード」です。系列園の3〜5歳児クラスでやっていた取り組みを、当園では3年前から、2歳児さんを中心に取り入れることにしました。同時に保育士も、やはり系列園で活用されていた大人向けカードを毎日選ぶようにしました。
カードの種類は子どもが4、大人が20以上で、ポジティブな感情もネガティブな感情もあります。ルールはただひとつ、「何を選んでも否定しない」こと。誰が何をその日選んだか、1日いつでも見られるようにし、日々の保育の中でお互いの気持ちを想像したり、コミュニケーションのきっかけとしたりすることを狙いとしました。

■ 振り返り

「感情カード」選びは日々積み重ねていくことで、さまざまな変化を園にもたらします。

子どもたちの場合は、最初は意味がわからず選べなかったり、お友だちの選択したカードに引っ張られて、全員が同じ感情を何となく選んだり……といったことも少なくありません。それでも回数を重ねるうちに、だんだんと自分の、その日の気持ちを選べるようになっていきます。そもそも「感情には種類がある」こと自体を知るツールとしても、大きな役割を果たしているように思います。

より大きな変化が表れたのは、そうした子どもたちの姿に対する保育士のまなざしです。子どもたちが選ぶカード自体は4種類ですが、それを通して子ども一人ひとりの感情に、しっかりと目を向けられるようになったのを感じてきました。

子どもにはそれぞれの思いや気持ちがある。だから、例えば同じ活動に対しても、すごく関心を持ってのめり込む子どももいれば、興味が持てずうろうろする子どももいる。そんなふうに、ポジティブな感情もネガティブな感情もフラットに認めたうえで、一人ひとりの活動への関わりも「それもありだよね」と受け止めるようになりました。「今の時間はこれをしなきゃ……」といった頑なな思考が、だんだんと緩んできたように思います。

一方の大人向けの感情カードでは、働く職員自身に「自分の感情に向き合う時間」をもたらしてくれるようになりました。最初はポジティブなカードばかり選ぶ傾向もありましたが、1日の仕事の初めに自分と向き合う習慣がついていくと、「ぼんやりする」などの曖昧な感情や、「かなしい」などのネガティブなカードも正直に選べるように。最近ではふと気づけば誰かが新しいカードを増やしていることもあり、自身の状態を表明しながら、お互いの感情を受け入れあう風土が育ってきていると感じます。

もちろん、「こまった」「くやしい」などのカードが選ばれている場合には、園長を中心にその保育士に声をかけ、相談に乗ったりもします。感情を材料にして、チーム同士のコミュニケーションが生まれるきっかけになっているのも、このカードの良さだと捉えています。

■ 「小規模保育」としての視点

一人ひとりの感情に向き合うのは、手間も時間もかかります。

子どもがカードを選ぶ瞬間だけではなく、1日の活動を通じて何か事が起こるごとに、裏側にある感情にまで思いを馳せて関わるのは決して簡単なことではありません。だからこそ、当園のように「子ども2〜3人に保育士1人」という手厚い人員配置があり、関わる子どもたちも全体で12人と限られていることが、保育士同士が「なぜそうしたんだろう?」と対話しやすい環境をつくっていると感じます。

全体が小さな所帯の園であることは、職員同士がお互いをよく知る意味でもメリットがあります。職場での心理的安全性をどう確保するか、という点はよく議論になりますが、自らをさらけだせる環境づくりはやはり重要です。「自分と他人は違う人である」ことを前提に、異なる人間同士がチームを組んでいるのだと日々感じられること、そんなお互いを丁寧に知れるツールがあることが、より良い保育につながるのではと考えています。

【園情報】
おうち保育園門前仲町(認定NPO法人フローレンス)
https://mirai.florence.or.jp/ouchi/monzennakacho/
東京都江東区深川2-16-10 1階
定員12名
小規模保育事業A型・管理者設置あり


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