親子から保育士まで、地域の拠り所を増やす「カフェ」併設——写真で知ろう!小規模保育【園運営】
小規模保育園の隣が空いたことを機に、一時預かり事業とあわせてスタートさせた「カフェ」の運営。店舗と保育園の両方で勤務するスタッフの存在もあり、在園児家庭や地域の親子にとっても、そして他の保育士にとっても、新たな心の拠り所となりつつあります。
<ちいさなこどもえん/宮城県仙台市>
■ ねらいと配慮
当法人では、10を超える認可園や小規模保育園を運営しています。その中で、園とはまた別の場所に、在園児の親子が気軽に立ち寄って話したり、未就園のご家庭がちょっとした相談をできたりする「地域の拠点」があればと感じてきました。
そこで2022年10月、当時定員12名だった園の隣が空いたことから、ランチを食べたり、お菓子・惣菜などをテイクアウトできたりするカフェ『L'Arc』をスタート。併設する店舗のスタッフをベテランの保育士や管理栄養士が務めることで、会話の中から自然と、子育てに関する相談やアドバイスができるようにしました。
メニューについては、「子育て中にカフェでランチなんて……」と罪悪感を感じる方もいることから、日替わりランチやスコーンなどを、なるべく利用しやすい低価格に設定しています。建物としては、隣の保育園との間を扉ひとつで行き来できるようにし、さらに一時保育室との間に小窓を入れることで、レスパイト(休息)利用の保護者が子どもたちの様子を伺えるよう設計しました。
■ 振り返り
運営してまだ半年あまりですが、店舗はInstagramのフォロワーが1200人ほどになるなど、早くも「子育て世帯が集まるカフェ」として認知いただいています。他にも地域の方々が多く利用してくださり、子どもたちに話しかける姿も見られるようになりました。
カフェ利用を機に当園の存在、保育の内容を知っていただき、一時保育をご活用くださるケースも増えました。保護者にカフェで離乳食についてお話しすることもあれば、育児に追い詰められている方からの相談をいただくケースもあり、地域の拠点となることの重要性を改めて感じています。
また、日々の保育との連携も生まれており、園の季節行事でカフェを使うこともあれば、雨の日にはカフェの小上がりで、店舗スタッフを交えて絵本を読んだりすることもありました。そうした中で、在園児たちにとってもカフェは大切な「拠り所」になってきているようです。
ここには、保育士資格を持つ店舗スタッフの1人が、保育園のスタッフを兼任(開店前に早朝保育を担当)してきた影響も大きいと感じます。お散歩の帰りに立ち寄って子どもたちが他愛もない話をしていったり、園で作った制作物を帰りにわざわざ見せに行ったりする様子が、日常的に見られるようになっています。
一方で、他の保育士がカフェをリフレッシュに活用するようにもなりました。休憩時間にお菓子を買ったり、帰りにテイクアウトメニューを晩ごはんのおかずに購入したりと、園のスタッフにとっても一つの憩いの場となりつつあります。
■ 「小規模保育」としての視点
カフェと園を兼任する保育士を置いたことで、今回の取り組みはただ「隣にカフェがやってきた」という状態に止まらない、豊かな体験を園にもたらすようになりました。そこには小規模保育における、「小さいからこその良さ」も大きく関係しています。
規模が小さいと、必然的に保育士と子どもたちの距離が近くなり、一人ひとりへの目配りもしやすくなります。当園では今年から3〜5歳児も含む認定子ども園(定員33名)となりましたが、このくらいであれば、兼任するスタッフも「親子の顔がしっかりわかる」距離感で関わることができる。連続性を持って見守れる規模かなと捉えています。
そうした距離の近い、安心できる関係性の中で、いかに子どもたちに多様な経験をさせてあげられるかが今後の小規模保育園には問われるはずです。園とは別の大切な場所が横にあり、大人が「普段とは違う別の顔」を子どもに見せられることも、そのための大切な環境の一つになると感じています。