卒園後の子どもたちから、保育を見つめ直す「オープンハウス」──写真で知ろう!小規模保育【園運営】
休日に園を開放し、卒園した子どもたちが一斉に集まる「オープンハウス」。保育士が「自分たちのやってきたこと」を再確認できる貴重な場として、2018年から会を重ねてきました。園と保護者、あるいは保護者同士が交流を深める意味でも、今や欠かせない行事になっています。
<めぐみ保育園/神奈川県横浜市>
■ ねらいと配慮
集団の小ささを生かし、0〜2歳児の「一人ひとり」に丁寧に向き合いやすい小規模保育園。2015年の開園以来、その良さを日々の保育で感じていますが、一方で3歳以降の育ちとのつながりが見えづらい、という課題も抱えていました。
そこで始めたのが、秋の休日(午前)に開催する「オープンハウス」です。卒園児さんが楽しめるようなフリースペースを園の中につくることで、子どもたちの“その後”を保育士が自らの目で見られるように、そして自分たちのやっている保育の意味を振り返れるようにと考えました。
また、卒園した保護者たちが久しぶりにこの園に来て、安らげる場にすることも意識しています。保育士と、あるいは保護者同士で歓談してもらうなかで、乳幼児期のことを懐かしみながら、改めて「子育てを楽しもう」という気持ちになってもらえたら、と開催を続けてきました。
■ 振り返り
「オープンハウス」をスタートしたのは、初めて卒園児を送り出した2018年。以来、毎年拡大をしてきて、2022年は年少から小学校1年生までの4学年を対象にしました。
毎年のことですが、卒園児の元気な姿を見ると保育士はすごく励まされます。性格もそのまま、「ああ変わらないな」と思わせてくれる面もあれば、3歳を超えてできるようになったことを教えてくれ、「あの頃はこんな姿、想像もできなかったな」と感じることも。そうした触れ合いは、「私たちのやっている保育の延長線上に、この幼児期があるんだ」と忘れないための非常に重要な機会になっています。
また、当時を振り返りながら、保護者にはさまざまな感想もいただきます。多くお聞きするのは、「この園で5歳まで見てほしかった」というご意見です。それはうれしいことであると同時に、保護者はそれぞれ現在の環境で悩みを抱えていることも多く、モヤモヤを保育士に相談したり、保護者同士で「そっちはどうですか?」と共有しあったりする場となっていることも感じさせられます。
一方の子どもたちは、この園のことをはっきり覚えている子もいれば、あまり覚えてない子もいるのが実際のところです。ただ、最初は緊張している子であっても、会の間にどんどん表情がほぐれていきます。それを見ると、自分たちが大事にしてきた「一人ひとりが愛されていると感じる保育」は、どの子どもの中にもきちんと息づいているのかなと感じます。
「私を見てくれている」という実感を、もう一度卒園した子どもたちに届ける場として、今後もこの会を継続していければと思っています。
■ 「小規模保育」としての視点
何年にも渡って卒園家庭を呼び続けられるのは、やはり規模の小さい園ならではかなと実感しています。キャパシティの問題もクリアしやすいですし、保護者にも声をかけやすい。顔の見える「密な関係」を在園時から築いてきたこともあり、これまでの参加の割合はおよそ9割にも及びます。
多くの方がわざわざ都合をつけ参加くださる背景には、懐かしさを味わいたい側面に加え、やはり今の気持ちや悩みを誰かと分かち合いたい、ということもあるように感じます。
3歳児以降は配置基準も変わり、すべての子どもを細かく見ることは容易ではないかもしれません。ただそれでも、「一人ひとり」を見ることは保育の基本です。小規模保育園での実践を私たち自身が振り返ることで、「一人ひとり」に寄り添う大切さを改めて伝えられたら、と考えています。