見出し画像

惨事ストレスってなに?

一般市民である救助者=バイスタンダーが感じるストレスについて扱っている本がないかを探していて、「惨事ストレスとは何か」松井豊(河出書房新社)をみつけました。今回は同書の内容を紹介し、個人的に感じたことです。 


惨事ストレスってなに?

 惨事ストレスはCritical Incident Stressの訳で、本書の中で松井豊先生は「惨事に直面したり、目撃したりしたときやそのあとになって起こる、外傷性ストレス反応」と定義されています(対象者が限定されていない)。
 しかし、一般的には消防職員や自衛隊など職業的に災害に活動する人たち(職業的災害救援者とも呼ばれる)が被るストレスと理解されているようです。

「惨事ストレスとは何かーー救援者の心を守るために」松井豊(河出書房新社)

一般市民バイスタンダーが感じるストレスとは

 日常生活の中で交通事故や心臓発作、脳卒中などの現場に偶然遭遇し、その現場で救命措置などを行った一般市民をバイスタンダーと定義すると、必ずしも流血の悲惨な現場や生死の境にいる方に遭遇することだけではないです。
 社会全体としてみれば、日常生活の中でたびたび起こる事故や事件ですが、遭遇した一人一人の一般市民にとっては「大きな災害」となりえます。特に、対象者が家族や友人、同僚であった場合にはなおさらです。
 プロフェッショナルではない一般市民が、日常生活で突然の緊急事態に遭遇する際に受けるストレスがバイスタンダーの感じるストレスです。

一般市民のバイスタンダーのストレスと惨事ストレスの違い

「惨事ストレスとは何か」を参考に筆者作成

(上記の表と、以下は私の感想です)
 簡単に表にまとめると、上記の表になります。一般市民バイスタンダーのストレスと惨事ストレスの違いを考える最初のポイントとしては、惨事ストレスの対象者に「職務として」というのを含む点が挙げられます。事前に分かっている(だからストレスが少ないという意味ではなく)現場に職務として赴くプロフェッショナルの人と、突然日常生活の中で巻き込まれる一般市民を同列または同じカテゴリーとして扱うことができるのか、という点は疑問に感じました。
 また、「惨事」Critical Incidentという名称が、大規模災害をイメージしやすいため、バイスタンダーの市民が日常生活の中で起こりうる事象と惨事ストレスのケースを離れたものとして扱ってしまっているようにも感じました。
 もちろん、本書で扱っている内容が悪いわけではありませんし、個人でできるストレス対策方法など非常に参考になりました。

 最後に、挙げる違いはチーム性の有無です。大規模災害などではチームとして現場に赴くことが多いので、組織的に事後のミーティングを持つことが惨事ストレス緩和につながるとこの本の中でも指摘されています。一方、一般市民が遭遇する交通事故などの突発的な場合では、現場にいる見知らぬ人たちと協力することがあっても、その後連絡を取り合うことは非常に難しいです。仮に、消防に問い合わせても個人情報の保護の観点から開示してもらえません。同じバイスタンダー体験、似たような体験をした人と話すことがストレス緩和につながることは分かっているものの、その機会が与えられないというのが課題だと思います。
 
今日はここまで。ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?