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消防が配る感謝カード(バイスタンダーカード)の類型とその改善に期待

 以前に救命現場で消防が配っている感謝カード(バイスタンダーカードとも呼ばれている)の課題と期待することについて書きました。

  今回は全国の消防(その一部)で配っている感謝カードの類型とその改善に期待することです。


ネットで検索した感謝カードは全部で82枚(種類)

 まず初めに、消防が配布している感謝カードをネット検索して、その類型を調べてみました。「消防 感謝カード」、「消防 バイスタンダーカード」などと検索して、全国で82枚(種類)の感謝カード(バイスタンダーカード)を見つけました。(ウェブ上に掲載していないものもあるでしょうから、実態はもっと多い気がします)
 今回は、感謝カードの記載内容の中で「連絡手段」、「受付可能時間」、「心的ストレスについての記載」を取り上げます。

感謝カードの連絡先への手段

 感謝カードに書かれている連絡先は最寄りの消防署(消防本部)になっており、電話番号が記載されていて、その番号に電話するようにとなっているものが大半です。以前にも書いたのですが、心的ストレスを抱えたうえで消防署に電話するって、結構ハードルが高いなと個人的に思います。「わざわざこんなことで電話してよいのかな」「消防署の方も忙しいだろうしな」と、躊躇してしまうと思います(少なくとも私はそうでした)。
 電話以外にメールでも連絡できるようにメールアドレスが書いてある感謝カードは6件(調べた82枚のうち7%)、電話と併用してFAXも受け付けているのが3件(調べた82枚のうち4%)でした。
 バイスタンダーの人が当該消防に電話をして、直ぐに担当者と話せればよいのでしょうが、担当者が忙しいとかつかまらないなどもあると思うので、最初の連絡としてメールでの問い合わせができる取り組みは良いなと思います。
 
 メールアドレスの記載があったのは山形県山形市、千葉県船橋市、千葉県八千代市、愛知県名古屋市、大分県大分市、沖縄県沖縄市で、FAX番号の記載があったのは埼玉県さいたま市、山梨県大月市、三重県名張市です。

山形市消防本部の感謝カード:同市ホームページから転載
大月市消防本部の感謝カード:同市ホームページから転載

感謝カード記載の連絡先の受付時間

 次にいざ消防に電話して問い合わせ・相談をしようと思った際に、ハードルになるのが受付時間です。「平日の日中のみ」というのが大半です。「24時間受け付け」となっているのは3件(調べた82枚のうち4%)のみです。3件は、秋田県横手市、愛知県尾張旭市、三重県名張市です。
 一般市民としたら、平日の日中は仕事をしているので、いろいろと落ち着いて休日になったら連絡してみたいという人が多いでしょう。この点も改善してもらいたいです。そうはいっても、24時間対応は難しいというのも分かります。上記記載のメールでの対応を受け付け可能にして実際の電話連絡を日中にするなどの配慮があると良いなと思います。

名張市消防本部の感謝カード:同市ホームページから転載

感謝カードの心的ストレスの記載

 感謝カードについて、その多くは「何か不安があれば」連絡してくださいと記載があります。「何か不安」って、それは不安でしょ!と思います。具体的に、どういう不安を感じたら、どういう症状が出たらという点が明確にされずに、「心配事があれば」って言われても困りますよね(「何かあったら、言ってくれよ」という上司と同じ?!)。「こんなことで相談してよいんだろうか」と思ってしまう人は多いはずです。
 具体的に、「夜眠れなくなった」「救命の現場を思い出してしまう」などの例が挙げられていると、そういう事で相談してよいんだなとか、ちょっと話を聞いてほしいということにつながる気がしています。
 
 感謝カードに具体的な例が書かれていたのは、6件(調べた82枚のうち7%)でした。具体的とは、福島県いわき市消防本部では「(例えば)夜、眠れなくなった 救急現場の夢を繰り返し見る 感染したかもしれない など」、福島県郡山地方広域消防組合では「思い出して眠れない時や感染症等が心配な時」、栃木県小山市消防本部では「負傷者の事が頭から離れない。夢に出てくる 応急手当実施の際、血液等に触れたため感染の不安がある。」、埼玉県埼玉西部消防では「応急手当を行った際に怪我をしてしまった場合、血液等を直接触ってしまった場合、思い出すと眠れないなどの不安が」、埼玉県さいたま市消防では「事故現場を思い出して眠れないなど・・」、愛知県尾張旭市消防では「今回、あなたが体験したことが原因で眠れなくなったり、突然思い出されるなど心理的な不安が生じたときは」です。

いわき市消防本部の感謝カード:同市ホームページから転載
郡山広域消防組合の感謝カード:同ホームページから転載
小山市消防本部の感謝カード:同ホームページから転載
埼玉西部消防の感謝カード:同ホームページから転載
さいたま市消防の感謝カード:同ホームページから転載
尾張旭市消防の感謝カード:同ホームページから転載

チェックリストや追加の有益情報

 今回ネット検索で調べている中で有益な情報を2つ見つけたので、ご紹介します。一つ目の八戸地域広域市町村圏事務組合消防本部では、以下のようなチェックリストがホームページに掲載されています(リンク先も以下)。上記で指摘した「不安なこと」の具体的な症例が挙げられているので、とても良いと思います。敢えてリクエストするなら、感謝カードに当該ホームページへのリンクがあると良いなと思います。 

バイスタンダーのチェックリスト:同市ホームページから転載

  二つ目は、相模原市です。「応急手当を実施していただいた皆様へ」というページができており(以下のリンク先)、「知っておいてほしい!5つのこと」が挙げられています。「(1)どうしても救命できない場合もあります」「(2)ひとりで頑張りすぎないでください」「(3)119番通報と同時に、バイスタンダーにアドバイスをします」「(4)誰でもストレスは感じます。心配なことがあったら、早めにご連絡ください」「(5)応急手当を実施したことで、責任を問われることはありません」

 救命措置をしても助からない場合があることが明記されている点は珍しいですね。また、誰しもがストレスを感じることや、「ひとりで頑張りすぎない」というのも現場でもそうですし、事後にストレスを感じた場合にも一人で抱え込み過ぎないことが大事だなと思います。
 講習では一人で完璧にAEDも、119番の指示も、心肺蘇生もできるようになるのを目標にしています。しかし、実際の現場ではパニックになるのは当然なので、そういった行動のどれか一つでもできれば素晴らしいですし、またそう行動している人(バイスタンダー)を支えてあげることも大事だと思います。 
 また、同相模原市のサイトでは「災害によるストレスと心のケア」というページにもリンクが飛べるようになっており、災害時を含む事件後のストレスと心のケアについての理解が深められるような情報も載っています。これまた非常に有益だと思います。

 今日はここまで。ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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