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院外心停止の現場に居合わせた3人に1人が病的な心理処理の兆候を示す論文の紹介

 病院外での心停止の現場に居合わせた3人に1人が、事件から数週間後に病的な心理的処理の兆候を示すという論文(One out of three bystanders of out‑of‑hospital cardiac arrests shows signs of pathological psychological processing weeks after the incident ‑ results from structured telephone interviews)2021年9月8日発表を見つけました。今回は、翻訳ソフトを使って同論文内容の一部を抜粋して日本語訳を載せます。
原文はこちら↓

背景
 病院外での心停止 (OHCA) を目撃することは、トラウマとなる経験です。この研究では、病院外での心停止 (OHCA) に対するバイスタンダーの心理的処理を分析します。バイスタンダーが蘇生を行うことの潜在的な影響と、バイスタンダーと患者 (見知らぬ人 vs. 患者の家族/友人) の関係が心理的処理に与える影響を調査しました。
 
方法
 成人患者の病院外での心停止 (OHCA)を目撃したバイスタンダーへの電話インタビュー調査は、事件から数週間後の2014年12月から2016年4月にかけて実施されました。標準化された質問票には、インタビュー時の最も強い感情に関する質問が含まれていました。事後分析では、回答の発言が、研究者によって「病的な心理的処理の兆候」、「生理的な心理的処理」、「OHCAによる心理的苦痛の兆候なし」のカテゴリーに分類されました。
 
結果
 この分析には 89 件の電話インタビューが含まれました。27 件 (30.3%) で「病的な心理的処理の兆候」が検出されました。蘇生を行ったバイスタンダーは、蘇生を行わなかったバイスタンダーと比較して、「病院外での心停止 (OHCA) を目撃した後で、心理的苦痛の兆候がない」の割合が高かった (54.7% 対 26.7%、p < 0.05、相対リスク 2.01、95%CI 1.08、3.89)。性別、年齢、患者との関係、医療分野での現在の雇用、心停止の場所、または追加の傍観者の数による心理的処理の統計的有意差は示されませんでした。
 
結論
 病院外での心停止 (OHCA) を目撃した人の 3 人に 1 人が、病的な心理的処理の兆候を経験します。これは、目撃者の年齢、性別、患者との関係とは無関係です。蘇生を行うことは、病院外での心停止 (OHCA) を目撃したことへの対処に役立つようです。

同論文をDeepLを用いて訳
同論文の図2

 病院外での心停止(OHCA)を目撃してから数週間後のバイスタンダーの主な考えと主要な感情は、以下の4つのカテゴリーに分類されました。一つ目は①「病的な心理的処理の兆候」(「フラッシュバック」、「神経質」、「神経質」、「罪悪感」などの回答)、二つ目は②「生理的な心理的処理」(「影響を受けた」、「非常に悲しいが、父親は重病だった」などの回答)、三つ目は③「病院外での心停止による心理的苦痛の兆候なし」(「満足している」、「うまくやっている」などの回答)、最後の四つ目は④「明確に評価できない」(曖昧な表現、前述のグループに回答を割り当てることができなかった)です。
 
 89 件中 27 件で、①「病的な心理的処理の兆候」が検出されました。89 件中 19 件では、②「生理的な心理的処理」とみなすことができ、37件は③「心理的苦痛の兆候を示さなかった」。6 件は、回答を前述のグループに割り当てることができなかったため、④「明確に評価できなかった」。

同論文をDeepLを用いて訳
同論文の図3

 心肺蘇生を行ったバイスタンダーは、心肺蘇生を行わなかったバイスタンダーと比較して、病院外での心停止(OHCA)を目撃した後で、③「精神的苦痛の兆候がない」割合が有意に高かった(54.7% vs. 26.7%、上記図を参照)

同論文をDeepLを用いて訳
同論文の図4

 指令員が心肺蘇生を説明し指示したケースでは、電話ごしで心肺蘇生を行わなかった場合と比較して、①「病的な心理的処理の兆候」が有意に少なかった (20% 対 40.4%、p < 0.05)。しかし、電話によるCPRの実施の有無にかかわらず、③「心理的苦痛の兆候がない」相対リスクは有意に差がなかった

同論文をDeepLを用いて訳

感想:

以下は私の感想です。
 日本では、バイスタンダーの心的ストレスについて理解が進んでいないためなのか、「バイスタンダーの心的ストレスを話すことは救命普及活動の妨げになる」と言われることがあります。しかし、本研究を見ると、バイスタンダーが心肺蘇生を行わないよりも行った方が事後の心的ストレスが少ないこと、また電話による口頭指導を受けて心肺蘇生を行った方が「病的なストレス」(強いストレス)を感じることが少なくなることが示されており、むしろ心肺蘇生に関わる方が事後の心的ストレスの減少に貢献していることが分かります。
 救命の現場における一般市民救助者バイスタンダーの感情的な部分は研究が進んでいない&認知がされていない分野ですが、日常生活の中で突然に予期せずに緊急事態に直面する一般市民の行動に関して感情面からの研究が進むことを祈ります。
 
今日はここまで。ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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