ストリート感のあるお布施
こんなこともある。
この2日ほど栃木県の足利市に滞在していた。ご縁のきっかけをくれたのは、現地在住の浅野さんという友達だ。その友達が現地のビジネスホテルに泊まるご縁をお布施してくれて、2泊ほど滞在していた。
その場所を出発する時、杖をついたおばあちゃんと一緒にエレベーターを待っていた。ずいぶんとエレベーターがくるのに時間がかかるので、私は階段を使って、2階から歩いて1階のフロントに向かった。その時に、おばあちゃんから「あらぁ、ごめんねぇ」と声をかけられる。特に謝られる内容でもないので、ニッコリと笑顔を向けて会釈してからその場を去った。
チェックアウトを済ませ、ビジネスホテルの外に出る。そこで「どっち方面にいこうか?」と軽く考えていた。すると、おばあちゃんもチェックアウトを済ませたようで、外に出てきた。なんとなしに話が始まり、おばあちゃんは栃木県にお坊さんたちの踊り念仏を見に行くのだと話した。
雑談を続けているうちに、お寺の話や御朱印の話、食べ物をいただくことについておばあちゃんが明治時代の方々から学んだことの話など、さまざまなトピックが咲いては散っていく。
おばあちゃんが80年もの間生きてきて、素朴に感じてきたことを聞くのは面白かった。おばあちゃんの見てきた文化は80年の歳月を超えて、変わり続けてきた。今の若い人たちを見て、おばあちゃんは「これでいいのよ」と思うところもあるし、「これでいいのかしら?」と思うところもあるようだ。
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ひとしきり話して、お別れの時がやってきた。
「素敵な日々をお送りください」と声をかけ、おばあちゃんも「お元気で」と返答した。
去ろうとした時に、おばあちゃんがバッグを開いて、何か探し始めた。財布をおもむろに取り出すと、そこから「少ないですが」と言って2000円を下さった。
特に決まりのないストリートでのお布施の出来事は、私の心を温かくしてくれた。形骸化していく文化もあれば、いまなお息づいている文化もある。少し年上のおばあちゃんの流れを受け取り、足利の町を後にした。