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荒野にそびえる壁を越えて、泉を探す

長い長いリフレクションをしていましたが、いよいよ「壁だらけの荒野」へ旅立ちです。

そそり立つ「デフォルトの壁」

これから引用するのは、以前「苦いパウダー」の部分を紹介した、幻のWSD「欠席補講課題」レポートの、別の部分です。

私が本レポートで取り扱う書籍は、プロダクトデザイナー根津孝太氏の著書「アイデアは敵の中にある―「結果」を出す人は、どんなコミュニケーションを心がけているのか―」(中央公論新社/2016)である。根津氏が本書で訴えるクリエイティブ・コミュニケーションとは何なのかを整理し、そこで得た気づきを今後の活動につなげたい。

根津孝太さんは本書の中で、「プロダクトデザインは「芸術の世界」ではなく「産業の現場」である」と定義しています。それは、多くの人が関わって、モノを作り上げる場であることを意味します。

そのような場であるからこそ、よりよい製品をつくるには、コミュニケーションのあり方が重要となってくる。そこで気づくべきものが、以前紹介した「苦いパウダー」と対をなす、もう一つのキーワード「デフォルトの壁」なのですね。

 「デフォルトの壁」とは何か。デフォルトはもともと「不履行」や「何もしていない段階のシステムの初期値」を意味する言葉で、転じて「自分の中で当たり前になっている行動」を指して使われる。デフォルトは一人一人違う。もしも、あるコミュニケーションの場が、特定の初期値でしか話を受け付けないとどうなるか? 該当しない人は弾き出されてしまう。根津氏は、この分断と閉塞を招くものこそ、そそり立つ「デフォルトの壁」であると述べる。

WSDでは「自明性を知る」という言葉で表現されることが多いでしょうか。

壁の向こうへ、そのための「変化への第一歩」

その「デフォルトの壁」の乗り越え方とは…。

 素直になることが「デフォルトの壁」を乗り越える助けになるという。ここでの素直とは、自分自身の考えの変化を恐れないアクティブな柔軟性である。相手のことを知りたいと思い、そのためなら自分自身が変わることをいとわない姿だ。

自分のレポートをあらためて読み返して、ふと思い出したのは、WSDの受講期間中に私が持っていた『3つのキーワード』です。

基礎理論の中で実施したワークに、受講生同士のギフトワードの中から「この3か月の間、大事にしたい『3つのキーワード』を決める」ステップがありました。そこで私が選んだのは、以下の3つでした。

「気持ちのバリアはがし」「価値観の摩擦」「変化への第一歩」

素直さが「デフォルトの壁」を乗り越えるための、変化を恐れないアクティブな柔軟性を与えてくれるものだとしたら、随分ドンピシャに共鳴する言葉ばかりを選んでいたものです。

キーワード決めの際に、この本の内容は全く意識していなかったはずです。アンテナが立っていた、ということなのかもしれません。

たどり着きたい創造性の泉

私は幻のレポートをこう締めくくっていました。

「苦いパウダー」を噛み締めて「デフォルトの壁」を乗り越える。そこには創造性の源泉がある。たどり着くには、コミュニケーションをあきらめないことだ。

ううむ。今読み返すと、「まとめるためにまとめた」ような最後の一文に違和感。たしかに、根津孝太さんは本書の中で「あきらめないこと」を伝えています。それは、ご本人が実践の中で得た答えだからこそ、説得力があるのです。

私の言葉として捉えなおすと、これでは弱い。というよりも、嘘がある。今思えば、この最後の一文は「借り物」だったのでしょうね。では、私だったら壁をどうやったら乗り越えられそうか? もうちょっと自分の言葉で考え直してみたいと思います。

私は壁を「壊す」人だった?

小学生の頃にクラスで流行っていた「なんちゃって心理テスト」で…。

目の前に高い壁があります、どうしますか?

に対し、当時の私は即答で「壊す!」でした(次点で「地下を掘る」)。
脳裏に浮かんだビジュアルは、普通にグーパンチでどっかん! ドリルとか重機ですらないという暴れ者ぶり。

答え合わせをしてみると、こんなメッセージがあったと記憶しています。

それは、あなたが問題にぶつかった時に、その問題に対してとる行動です。

ちなみに、友人たちの多数派回答は、「登って」「越える」(=乗り越える)、でした。「壊す」と答えたのは私だけ。「あきらめる」「引き返す」も数名いたかもしれません。

今の私なら、壁を「楽しむ」

今だったら、最初は「観察する」だろうな。そして、壊すのがいいのか、地下を掘るのか、ドローンを飛ばすか、レーダーで分析するか、隠し扉を探すとか、魔法で空を飛ぶとか、仲間を集めるとか、壁の向こうと交信するとか、もう色々なことを考えます。

まじょ

「壁に絵を描く」かもしれないな! 「壁の絵を描く」のも悪くない。
壊すことで、欠片でアートするのもよいですね!
私にはその引き出しが無いですが、壁の反響を利用して、音楽を奏でる人もいるのかもしれませんね。

「壁がそこにあることを楽しめるようになる」ことが、本当に壁を乗り越えるということなのかもしれません。アプローチは千差万別でよいから。
そうなれたら、その先の泉にも、きっとたどり着ける。

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