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魔法が使えなくても、救えるものを救える人になりたい
今年もやってきました。青学WSD34期 Advent Calendar 2021の15日目です!
昨年と同じ日付を確保している方もチラホラ。中には「お誕生日だからこの日」という方もいらした記憶かありますねぇ!
いっそ先回りして言ってしまえ! 生まれた日も生まれない日も、おめでとうございます! 私たち!
というか、本日こそ修了記念日です。いわば34期全員が一歳の誕生日です!
こんな困難な一年を経て、ただ再会できることだって、一人ひとりに起きている全てのことが、もう殆ど奇跡ですね!
現在進行系過ぎて、まとめるのが「今じゃない」学びの中
今年は…そうですね。私なりに自分のフィールドで取り組んだ場づくりもありましたし。奇しくも、私の意思とはまた別次元というか、別の力学で起こったチームビルディング活動にも「巻き込まれ」て、そこで起きた出来事を観察する中で得た学びもあったりで。
「おお、だったら書くこと豊作だよねぇ〜」となりそうですが、ううむ、一概にそうでもないところもあります。ちょっと現在進行系過ぎて、変に現時点のとらえ方を固定化してしまうことが、怖いというか「今じゃない」みたいなものも混ざっていまして。何とも難しい。
この一年のふりかえりはそれでも絶賛実施中であるのですが、ここで具体的にエピソードを絡めて語るには、ためらいがまだあります。
では、今日はこの場で何を語ろうか…?
個人的に場づくりの取り組みの中で改めて感じていた葛藤のことをふりかえります。
具体的な出来事には触れず、どうしても抽象的な話にとどまるかたちで恐縮ですが、代わりに…というのもちょっとおかしいのですが、今回は個人的に共鳴する漫画の台詞を引用しながら綴ります。
救えるものは救える、救えないものは救えない
どんなにすごい魔法が使えても使えなくても
救えるものは救えるけど
救えないものは救えないんだって
那州雪絵「月光」
対話とか、ワークショップとか、ファシリテーションとか、WSDの学びのすべてが大切だけど。それでも、届くもの、届かないものがありました。
あるいは、届く、届かないという言葉で簡単に括れないけど、少なくとも受け止めてもらえる時ではない、と感じることも。あらゆることに、一人ひとりの持つ「時」というものがありました。
そこを常に戒めて、冷静に観察し続けなくてはいけない。学びをいたずらに振りかざしてもいけない。そんなことを考え続けた一年でした。
引用している台詞の収録巻はこちら。この作品は、文庫版だと全2巻てす。
私は、この台詞の分かりやすい一軸としての、
「すごい魔法が使えても、救えないものは救えない」
という部分より、対となるもう一軸、
「すごい魔法が使えなくても、救えるものは救える」
にこそ、本当の厳しさがこめられてるなぁ……と、読んだ当時感じていました。今改めて読み返すと、また染みます。この台詞のあらゆる意味を痛感する場面の多い一年でした。
私がこのお話で一番好きなのは、ロリスという人物です。この人は「理の力」と呼ばれるいわゆる「すごい魔法」が与えられている世界の中で、ほぼ唯一(厳密には違うけど)、その「魔法」を全く持たない立ち位置の主要人物です。
だから、ロリスさんは登場時点から、他の人とは違う視点で世界を眺めています。自身の孤独、孤高であることを静かに受け入れ、親しい友人とも良い意味で距離を取りながら、淡々と世界を観察してきた。そのことが、異世界からの来訪者である主人公(の一人)藤美の理解者になることに繋がります。
そうか、私はすごい魔法を使えるようになりたくてWSDを受講したんじゃないんですね。すごい魔法が使えなくても、救えるものを救える人になりたいからWSDを受講したのかもしれない。それこそ、ロリスさんみたいな、対話で道を探れる人であるために。
それでも、あせらず、気負わず、ゆっくりと
世の中は広いな
いろんな人が様々な思いを抱いて生きている
わたしの知らないところで
そしてわたしもその一部なのだ
ひかわきょうこ「彼方から」
このままだと、葛藤のみに触れて終わってしまいますので、もう一つご紹介を。WSD受講していた頃から、よく脳内でリフレインしていて、挫けそうな勇気を奮い立たせる言葉です。
こちらは、ジェイダという登場人物の台詞。この人は元々ある国の指導者的な立場にある方で、穏健で人々からも慕われていた人格者でしたが、クーデターに巻き込まれ、逃走のさなかに主人公たちに救われます。
引用した台詞から始まるジェイダさんの言葉は、おそらく作品の根幹のテーマを言い表している最重要な投げかけであり、実際にはもう少し長く続きます。ワークショップデザイナーにも大切な言葉になっているなぁ、と読み返しては思ったものです。
引用している台詞の収録巻はこちら。この作品は、文庫版だと全7巻てす。
一連の言葉を聞いたジェイダさんの息子たちは、てっきり父親が落ち込んでいるのだと思い、励まそうとします。しかし、それを否定し、最後にジェイダさんはこう告げるのでした。
わたしはわたしの役目を捜していこう
あせらず 気負わず ゆっくりと
ひかわきょうこ「彼方から」
葛藤にうっかり押しつぶされそうになったときは、この言葉を思い出してゆきたいものです!
最後に
奇しくも今回挙げた作品は、どちらもいわゆる異世界もの(今みたいにメタ異世界転生的な作品が飽和ブームになる前の、もう少しトラディショナルな…?)てすが、そういう括りで選んだわけではなく偶然です。
ただ、この2つの世界で藤美や典子が放り出された状況、つまり根本的に周囲と異質であることが、作品の中にワークショップデザイナーもハッとするセリフが多いことに繋がっているのかもしれませんね。
ロリスさん、ジェイダさんは「向こうの世界」の人間でありながら、周りと少し違う視点と柔軟性を最初から持っていて、主人公たちの最大の理解者になる人物……というところも、共通項。だからこそ、大事な台詞そのものを任されたり、その台詞が示唆する本質の体現者になったりする。
この両作品で最後に主人公たちが決断する道は、それぞれ違うのですが、それでも何だが、根幹には重なるものもあるよな、とか思ったり。自分がどこで何をすべきかを内省して、見出して、まっすぐ進んでゆく。それが選ばなかった何かとは一時、決別する道だとしても。
さて。そんな私は、現在進行系でこちらの作品に注目しております! 3巻まで出ていて続刊中!
そして、そもそも青学WSDとは……。
どんな困難な対話も面白がるワクワクの学び舎!