コインランドリーの恋【5分で読める短編小説(ショートショート)】
一週間分の洗濯物を抱えてコインランドリーに行くと、平日の深夜だというのに人がいた。
洗濯機を回している時間、『家に帰る派』と『ランドリー内で自由時間を楽しむ派』に分かれる。
僕はいつもなら徒歩1分のアパートに帰り、洗濯が終わった頃にランドリーへ戻る。しかし、今日はここで待とうと決めた。
理由は単純、そこに『夢で逢えたら』と思うほど超タイプの女の子がいたからだ。
空いている洗濯機の蓋を開けると、誰かが取り忘れたTシャツが残っていた。
ランドリー内にある忘れ物置き場に入れようと思いTシャツを手に取る。
「あ、すいません。それ私のです」
「あ、なんかこちらこそすいません」
ぎこちなくTシャツを渡した。
洗濯機に服を入れ、休憩用の椅子に腰を掛けると、女の子と目が合った。
「あの~、銀杏BOYZ好きなんですか?」
「え?あ、はい!大好きです!」
彼女は僕が着ている『銀杏BOYZ』のバンドTを見て言うと、先ほどのTシャツを広げた。
「私もメッチャ好きなんです!」
「うわぁ!ゴイステ!めっちゃレアなTシャツ持ってますね」
まさか、峯田和伸信者とこんな場所で会えるなんて!
毎晩、運命の人に出会えますようにと『星に願いを』込めて眠りについているけれど、まさかコインランドリーで出会えるなんて!
すると店内のBGMから偶然にもゴイステの『駆け抜けて性春』が流れてきた。
二人とも驚き、僕は運命を感じた。
その後、興奮して何を話したかはよく覚えていないが、バンドの話で盛り上がり、無意識のうちに『付き合ってください!』と口にしていた。
告白した後、我に返り焦った。ヤバいどうしよう・・・。
「えっ・・・」
彼女が次の言葉を探している時、乾燥機から終了した合図のメロディーが流れてきた。
彼女は無言で立ち上がり、乾燥機から服を取り出すと乱雑にランドリーバスケットへ服を入れる。
一枚一枚畳まないところもロックな感じがしていい!
全て入れ終わると私の目を見て「いいよ」と言った。
「えっ・・・」
今度は僕が次の言葉を探していると・・・
「だって、こんな運命的なことある?銀杏のTシャツ着てる人にゴイステのTシャツを拾われて、峯田話で盛り上がってる時に『駆け抜けて性春』が流れてきたんだよ。これ運命じゃなかったら私、神様にキレるよ」
こうして峯田さんのお陰で名前も知らない恋が始まった!
『ワケねーだろ!!』
自分で自分にツッコミを入れた。
そんな風にボーッと妄想にふけっていたら、僕の洗濯機と彼女の乾燥機がほぼ同時に終了した。
洗濯物を取り出すと、見覚えのないパンツが紛れていた。
「あ、すいません。それカレシのパンツです」
「あ、なんかこちらこそすいません」
ぎこちなくパンツを渡し、『ですよね~』と心の中で呟く。
その時、店内のBGMでは銀杏BOYZの『なんとなく僕たちは大人になるんだ』が流れていた。
そう・・・僕らはこうしてなんとなく、そして少しずつ大人になっていくんだ。
もう29だけど・・・
ちなみに彼女が手にしているスマホから漏れ聞こえてきたのは・・・
King Gnuの『白日』。
『おっしゃれ~』心の中で毒づいた!
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最後まで読んでくれた方、貴重なお時間を割いて申し訳ございませんでした!
これを書いて分かったこと、やっぱり恋愛小説が苦手・・・
恋愛小説難しい!
けど、書きたい!
ありがとうございました。
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