大学入試現代文の勉強法
「やり方を知ればパッとできるようになる」ようなものに、大したものはありません。
もし日本の大学入試がそのレベルで闘われるものだとしたら、この国の将来は真っ暗でしょう。
さすがに、上位大学はそんなにレベルの低いものではありません。
勉強も、楽器の上達とそれほど変わりません。基本にあるのは練習です。
落合博満さんは三冠王を3回も取った人ですが、練習をしない選手というイメージが出回っていました。
しかし、あるインタビューで、落合さん自身は、自分ほどバットを振ったやつは他にいないって自負があると言っていました。
一流は「誰にでもできること」を「誰よりも深くやる」だけなわけです。
そのようなわけで、現代文の解法はお伝えできるのですが、それを自分なりに何度も繰り返して自家薬籠中のものとしなければ意味がないことは言うまでもありません。
このことはよく知っておいてください。
結局、一流とは、愚直に続けられる人のことなわけです。
以下は、以前私の塾で生徒に出したレポート課題のための例です。
センター試験現代文の解法(というか訓練法)を伝えてあります。
題材は平成29年度センター試験問題です。
https://www.dnc.ac.jp/center/kako_shiken_jouhou/h29/jisshikekka/index.html
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センター試験2017年度 評論
【問1】(学習では、必ずすべての漢字を書く!)
倍増 … 培養 媒体 陪審 賠償 倍した
要因 … 動員 強引 婚姻 陰謀 起因
厄介 … 利益 通訳 厄年 躍起 薬効
宣告 … 上告 克明 黒白 穀倉 酷似
癒し … 空輸 比喩 愉悦 癒着 教諭
【問2】(絶対に選択肢を先に見てはいけない。答えを用意して合致するものを探す!)
傍線部が含まれる一文をしっかり読む。(主語を確認する。)
「現代の科学技術は、……先進国の社会体制を維持する重要な装置となってきている。」
前後を眺めたときに、「現代の科学技術」について書かれているのは、以下。
「さらに二十世紀になり、国民国家の競争の時代になると、科学は技術的な威力と結びつくことによって、この競争の重要な戦力としての力を発揮しはじめる」(第一段落4行目)
「二十世紀後半の科学技術の存在はGNPの二パーセント強の投資を要求するまでになってきているのである」(第二段落2行目)
「現代の科学-技術では、自然の仕組みを解明し、宇宙を説明するという営みの比重が下がり、実験室の中に天然では生じない条件を作り出し、そのもとでさまざまな人工物を作り出すなど、自然に介入し、操作する能力の開発に重点が移動している」(第三段落3行目)
当然のことだが、同じ人物(筆者)が「現代の科学技術」について語っているのだから、すべては同じ意味内容を述べようとしている。それらを要約しなさい、というのが、現代文で問われていることなのである。
要約
「現代の科学技術は、自然を解明し説明することよりも、自然を操作する能力の開発に重点が移っており、国民国家の競争力として、多大な投資を要求するまでになっている。」
これと合致する選択肢を選べばいい。
間違えても、この段階を飛ばして、「選択肢の検討」などという愚策を絶対に採ってはいけない。
【問3】(絶対に選択肢を先に見てはいけない。答えを用意して合致するものを探す!)
傍線部をしっかり読む。
「こうして『もっと科学を』というスローガンの説得力は低下し始め、『科学が問題ではないか』という新たな意識が社会に生まれ始めているのである。」
まずは指示語である。
「こうして」と書かれているので、この一文は、この一文より前に出てきた部分の要約だとわかる。後ろを読む必要はない。(次の段落が「しかし」から始まることも、その判断材料になる。)
「もっと科学を」⇒「科学が問題ではないか」
という変遷を要約する問題である。
「社会の諸問題を解決する能力を持っていた」(2行目)
「しかし二十世紀後半の科学-技術は両面価値的存在になり始める」(2行目)
(「しかし」の後に主張あり。)
「両面価値的存在」
「永らく人類を脅かし苦しめてきた病や災害といった自然の脅威を制御できるようになってきた」(良い価値)
「が、同時に、科学-技術の作り出した人工物が人類にさまざまな災いをもたらし始めてもいるのである」(悪い価値)
要約
「かつて社会の諸問題を解決する能力を持っていた科学は、二十世紀後半に入り、その能力がさらに発展した良い面だけでなく、それが作り出した人工物が人類にさまざまな災いをもたらし始めるという悪い面を持つようになってきている。」
傍線部の
「もっと科学を」⇒「科学が問題ではないか」には、信頼感から不信感への移行があることも読み取る。
【問4】(絶対に選択肢を先に見てはいけない。答えを用意して合致するものを探す!)
傍線部が含まれる一文をしっかり読む。(主語を確認する。)
「コリンズとピンチの処方箋は、科学者が振りまいた当初の『実在と直結した無謬の知識という神のイメージ』を科学の実態に即した『不確実で失敗しがちな向こう見ずでへまをする巨人のイメージ』、つまりゴレムのイメージに取りかえることを主張したのである。」
主語が重要である。
「コリンズとピンチの処方箋は」とある。「処方箋」とは、問題に対する解決策の意味である。
では、その問題は何か?
これを明確に捉えていなければ読み間違う。
その問題とは、
「現代では、科学が、全面的に善なる存在か全面的に悪なる存在かのどちらかのイメージに引き裂かれている」(第五段落4行目)ことである。
つまり、この問題を解決するために、
「科学者が振りまいた当初の『実在と直結した無謬の知識という神のイメージ』」から、
「科学の実態に即した『不確実で失敗しがちな向こう見ずでへまをする巨人のイメージ』」に、変えろということである。
この「科学の実態に即した」というところをしっかりと読めているだろうか。
要約
「科学者が科学は万能であるという誤ったイメージを振りまいたために、科学のイメージは全面的に善であるか全面的に悪であるかのどちらかのイメージに引き裂かれてしまった。この問題を解決するには、『役にも立つが失敗もしがちである』という科学の実態に即したイメージで科学を捉え直す必要がある」
【問5】(絶対に選択肢を先に見てはいけない。答えを用意して合致するものを探す!)
傍線部をしっかり読む。
「にもかかわらず、この議論の仕方には問題がある」
「問題」が、この後に書かれていることは明白だろう。
これは第十二・十三段落を要約する問題である。
「しかし、『ゴレム』という科学イメージはなにも科学社会学者が初めて発見したものではない」(第十二段落3行目)
「結局のところ、コリンズとピンチは科学者の一枚岩という『神話』を掘り崩すのに成功はしたが、その作業のために、『一枚岩の』一般市民という描像を前提にしてしまっている」(第十三段落1行目)
「言い換えれば、科学者はもちろんのこと、一般市民も科学の『ほんとうの』姿を知らないという前提である」(第十三段落3行目)
「科学を正当に語る資格があるのは誰か、という問いに対して、コリンズとピンチは『科学社会学者である』と答える構造の議論をしてしまっているのである」(第十三段落4行目)
要約
「コリンズとピンチは、科学者も一般市民も科学のほんとうの姿を知らず、それを知っているのは、自分たち科学社会学者だけであるという議論をしてしまっている」
【問6】(これだけは、選択肢を見て本文を検討する。)
ただし、簡単なので省略。
■■このレポート作成課題に関して■■
◎ 国語の問題は要約問題である
◎ 要約をせずに、選択肢を見てはいけない
◎ 出題者が問題の正答をつくる手順を想定して、要約をする
この規則を守りながら、ここに記したような形で、今後はレポートを作成してください。
手順をまとめます。以下を必ず含めてください。
① 傍線部(が含まれる一文)の検討
② 「前後」策(前後を見て、言い換えを探す)
③ 要約する