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イメージ演奏でも聴覚野を使う!?

これまでに順天堂で行った「イメージ演奏実験」にたくさんの音楽家の方が参加してくださいました。ピアニストはピアノ演奏、ヴァイオリニストにはヴァイオリン演奏、声楽家はアリア歌唱。といっても、MRI の中で実演奏はできないので、全員に「イメージ演奏」をお願いしました。参加者の数もかなりに上り解析も進んだので、順次論文を書いてきました。その中から興味深い話題をひとつご紹介します。
 
イメージ演奏は心の中の演奏です。そのとき被験者の方は脳の中で自分が出しているであろう音を聴いていることになります。ここで質問ですが、音を処理する聴覚野はそのときはたらいていると思いますか?
 
答えを得るために、イメージ演奏中の聴覚機能ネットワークの解析を行いました。すると、音の入力がないにもかかわらず、聴覚野は脳のいろいろな部位とのつながりを強めて、せっせと情報処理をしていることを示す結果が得られたのです。何をしているのかを知るために、つながりを強めた脳部位をリストアップしてみたら、演奏実行系の前頭前野、メンタルイメージ(音楽シーン)構築の中枢、さらに意味の理解や社会的認知などに関わる部位などでした。聴覚野がこのような高次情報処理に(しかもイメージ演奏で)関わっていることは驚きです。
 
もう一つの発見は、イメージ演奏中の聴覚機能ネットワークが右半球優位に強化されることです。言語処理が左半球優位であることと好対照をなしています。下の論文サイトで図が見られます。もっと知りたい人のために、近著:音楽する脳と身体(28-30ページ)でわかりやすく解説しました。
 
Tanaka S, Kirino E. Right-Lateralized Enhancement of the Auditory Cortical Network During Imagined Music Performance. Front Neurosci. 2022 Feb 10;16:739858.
https://doi.org/10.3389/fnins.2022.739858

音楽する脳と身体(田中・伊藤)
https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339078268/

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