常に”個”の側に立つために ~HQブランドリニューアルに込めた願い~
HQの坂本です。
本日(2023年10月25日)、私が代表を務めているHQ社のコーポレートブランドをリニューアルしました。
新しいコーポレートブランドには、「多様な個を支える社会インフラ」になっていく決意を込めました。
「Q」の右下の小さな点は「個 / individuals」を示しています。
一人ひとりの個 / individualsが、惑星の”orbit / 軌道”のように、かけがえのない人生の”orbit / 行路”を歩んでいることを表現しました。
そして、人生の行路に、同じ道はひとつとしてありません。
それぞれが異なる色彩を放ちながら、自らの物語を紡いでいます。
さて、HQは、まだ創業二年半のスタートアップです。
仕事は山積み。課題は山積み。事業や組織もまだまだ未熟。
前のロゴで不都合が出ているわけでもない。
普通に考えると、ブランドリニューアルしている場合などではないと思います。
しかし、自分たちが目指す挑戦、これから続く長い旅路を考えると、まだ組織規模も小さい今このタイミングでこそ、自らの構えを直しておかないといけないと感じ、今回コーポレートアイデンティティを一新することに決めました。
本記事では、今回のリニューアルに込めた私自身の想いについて、少しお話できれば幸いです。
卵のためのシステム
コーポレートアイデンティティを見直すことを決め、創業時の想いを振り返り、思い起こされたエピソードがあります。
2021年春、HQを創業したばかりのころ。
創業メンバーに、ふと「坂本さんがHQでやりたいことは何ですか?」と聞かれました。
まだ売上もゼロで、サービスも全くできていない時期。
その後リモートHQというサービスに結実するビジネスアイデアはありましたが、磨きこみ前の荒い段階で、自分も含めて、まだ半信半疑というような状態。
HQは、何をやる会社なのか、何をやりたいのか、が全然分からない状況だったと思います。
そんなとき、ふと浮かんできたのが、
「卵のためのシステムをつくりたい」
という言葉でした。
あまりにも唐突で、かつ非常に独特な表現だったため、当然ながら、全員からキョトンとされたのを覚えています(笑)
心に刻まれた或るスピーチ
”卵のためのシステム”という表現は私オリジナルのものではありません。
2009年2月、村上春樹が行ったスピーチにでてくる「卵と壁」の話からの抜粋です。
もちろん、卵と壁は、比喩/メタファーであり、
卵とは一人ひとりの”個”
壁とは社会を成り立たせるための”システム”
を表していると考えられます。
本スピーチは、ちょうどイスラエル/パレスチナの軍事闘争が起き、多くの命が失われた直後というまさに最悪のタイミングに、イスラエル/エルサレムで行われました。(全文日本語訳は以下をご参照ください)
当時の私は、めったにスピーチを受けることのない村上春樹が、わざわざエルサレムまで赴き、闘争の雰囲気が漂う現地会場でプレゼンを行ったことにまず驚き、そして、そのとき発せられた言葉の一つひとつに、大きく感情を揺さぶられたのを今でも覚えています。(私は、人生の節目で、ちょうど大学を卒業し、社会人になろうというタイミングでした。)
(ちなみに、ここまで書くと、私は村上春樹さんの大ファンという印象を受けたかもしれませんが、好きな数多くの小説家の一人、というくらいで、HQ社員に村上春樹好きが特別多いわけでもありません。笑)
創業から変わらない想い
・・・創業当初、創業メンバーに「何をやりたいか?」と質問されたときに、何故かふと頭に浮かんできたのが、前述のスピーチでした。
メンバーに対して、スピーチを引用しながら、拙い言葉で、HQを通じて成し遂げたいことの説明を試みました。
内容は、以下のようなものでしたが、いま思い返しても、究極的にやりたいことは創業してから何も変わっていないことに気付きました。
人/卵は、誰しも不完全で、卵のように壊れやすい、どうしようもなく、非合理な存在。
だから、人には、他者、組織、社会システムなどのサポート/壁が必要だということ。
しかし、そのシステムは、主従が逆転しがちで、いつの間にかシステムのためのシステムへと変質してしまう。
この情報過多の時代、そんな不完全な個に必要なのは、さらなる欲求を喚起する新たな財ではなくて、そのひとりにとって本当に必要なものを届ける新たな”仕組み”だと感じているということ。
その仕組みこそが、福利厚生という領域だと思うこと。B2B2C(組織を通じて個にアプローチする)構造を活かして、福利厚生領域を変革することで”個”を支えるシステムをつくりたいということ。
リモートHQという第一のプロダクトを構想しているが、本当にやりたいのはリモートワーク環境支援ではない。リモートワークはあくまで手段のひとつ。個(卵)と組織(壁)の間に、Win-Winの関係を築ける構造をつくる、その第一弾に過ぎないということ。
リモートワーク環境を戦略的な起点にして、多様な”個”を支える社会インフラになりたい。次々と新しいプロダクトを開発していくことは既に決めている。DAY1から、第二、第三のプロダクトを見越して、データとテクノロジーの会社でありたいということ。
このとき話したことを思い出すなかで、
「創業時の想いをコーポレートアイデンティティに込めきりたい。」
と自然に思いました。
だから、どんなに格好の良いデザインであっても、どんなに深い意味合いがあるロゴ形状であっても、想いが純粋に体現できていると信じられなければ、そのブランドには意味はないと考えました。
この答えなき難題に対して、恐ろしく直感的でわがままなことを話し続ける私に寄り添い、粘り強く一緒に取り組んでくださったデザイナーのオオタさん(https://kern.inc/)には感謝しかありません。この場を借りて改めて感謝申し上げます。
一切の妥協なく自分自身やコーポレートブランドと向き合い、自分の想いを現実の意匠/ロゴへと結実させる作業ができたと感じています。
”個”を支えるプロダクトを次々と
「多様な”個”を支える社会インフラ」をつくったと言えるためには、社会には足りないことだらけ、たくさんの事業が必要不可欠です。
HQは、新しい事業を増やしていきます。
その事業戦略を推進するため、今回サービスロゴも全面的に刷新しました。新しいプロダクトも絶賛開発真っ最中で、もうすぐ発表ができる段階まで至っています。
長い時間をかけてミッションを実現する
新しいコーポレートロゴで一番気に入っている点のひとつが、縦/横線と正円のみで構成される極めてシンプルな形状であるということ。
もはや幾何学的な形状といえます。(実際、弊社のエンジニアは、私が全社にロゴの発表プレゼンをしている時間内に、コーディングだけでロゴを再現してしまいました。笑 色を自由に変えられるロゴメーカーも一瞬でエンジニアが作ってしまいました。笑)
この幾何学性に、自分自身、そしてHQの皆の、普遍的なミッションへの決意を込められたような気がしています。
コーポレートアイデンティティは、数年や10数年で変えるものではなく、中長期で使い続けていきます。
だからこそ、経営においても、短期的な些事に目を奪われず、長い時間をかけて粘り強く、重要な社会課題を解いていく。
ブランドリニューアルは、この決意をする機会にもなったように感じています。
- 追伸 -
ちなみに、奇しくも、今月2023年10月、村上春樹のスピーチがあった2009年と同じように、パレスチナ/イスラエルで大きな武力闘争が起きました。
本件について何らかの政治的な意見を表明するつもりはありませんし、 また、ブランドリニューアルの最終局面で本事件が起きたのは、どう考えても偶然に過ぎません。
ただ、全く非合理的な思考ではあるものの、この偶然は、何か運命的な何かを示唆しているようにも感じています。
個とシステム。卵と壁。自分たちが取り組んでいるこのテーマは、今このタイミングの現代社会においてこそ特に大切なテーマになってくる気がしています。
常に”個”の側に立つために。
新しいコーポレートアイデンティティの示す世界観を実現させるため、全員一丸となって、これから一歩一歩邁進していきたいと思います。