最近の記事

『追憶の烏』阿部智里【小説】

読み返すのが辛くてしばらく置いていたのですが、そろそろ書こうと思いました。 なぜ『楽園の烏』で雪哉があんな感じだったのか、出てこなかった人はどうなったのかが語られる一冊。 登場人物に愛着があるだけ心を抉ってくる巻でした。 以下はネタバレしかない感想です。 『楽園』で確定していた情報が ①金烏は長束の幼い弟 ②明留は死んでいる でした。地獄の答え合わせでしたね! 奈月彦の退場は予想してましたが、手を下したのが藤波だったのは完全に予想外でした。 (正直雪哉じゃないかと危惧し

    • 『学問のすゝめ』福沢諭吉【名著】

      現代日本人がある意味もっとも好きと言っても過言ではない福沢諭吉。 そんな彼が日本一でいる間に著作を読んどくかなーなどという不純な動機で読み始めました。 「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」という冒頭は誰でも知ってると思いますが、正直私はそこしか知りませんでした。 ところがこれはアメリカの独立宣言からの引用らしく、福沢自身の言葉ではないとのこと。 人は生まれながらに上下の区別はなく、自由自在であるという意味だそうです。 しかし現実には貴賤の差が存在し、その差は学問を

      • ゴッホと静物画

        SOMPO美術館で開催中の『ゴッホと静物画 伝統から革新へ』展に行ってきました。 ゴッホといえば風景画や人物画がパッと思いつきます。静物画だとどんなものを描いていたのだろう??と思っていました。 なんだか西洋の絵で静物画というと、無常感漂うものを想像してしまっていたのですが、よく考えたら花の絵は静物画だったのでした。ひまわり!! 初期の作品から、ひまわり、そしてアイリスに至るまでの過程を見ることができました。 ゴッホが静物画を描いた理由は、モチーフにお金がかからないから。

        • 春陽会誕生100年

          東京ステーションギャラリーで開催中の『春陽会誕生100年 それぞれの闘い 岸田劉生、中川一政から岡鹿之助へ』展に行ってきました。 近代洋画は全く詳しくなくて、岸田劉生しか分からん……と思いながら入りましたが、見応えのある展覧会でした。 春陽会とは洋画家たちが集まって作った団体で、それぞれの画家の個性を尊重する「各人主義」を大事にしていたそうです。 油彩画だけでなく、版画や新聞連載の原画などもあって多彩。 個人的には、岡鹿之助と出会えたことが収穫でした。 最後の部屋に岡鹿之

          『メアリー・スーを殺して』乙一【小説】

          乙一、中田永一、山白朝子、越前魔太郎という4名の作家によるアンソロジー…に見せかけた全編乙一による短編集。 乙一以外のみなさんは乙一の別名義だそうです。解説もご本人という乙一欲張りセット。 乙一以外の名義の作品は初読みでした。 それぞれ色が違っていて面白かったです。 愛すべき猿の日記 (乙一) 父の遺品のインク瓶を受け取ったことから人生が動き出す話。 インク瓶を開けたところからアクセルベタ踏みの感。そこから最後まで段落が変わらないので、どんどん押し流されていくようです。

          『メアリー・スーを殺して』乙一【小説】

          『源氏物語 解剖図鑑』佐藤晃子【古典】

          源氏物語に興味があるけどどこから手を付けていいか分からない、という人にピッタリの本です。 主要な登場人物が、男君なら犬、女君なら猫として描かれてます。かわいいー! 各段のあらすじ、解説、エピソードにまつわる文化的な説明、と見開き1ページに内容がぎゅっと詰まってます。 この段はどういうお話なのか、とお手軽に把握できました。 イラストも豊富で、パラパラと図鑑みたいに眺めるだけでも楽しい本です。 イラストは可愛いだけでなく、登場人物の血縁関係がよく分かるようになっていました。

          『源氏物語 解剖図鑑』佐藤晃子【古典】

          『烏百花 白百合の章』阿部智里 【小説】

          八咫烏シリーズの外伝2冊目。 あとがきによると発行順に読むのがよいとのことで、この本は第二部『楽園の烏』の次に読めばOK。 ほぼ第一部のころのお話なので、楽園の烏を読んでいる身としては懐かしいやら今後が怖いやら。 主要な登場人物の周辺を掘り下げつつ、第二部へのつながりも感じる一冊でした。 かれのおとない 茂丸の妹・みよしのお話。 みよしの目から語られる雪哉は、親しみやすい青年でした。 本編では雪哉視点で進むことが多かったので、外から見た雪哉はなんだか新鮮です。 第一部

          『烏百花 白百合の章』阿部智里 【小説】