
くらしを灯す - 近江手造り和ろうそく 大與
大與の和ろうそくとの出合いは、日本民藝館を訪れたときのこと。
売店に並ぶたくさんの工芸民藝品の中で、ひときわ目を引いたのがこの櫨ろうそくだった。

植物性の蝋を使っているとのことだが櫨ってなんだろう。手でロウを何層にも塗って作るろうそくって、熱くはないのだろうか。いろんな疑問が次々に湧いてきた。
ネットで和ろうそくの歴史、作り方や原材料を調べるうちに、そのものづくりの魅力に惹かれ、縁日で取り扱いを始めた。
仕事で滋賀県に行くことがあれば、いつか和ろうそくの「大與」の工房に行ってみたいと思っていた。
そして先日、奈良での仕事の帰りに、滋賀の「湖のスコーレ」へ立ち寄る機会があった。
大與さんって滋賀だよねと思い出し、急遽、訪問前日に慌ててアポを取った(失礼ながら)。
そしてついに、和ろうそくの工房にお伺いすることができたのだ。

近江今津駅を降りて徒歩5分ほどのところにある
幸運なことに大與の4代目・大西巧さんにご対応いただき、工房を見せていただけることになった。
和ろうそく大與は、滋賀県高島市で100年以上伝統の和ろうそくを作り続けている専門店。
櫨の実や米ぬかを原料に使った和ろうそくは、国内でも数えるほどしかいない熟練の職人さんの手仕事で作られている。

櫨の実がなる櫨の木はなんとウルシ科。どこまで漆は日本人の暮らしに密着した生きものなんだろう。ますます愛すべき存在、漆。
櫨の実から作られる櫨蝋の融点は約50度、凝固点は約30度とされている。そのため、素手で触れても問題はないという。

和ろうそくの灯芯は一本一本手作業で、和紙で芯を作り、そこに井草を巻きつけて作られている。

この技法ができるのは全国で10人程度しかいない
串に灯芯を差し、40度程度に温めた蝋を手作業で塗り重ねていく。
手が蝋まみれになっているため、時折ろうそくを唇に当てて温度を確かめる。

力強くも柔らかな炎を生み出している
日本にろうそくが登場したのは奈良時代で、櫨の実を使った和ろうそくが作られたのは室町時代だそう。
大與の和ろうそくは曹洞宗の大本山である永平寺御用達で、1984年に滋賀県の伝統工芸品に指定されている。

これまで和ろうそくはお寺や茶の場で使われてきたが、大西さんはそれを現代の暮らしに取り入れる使い方を提案している。

贈りものにもぴったりな和ろうそく。
今年の冬あたりに縁日で大與さんのPOPUP検討中です。どうぞお楽しみに。