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1泊40万円の部屋で見つけた「第三の目」の存在

こんにちは!

みなさんは今年の夏休み、どこかに行かれたでしょうか。ぼくは9月に入ってからですが、アイスランドとポルトガルに行きました。変な組み合わせですか?

ぼくが初めて海外に行ったのは15歳のとき。高校入学前の5日間くらいでNBAを観戦しにロサンジェルスに行きました。当時のレイカーズは、コービー・ブライアント、シャキール・オニール、カール・マローン、ゲイリー・ペイトンという歴代最強といわれた布陣で、それはそれは見応えがある試合でした(しかしそのシーズンは、個々のタレント性や実績においてはるかに劣るピストンズに敗れるわけですが)。

そこからポツポツと海外に行くようになり、気づいたら39カ国。自分でも驚きです。数字に振り回されるつもりはないですが、ここまできたらせっかくだし、50カ国をめざしたいと思います。

今回はいつもの文章術ではなく、ポルトガルのホテルで体験したエピソードをお話ししたいと思います。

ポルトで「1泊40万円」の部屋に泊まることに


今回の旅の目的は、半分は「観光」と「休暇」。もう半分は自著の執筆、つまり「仕事」です。

ぼくは典型的なワーカホリックでして(ほんとうに病気なんだと思います)、土日祝日、正月盆と関係なくずっと仕事をしていますし、してきました。だからといったら言い訳になるのですが、自分のことでまとまった時間をつくることができませんでした。

このままじゃまずい。さすがに危機感をおぼえました。強制的に書かざるを得ない状況に追い込まなくてはーー。そう決断して羽田を飛び立ったわけです。

アイスランドにある世界最北の首都・レイキャビクに6日間滞在し、その後ポルトガルの第二の都市・ポルトに向かいました。オレンジの屋根にレトロな建物、巨大で荘厳な教会や施設、店外に席が並ぶレストラン、そしてスーツケースの天敵・石畳……日本人のほとんどがイメージするであろう、ザ・ヨーロッパ的な港町です。

ポルトの街並み。港町ということもあって、魚介類がおいしかった。

ポルトではいくつかのホテルに宿泊したのですが、なかでもすばらしかったのが、いや、この旅でもっとも印象的な体験を提供してくれたのが、観光地の中心にあるホテルでした。

1950年代築ですが古びた印象はまったくなく、方向性としては「中世×モダン」で、インテリアも設備も接客も洗練されていて、清潔感もありました。しかも、チェックイン時にアップグレードの申し出が! 日本人だからか、それともにっこり笑顔で「オラ!」とあいさつしたからかわかりませんが、フロントの女性も「最高の部屋を用意したわ」となんだかウキウキです。いったい、どんな部屋なんだろう?

ただ、一歩足を踏み入れた瞬間、思考が停止しました。「えーすごいー!」という甲高い声ではなく、「うわっ」と声が喉の奥からぼそっと出ました。広すぎるんです。いったいいくつグレードを上げてくれたのか。明らかに場違いな広さと高級感。映画『グランド・ブダペスト・ホテル』で使われていそうな部屋でした。

部屋は大きく3つに分かれていて、向かって右からベッドルーム、リビング、書斎。トイレは2つ、巨大すぎるテレビモニターも2つあります。バスルームはもちろんテーブルも大理石。すぐに調べてわかったのですが、広さは90平米以上、1泊40万円近くするようです。なんと。

同行していた妻は嬉々として写真を撮っていたものの、ぼくはすぐには喜べませんでした。こんなに広くても使う部分は限られているわけだし、高級そうな家具を少しでも汚したらと思うと緊張するし、それにもしなにかの手違いで追加料金を請求されたら……と思ったら、へんな汗が出てきました。

奥にあるのが書斎。とにかく広い。

なぜか気づいた「第三の目」の存在


とはいえ、せっかく好意でスーパーアップグレードしてくれたわけだし、こんな貴族みたいな部屋に今後の人生で泊まれるかもわからない。それに、こんな立派な中世ヨーロッパ的書斎で自著を執筆するというのも、これはこれで興味深い体験になりそうだ。そう思考を切り替えて、あらためて部屋を探索することにしました(「探索」という言葉がふさわしいのです)。

そこで見つけたのが、このオブジェです。正確には、入り口正面の棚に置かれていたこともあって部屋に足を踏み入れてすぐ視界に入っていたのですが、室内の絵画やインテリアを仔細に見ていくなかで、あらためて存在に気づきました。

さてみなさん、これがなにかをモチーフにしているかわかりますか?

答えは「松果体(しょうかたい)」。松果体は、脳の真ん中にある米粒ほどの小さな器官です。睡眠ホルモンであるメラトニンを分泌する機能をもち、眼と同様に光を感じることから、「第三の目」と呼ばれることもあります。松ぼっくりのような形をしているそうです。

ぼくはこのオブジェを見てすぐに「これは松果体だ」と気づきました。理由はわかりません。どこかで見聞きして記憶の奥底で眠っていたのだと思います。取材や打ち合わせで聞いたのかもしれません。ともかく、このオブジェには目を惹きつけて離さない“なにか”を感じざるを得ませんでした。

気になって松果体について調べてみると、いろんなことがわかりました。

  • バチカン美術館のピーニャの中庭に巨大なオブジェがある

  • アヌンナキ(古代メソポタミア文明の神話に登場する神々の集団。「古代の地球にやってきた異星人」ともいわれる)が手に持っている壁画(?)がある

  • 都市伝説やスピリチュアル的な文脈でも言及されている

そして他にも目を向けてみると、ベッドルームにあった服掛け、ホテルのレセプションの脇、外壁オブジェにも松果体が使われていることに気づきました。

こうなると、「あれも松果体なのでは。これも松果体なのでは」と疑うようになります。こうして、人生でいちばん「松果体」を意識する日々が始まりました。

部屋にあった服掛けのようなもの。使い道がわからず、一度も使わなかった。


レセプションの脇。こちらはガラスのようなコーティングをしていた。
ホテルの外壁。この2人は本の上に乗っているから、やはり「知の象徴」みたいな意味なんですかね。

「松果体」を強く意識した3日間


松果体の引力というべきなのか、このホテルに滞在していた3日間は、オブジェを書斎のテーブルに移動させ、視界に入るかたちで執筆に臨むことにしました。結局のところ、それによって筆の運びが速くなったわけでも、よりクリエイティブな発想ができたわけでもなかったのですが、自分の脳の中に松果体があることを意識できるようになりました。

松ぼっくりの形をした米粒ほどの部位が、脳の真ん中に鎮座している。まるで、今まで使ってこなかった筋肉を発見できたような感覚でした。同時に、「おれは自分の体になにが潜んでいるのかすら、よくわかっていないんだ」と気づかされました。

今回の体験が、「第三の目」を使うきっかけになったのかもしれない。なんだかスピリチュアルな響きになってしまいましたが、そう考えてみると、出会うべくして出会ったような気もします。

ところで、このホテルにあったような松果体のオブジェ、とてつもなく欲しいのですが、良さげなものが見つけられません。どなたかご存じでしょうか。アンティーク家具のお店を回ればあるんですかね。あるいはポルトなら売っているのでしょうか。なければ自分で作るしかないのでしょうか。情報をお持ちの方がいれば、ぜひ教えてください。懇願します。

では、また次回の記事でお会いしましょう。

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