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サウナの熱とギャル男の告白

久しぶりのこの手の番組を観た。

通っているジムのサウナに設置してある大画面テレビで。

福岡のローカル局番組だった。大分の田舎に住む、カードゲームばかりしていた根暗で影の薄いメガネ君が、高校時代の同じクラスの好きで好きでたまらなかった女の子に、愛の告白をするという企画だった。

このメガネ君、どれくらい影が薄かったかというと、修学旅行に来ていないことを気付かれないくらい薄かったらしい。

そんな彼が、「ギャル男」に変身して、告白をすると決心したのだ。

「なんでギャル男なんだよ。もっとカッコいい変身の仕方あるだろ」と、上から目線で思ってしまった。

しかし、そんな頭の凝り固まったオヤジのような発想をした自分を恥じた。「俺だって高校卒業した頃は、ギャル男がカッコいいと思った時期もあったじゃないか」と。

福岡の中心、天神で、ダボダボのスエットパンツをスリムなジーパンに履き替え、スニーカーをブーツに履き替え、ジャケットを羽織り、髪を茶色く染め、眉毛を整え、彼はみごとギャル男に変身した。やはり、服と髪型を変えるとかなり男前になった。


と、ふと周りを見渡してみた。

サウナの中はオジサンで満員になっていた。もちろん私を含めである。

すっぱだかで汗したたり落ちるオジサン達でいっぱいであった。

頭から降ってくる汗を手でぬぐいながらも、オジサン達は決してテレビから目を離さない。私を含め。本当に気になって仕方がないのである。愛の告白の結末が。

息子の愛の告白を見守るというより、自分が同じ年頃だった頃を思い出し、少し浸っているという感じに思えた。

くどいがすっぱだかで汗ダラダラである。

私はさすがに熱くて仕方なく、一度サウナを出た。水を浴び、再び戻った。

しかし、オジサンメンバーの変更はなかった。私が再びピッチに戻り、スタメン揃いで彼の運命を見守ることとなった。

引っ張る引っ張る。CMが6個か7個くらい流れて「あーっ、熱い。米倉涼子が綺麗なのはわかったから。もう限界っ!」となった頃、やっと告白となった。

「ごめんなさい」

恋は実らなかった。女の子には彼氏がいた。

彼はカッコよかった。

「付き合ってください」を精一杯の力を込めて彼女に放った。

振られて笑っていたが、それも彼女のことを思ってだろう。落ち込むと彼女に気を遣わせてしまう。だから笑ったのだろう。とても優しい男の子だった。

彼に拍手を送った。自分にもこんな時期があったなと懐かしんだ。ダメ元の告白もしたこともあったなと思い出した。そうやって少しづつ成長してきたんだよなと。

告白ってうまくいくかなんてわからない。怖かったよなー。告白って決断だよなとしみじみ思った。彼は、、、


ああ、頭がクラクラ。ああ、俺はサウナに入っていたんだ。足がフラフラ。ぶ厚い木の扉を開き、外界に出た。

その他のオジサン達はまだテレビに釘付けだった。

冷たいシャワーをたっぷり浴び、着替え、帰宅し、このブログを書いた。

こんな記事ですが、何か感じて頂ければ幸いです。




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