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地球建築家vol.6 前川國男Ⅲ
−プランにムーブマン−
建築の質を最も表す図面はなんだろうか。
それは、平面図であると私は思う。
前川國男もそう考えていた。いや、前川の本にそう書いてあったから、私もそう考えるようになった。そして実際にそうであると思う。
前川が残した言葉がある。
プランにムーブマン(movement)がないといけない。
なんとも、モノスゴイ言葉である。さすが先生。ボソッと呟いたのか、力たっぷりに言い放ったのか。
プランとは平面図のことである。いわゆる「間取り」。
平面図に「動き」がないといけないと言っているのだ。
そしてこうも言っている。
プランニングは間取りじゃない。
あら、間取りじゃないのか。当時、建築学生であった私は混乱した。
間取りとは住宅でいうと、リビング、ダイニング、キッチン、寝室、廊下、トイレなどの「部屋」を、パズルのように家という輪郭の中にはめ込むことだ。
前川は、プランニングはただのパズルやテトリスとは違うんだと言いたかったのではないかと解釈した。
その後この二つの言葉がプランニングをする度について回った。
「あっ、プランにムーブマンがない、、、!ダメだこりゃ。ああっ!ただの間取りになってる。うわ〜、、。」
冗談ではなく、本気で悩んでいた。
それから古今東西の巨匠のプラン、国内の名建築のプラン、自分の好きな建築家のプラン、ありとあらゆるプランを研究した。この頃から、写真集より、建築図面がしっかりと載っている本を買うようになった。
すると、いい建築のプランは必ずと言っていいほどプロポーションが良く美しいと言うことに気づいた。美しい幾何学の模様のように見えた。
そう、前川もこう言っている。
いいプランは美しい。プランを練っていくと、一筆書きで描けるようになるんじゃないか。
ああ良かった。前川先生の言わんとすることが理解できたんだ!!
と、安心したのも束の間、また問題が発生した。
「ムーブマン」とはなんぞや、ムーブマンとは??
迷いに迷ったあげく、それは「歩きたくなるプラン」「その空間の空気感が匂い立つようなプラン」ということではないだろうかと勝手ながら解釈した。
しかし、そんなプランは本当に滅多にお目にかからない。
ではどこでそれを見つけたかというと、熊本県立美術館である。
前川國男は「ムーブマンのあるプラン」を熊本県立美術館でしっかりと体現していたのだ。有言実行である。
それがこれである。
ムーブマンを感じる事はできただろうか。
お断りしておくが、これは私の勝手な解釈であり、判断は自由である。