屋根を考える2
日本の寺社仏閣で代表的に使われているのは下記である。
・瓦(かわら)
・檜皮(ひわだ:ヒノキの樹皮)
・銅板
寺に使われいているのは「本瓦」といって、住宅に使われる一般的な瓦と比較して、サイズも重量も何倍にもなるものが使われいる。もちろんコストも何倍にもなる。
↑本瓦(写真はネットより引用)
↑一般的な瓦(写真はネットより引用)
しかし、台風や地震などの災害に弱い面もあるが、焼き物であるので紫外線による劣化やサビによる腐食がなく、半永久的に使用できる。
瓦は建物を最も長持ちさせる屋根材だと私は考えている。
私の実家の屋根は瓦で、外壁には漆喰(しっくい)が塗ってあるが、もう何十年も壁を塗り替えていない。軒が1メートル以上出ているので、直射日光をいい具合に遮り、壁の劣化を防いでくれるのだ。屋根勾配(屋根の傾き)も十分とってあるので、雨漏りもしたことがない。
災害に弱いというイメージがあるが、最近の瓦は改良が重ねられ、台風や地震にも強くなっている。
瓦はもっと住宅に使用されるべきだと思う。
檜皮は格の高い神社などに使われいることが多い。
↑檜皮(写真はネットより引用)
しかし、檜皮は木の皮であるので雨風にさらされると途端に劣化してしまう。
それに、檜皮ぶきはとてもお金がかかる。材料自体はそれほどでもないが、技術料が相当高くつくようだ。職人もどんどん減ってきているから、さらに高騰しているのではないだろうか。
私が以前、京都の上賀茂神社を参拝した時のこと。大量のヒノキの皮の前で参拝客が何やらシャカシャカとマジックで真剣に書いていた。
屋根の葺き替え工事の募金をしていたのだ。
なんと工事費が5億円かかるとのことだった。葺き替え工事に使うヒノキの皮の裏に自分の名前を書ける代わりに、2000円ほど納めるというものだった。
私は迷わず募金した。それで京都の美しい神社が守られるのであれば、安いものだと思った。そして、日本に神社があるのは、決して当たり前ではないということを学んだ。
銅板は読んで字のごとく、銅の板である。そう、お馴染み10円玉の素材だ。
施工した当初は磨き立ての10円玉のような色をしているが、すぐに緑青(ろくしょう)を吹いて青緑色になる。
↑葺いたすぐの銅板(写真はネットより引用)
↑緑青を吹いた銅板(写真はネットより引用)
よく神社で見るのは、下の緑青を吹いた屋根だと思う。なんとも美しく、風情のある色である。
檜皮葺きや本瓦葺きよりもコストは抑えることができるので、多くの神社や寺で使われているようだ。
屋根材について述べてきた。
これまで日本において長年使われてきた、由緒ある材料である。これらの材料が日本の風景を作ってきたといってもいい。
私はこれら以上に日本の風土に溶け込み、輝きを放つ屋根材をまだ見たことがない。
これからもどうか、日本の伝統的な材料が大切に使われていくことを願っている。