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podcast みみ騒ぎに恋してる Season2 Ep,3 [天体観測 / BUMP OF CHICKEN]



この番組はSpotifyで視聴できるようになりました!

文字コンテンツとしてもお楽しみいただけるよう、上村翔平作の短編小説としてnoteに投稿していこうと思います。
テーマとなる曲を聴きながら、お楽しみください。

引き続き、皆様に楽しんでいただけるように、色々と取り組んでいきたいと思います。ご意見ご感想、そして妄想リクエストは#ミミコイを付けてTwitterにPostしてください。





午前二時 フミキリに 望遠鏡を担いでった
ベルトに結んだラジオ 雨は降らないらしい

『あ〜ぁ、またあしたも晴れかよ』

ゲンはため息混じりに文句を漏らした。

ポールシフトにより星の軸が歪んでしまい、近年世界は干ばつに悩まされていた。
冬だっていうのに日中の温度は30度を下回らない日が続いていた。

ゲンは中学の天体観測クラブ部長。
そして父は有名な宇宙飛行士だ。

本日、大国にある宇宙開発センターから"宇宙船ほうき星号"に乗り込み人類が次に住める星を探して出発した。


二分後に君が来た 大袈裟な荷物背負って来た
始めようか 天体観測 ほうき星を探して

ハァハァハァ、、ふぅ〜っ!
『ごめんごめんごめん!遅れちゃった!おじさんの宇宙船みえた!?』

幼馴染のカオルが人類史状初の大挑戦を、そしてその挑戦を幼馴染の父がやるっていうのだからそりゃもう張り切って来た。

笑顔で迎えてくれたゲンが支える天体望遠鏡を待つ手が震えてることを、カオルはすぐに分かった。

深い闇に飲まれないように 精一杯だった
君の震える手を 握ろうとした あの日は

『ゲン、大丈夫?』

『平気平気!ほら、、探そうぜ!流れ星!宇宙船!』

見えないモノを見ようとして 望遠鏡を覗き込んだ
静寂を切り裂いて いくつも声が生まれたよ
明日が僕らを呼んだって 返事もろくにしなかった
「イマ」という ほうき星 君と二人追いかけていた

『あっ、ほら!覗いてみて!』

ゲンが楽しそうに提案してきた。
カオルはすかさず覗き穴に瞳をうずめた。

『青い星と赤い星が見えるだろ??あの二つの星から新天地を選ぶんだって!カオルはどっちの星が好き?』

『えー!むず!んまぁでも青い星かな〜涼しそうだし。笑』

ポツリポツリ、、、パラパラパラパラ〜

地軸の歪んだ星では天気予報が外れることも良くあった。

カオルは、リュックいっぱいに詰め込んだ夜食が濡れて悲しそうにしている。

ポンポンっと無言でカオルの肩を叩き、慰めるゲン

『今日は帰ろう!また父さんの事、一緒に見つけような!』

気が付けばいつだって ひたすら何か探している
幸せの定義とか 哀しみの置き場とか

生まれたら死ぬまで ずっと探している
さぁ 始めようか 天体観測 ほうき星を探して

彼らが住む星は木星、太陽系でも1位2位を争うほど大きな星で、その昔は緑色に輝いていたという。

それから2人は何度も何度も宇宙船ほうき星号を探した。

そして3年が経ち、吉報が届いたのはもう高校を卒業する頃の出来事だった。

【木星を出発した二機の宇宙船が火星と地球に着陸】

ゲンは心の底から安堵した。
父の無事を毎日祈っていた母は泣き崩れた。

しかしニュース文を眺めて行くと、世界政府からの指令が表記されていた。

【30歳以下の未婚の男女は火星チームと地球チームに、分かれて移住が決定】

添付されていたリンクをクリックすると個人IDを入れてAIがどちらの星に住むべきかを判断し答えが出るという簡単で残酷なシステムだった。

次の日、2人はいつもの踏切に浮かぬ顔で集合した!

『せーので言おうぜ!

踏み切れない意思とは裏腹に2人は早く安心を若しくは決心を求めていたのだろう。

『せーのっ』

『    』

案じた通りの結果だった。

『まじかー!逆だったね!火星かー!良いなー!』

ゲンもそっくりそのまま空元気をカオルに返した。

それが最後の天体観測となる事を事前に知った2人はいつも以上に流れ星を探した。

お互いの無事とそれぞれのこの先の人生への幸せを願った。

今まで見つけたモノは 全部覚えている
君の震える手を 握れなかった痛みも

あれから8年の時が経った。

空は青く、海は広く、緑の大地と輝く太陽、そして月に癒された日々にもこの星にも慣れた。

宛先も分からないままカオルに毎日手紙を書いた。

移住規定により最小限の積荷しか持って来れなかったゲンは、何よりも先に天体望遠鏡を担いで乗船した。

移住人類はこの地球で一番最初に日が上る場所に小さな町を作った。

町が広がる度に鉄道が敷かれた。

ゲンの住んでいた町と何処となく似てきたようだ。

悲しさと寂しさのあまり、以来覗けなかった望遠鏡。

押し入れから出すと埃を払い、踏切へと駆け出した。

知らないモノを知ろうとして 望遠鏡を覗き込んだ
暗闇を照らす様な 微かな光 探したよ
そうして知った痛みを 未だに僕は覚えている
「イマ」という ほうき星 今も一人追いかけている

背が伸びるにつれて 伝えたい事も増えてった
宛名の無い手紙も 崩れる程 重なった

僕は元気でいるよ 心配事も少ないよ
ただひとつ 今も思い出すよ

予報外れの雨に打たれて 泣きだしそうな
君の震える手を 握れなかった あの日を

電波もネットも無い世界では地球情報以外、何も入ってこなかった。

望遠鏡を覗くと、赤い星が輝いてるのが見えた。

あの頃よりずっと近いはずの火星は遠く遠くに感じた。

涙で星がぼやけていく。

またいつか逢えるかな。

ゲンは一呼吸置いたあと、火星に向かってクシャクシャの笑顔を見せた。

見えているモノを 見落として 望遠鏡をまた担いで
静寂と暗闇の帰り道を 駆け抜けた
そうして知った痛みが 未だに僕を支えている
「イマ」という ほうき星 今も一人追いかけている

もう一度君に会おうとして 望遠鏡をまた担いで
前と同じ 午前二時 フミキリまで駆けてくよ
始めようか 天体観測 二分後に君が来なくとも
「イマ」という ほうき星 君と二人追いかけている

もしかすると人類の起源は宇宙にあったのかもしれない。

木星に火星に金星に、そして遥か彼方、まだ名前も知らない星に。

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上村翔平(THREE1989)
いつもサポートありがとうございます。本作がお気に召しましたらサポートよろしくお願いいたします!次作も乞うご期待。