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podcast みみ騒ぎに恋してる Season2 Ep,6 [Forgotten sun / E.scene]

この番組はSpotifyで視聴できるようになりました!


文字コンテンツとしてもお楽しみいただけるよう、上村翔平作の短編小説としてnoteに投稿していきます。
テーマとなる曲を聴きながら、お楽しみください。

引き続き、皆様に楽しんでいただけるように、色々と取り組んでいきたいと思います。ご意見ご感想、そして妄想リクエストは#ミミコイを付けてTwitterにPostしてください。


今週の妄想曲

E.scene/Forgotten sun

2018年7月に結成
R&B、Funk、HIPHOPなど主にブラックミュージックを中心に様々な音楽の要素を取り入れオリジナルな音楽を目指し、活動中。2019年4月には、1st single「麗しい日々/いいじゃん」をリリース。結成わずか一年にして『FUJI ROCK FESTIVAL’19 ROOKIE A GO-GO』に出場が決定。また、恵比寿リキッドルームにて行われた『出れんの!?サマソニ!?』の最終選考ライブにも出場し、着々と実力をつけている。

https://www.instagram.com/e.scene/






街を紫色の煙たいガスが支配した。

目を覚ますと体は動かない。

ただ風が吹く際に、そよいで揺れるだけ。

喉が渇いた。

下水で濁った小川へと手を伸ばそうとするも意識は神経へ届くも、どうにこうにもこの手さえも動かせない。

そういえば目も見えない。

むしろ目とは?

本来人間であった私が持っていた五感というチカラは失われ、喉の渇きのみが意識を満たす。

どれくらい時間が経っただろう。

太陽が空を西へ向かう度に勝手に体が動いた。

光が空腹を満たしていく。

足元に湿気を感じ、必死に吸い上げた。

体の中腹くらいまで水分が上がってきた頃だった。

頭に激しく水が落ちてきた。

まるで小学校のプールいっぱいの水を一気に全てかけられたかのように。

喉が潤った。

もう大丈夫。

安堵した頃には眠りについていた。

朝、日の出と共に目覚めた。

というよりも目覚めざるを得なかった。

体が勝手に太陽に引っ張られて仕方がないのだ。

光を求めては空腹を満たす。

そして喉が渇き切った頃に空からの大洪水。

呼吸は難なく出来た。

そんな日々が黙々と続いた。

生きることに必死だったから慣れるまで、これまでの人生さえも忘れていた。

目も見えず、耳も聞こえず、話すことも出来ず。

それでも意識はハッキリしていた。

君は何処で誰と何をしているだろうか。

あの日の夜、僕らは別れる事を選んだ。

君は何処で誰と何をしているだろうか。



君じゃないと色褪せる
日々の白い空虚
指先の間も
明け方の太陽みているよ
君も僕も
ここで生きているよ



ここで生きているよ。

君に伝える手段も声も持ち合わせて居ない僕は一体。


影のない言葉達は
わけもなく終わりのない未来を指し示した



ようやく感覚が戻ってきたのは裸の素肌に霜が降り始めた、とある冬の日の事だった

激しい痛みが毎晩襲いかかり、眠れずに居た。

それでも睡眠不足の体を太陽が勢いよく起こす。

苦痛だらけの冬が終わりを告げる頃、僕は鮮やかな黄色い花を咲かせた。

誰に見せるわけでもなく、見られたいわけでもなく、自分の心だけが満たされていくのが分かった。

天命を全うした気になれた。

太陽が心地よい。

花が枯れる頃、一つだった意識は幾つもの意識体に分散した。


風は吹きますか?
どこにもいかないように
握りしめた手は撓っていた
あの頃見た後ろ姿はどこに行きますか?
記憶が宙を舞う
君じゃないと色褪せる
日々の白い空虚
指先の間も
明け方の太陽みているよ
君も僕も
ここで生きているよ



宙に舞ったのは君の記憶だけではなかった。

僕の体は気まぐれに吹いた夜風の背中に跨って宙を舞った。

夜風の声が聞こえる。

『何処へ行こうか?』

きっとあの子の元へ連れてっておくれ。

意識の中で精一杯伝えた。


こうして君と話せる時間選んだ人生
そして君と別れる時間もらったりして
頭の中選び出した答えをただ恨まないこと
きっとみんなどこか寂しい夜
抑えた記憶に



星々が歌う。

あの子はあっちに飛んで行ったよ。

夜風に跨り春の夜空を駆け回る。

君を探してる。

僕は綿毛。

きっと君を見つけて君の隣で。

鮮やかな黄色い花を咲かせる日まで。


君じゃないと色褪せる
日々の白い空虚
指先の間も
明け方の太陽みているよ
君も僕も
ここで生きているよ


ある日、街を紫色の煙たいガスが支配した。

その日、人間が世界から消えた。

それからというもの、青い星は春になると満開の黄色い花を咲かせた。

いつもサポートありがとうございます。本作がお気に召しましたらサポートよろしくお願いいたします!次作も乞うご期待。