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podcast みみ騒ぎに恋してる Season2 Ep,4 [奏 / スキマスイッチ]


この番組はSpotifyで視聴できるようになりました!

文字コンテンツとしてもお楽しみいただけるよう、上村翔平作の短編小説としてnoteに投稿していきます。
テーマとなる曲を聴きながら、お楽しみください。

引き続き、皆様に楽しんでいただけるように、色々と取り組んでいきたいと思います。ご意見ご感想、そして妄想リクエストは#ミミコイを付けてTwitterにPostしてください。


改札の前 つなぐ手と手
いつものざわめき 新しい風

ただ単に、この街へ来た君を笑顔で迎える。
そしていつか一人で帰る君を見送るだけ。

一年前の今日、僕はそんなドライな感覚さえ胸に潜ませていた。

街はもうすぐ東京よりも少し早い雪が降る季節だ。

明るく見送るはずだったのに
うまく笑えずに君を見ていた

君をこの街で見ることにはもう慣れてしまったのに、今日は瞳のやり場に困った。

偶然この街に降り立った君の美しさに違和感すら覚えている。

ぼんやりしていたキヲクが鮮明に蘇る。

久しくオールで行った果てにある灯台。

寒さに震えながら寝転んでみた満点の星空。

己の小ささを、君の可能性を知った世界遺産の大地。

君と見た瞬間がまるで昨日のよう。

涙は見せないと二人誓ったはずなのに、すぐ逢えるから大丈夫って言ったはずなのに、君の瞳はもう赤い。

君が大人になってくその季節が
悲しい歌で溢れないように
最後に何か君に伝えたくて
「さよなら」に代わる言葉を僕は探してた

大学を卒業して以来、もう来ることなんて無いと思っていた青春が此処にあった。

この歳で別れを惜しむなんて思いもしなかった。

君は一本だけ空港行きの電車を見送った。

残り10分間、この雑踏の中、主人公とヒロインでいられた。

同じ国にいるんだから、昔話じゃないんだからすぐに会えるさ。

僕は頭の中、自己暗示的に魔法を唱えた。

君とは歳が二回り離れていた。

まだまだ幼い感覚とその身なりに、いつのまにか老婆心が芽生えた。

これからまだまだ夢を追う君に、さよならの代わりになる言葉を残したかった。

君の手を引くその役目が
僕の使命だなんて そう思ってた
だけど今わかったんだ 僕らならもう
重ねた日々が ほら 導いてくれる

街はもうすぐ東京よりも少し早い雪が降る季節だ。

この街の冬は夢を追うことのように厳しい。

君は一人、あの街の穏やかな冬を乗り切れるだろうか。

繋いだ手が震えた。

肌寒いのに手の汗腺が湿りゆく。

不安が伝わる前にサッと手を引いてポケットにしまった。

君は不安気な表情を浮かべている。

ポケットの中にしまっていたイヤフォンに手を伸ばし片方を君に差し出した。

君が大人になってくその時間が
降り積もる間に僕も変わってく
たとえばそこにこんな歌があれば
ふたりはいつもどんな時もつながっていける

そして、新しい季節を告げる風が吹いた。

突然ふいに鳴り響くベルの音
焦る僕 解ける手 離れてく君
夢中で呼び止めて抱きしめたんだ
君がどこに行ったって僕の声で守るよ

君の背中を追う瞳がぼんやり眩んでいく。

心の中で唱え続けた"さよなら"はいつしか声に変わっていた。

きっとあの街で君は僕を忘れる日が来るだろう。

別れの時の果てしない哀しさと、君に出会えた心躍る喜び、そして夢を叶えた君が輝く愛しさを同時に噛み締めた。

君が僕の前に現れた日から
何もかもが違くみえたんだ
朝も光も涙も歌う声も
君が輝きをくれたんだ
抑えきれない思いをこの声に乗せて
遠く君の街へ届けよう
たとえばそれがこんな歌だったら
僕らは何処にいたとしてもつながっていける

君が乗った電車が発った。
駅の外、冬の妖精のような美しい虫が舞った。

雪はもうすぐだろうか。

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上村翔平(THREE1989)
いつもサポートありがとうございます。本作がお気に召しましたらサポートよろしくお願いいたします!次作も乞うご期待。